マインドフルネス心理療法(SIMT)でなぜ治るのか(1) [2011年12月21日(Wed)]
マインドフルネス心理療法(SIMT)でなぜ治るのか(1)マインドフルネス心理療法の一派である自己洞察瞑想療法(SIMT:Self Insight Meditation Therapy)は、うつ病、非定型うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、パニック障害、対人恐怖、家族の緊張不和などに効果がみられました。なぜ、治るのか簡単に説明いたします。うつ病うつ病が自己洞察瞑想療法(SIMT)で治る人がいるのはどうしてでしょうか。 心理的には、意志作用のリハビリテーションが奏功したからであるといってよいのです。SIMTの課題 の繰り返しの実行は、前頭前野、帯状回などの機能訓練にあたります。自分を傷つけるだけの否定的 な思考を続けることがなくなります。第一に、上流の非機能的な心理的行為がなくなるということです。ひどく感情的になることが少な くなるので、 扁桃体、交感神経の興奮をしずめます。 それによって、心理的な不快さが少なくなり、身体症状が軽くなります。 第二に、、HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)の興奮をしずめます。 それによって、前頭前野や帯状回の神経細胞を新しく傷つけなくなります。 第三に、過去の価値崩壊の反応によって傷ついていた前頭前野や帯状回の神経生理学的な回復が起 こり、それに関連する機能が回復します。 治りたい、治すという「目的」(価値、願いを明確にもち、毎日確認)を想起 して、不快な症状があっても、それを横目に見ながら、本来すべきことをします。 課題を実行することは、前頭前野、帯状回などの機能を使う行動になっています。 呼吸法、自 己洞察法(自己の種々の精神作用の自覚、使い方によっては害になるので益になる 使い方を訓練する)、脳機能活性化トレーニング(ワーキングメモリ機能の活性化 )、運動、ささやかな行動などです。こうした行動は、長期報酬課題の実行、ワ ーキングメモリの機能使用にあたります。まさに、前頭前野、帯状回などを動かすこと になります。これを毎日、実行します。 人の神経細胞は使用頻度が高いと発達します。使用頻度が低いと神経細 胞がすたれます。その神経細胞が使用されると血液が送られて、脳由来神経栄養因子 (BDNF)ができて、神経細胞が増殖します。軸索が伸び、シナプスが増えます。 こうして、前頭前野、帯状回、海馬などの神経細胞が増加して、健康な状態に戻って、う つ病の症状が消失すると推測されます。 メランコリー型うつ病には、発作的な症状(拒絶過敏性、鉛様麻痺感など)がな いので、課題を実践すれば、順調に回復します。薬物療法で治らないのに自己洞察瞑 想療法(SIMT)でなおるのは、こういう仕組みであると推測しています。薬物療法の場 合には、体質によって、効かない人がいるのですが、自己洞察瞑想療法(SIMT)の場合には、前 頭前野などの機能とされる課題を実行するので、必ず神経細胞が動きます。実施方法が 適切で実施量が多ければ、必ず変化が起きるはずです。使う神経は活性化します。 自己洞察瞑想療法(SIMT)の課題は、意志作用の訓練です。目的を想起し、不要な 作用(特に否定的な思考)を抑制し、不快事象があっても目的を放棄せず、目的に そった行動を選択し、決意し、実行します。こうして、うつ病が治ります。このトレーニ ングによって治った人は、再発が少ないです。以前にうつ病になった精神作用の使い方 がわかり、トレーニングによって、うつ病にならない意志作用の使いかたの訓練が できているからです。 以上は、形式的、技法的な方面からと脳神経生理学的な視点から治るわけを推測しましたが、自己 や世界(対象と自己の生きる場所)の哲学的見方の変化があります。自己洞察瞑想療法(SIMT)の実践 は、自己自身の哲学的な見方の変換を起こします。技法も実は、自己の哲学的な探求からのものです 。自己の作用、苦痛の対象は何か、作用を起す自己とは何かという自己を深く探求します。苦痛の対 象も苦痛の作用(感情や衝動的思考・行動が多い)も、自己自身の心の中のことであるとの自覚的見 方がうまれます。 そうなると、うつ病をひきおこすストレスの種(職場、苦手な人、症状など)も自己の心にあるもの ですから従来の対処のしかたが変化してきます。治った後も、世界、苦痛的対象、自己の見方が変化 しているので再発しにくいのです。 (次は、非定型うつ病です) |