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被災地に相次ぐ自殺(1) [2011年11月15日(Tue)]

NHKスペシャル 東日本大震災
 =助かった命がなぜ(1)

 東日本大震災で生き残った人に、自殺があいついでいる。一見、孤立していない人も自殺している。 11月13日(日)、NHKが報道しました。自殺を防止するために、詳 細にみておきます。

   8月、50代の男性が自殺しました。この町で生まれ、母と暮らしていた。家は津波で流された。帰省 してきた長男といっしょに、ワカメ養殖を再建しようとしていた。 自宅近くの高台に土地を購入して家を立てようとしていた。新築費用のめどはたっていなかった。
 (A) 5時ころ目がさめて、友人をよびだしていた。さびしそうだった。家族には、そういうしぐさはみせな かった。前日も、息子と家のことを話していた。工務店に電話した2時間後、自殺。

 (B) 8月、50代の女性が自殺。家を流され同居の父を亡くした。めんどうみのいい人だった。仮設住宅に 移った。荒れた自宅によく行った。 父を助けられなかった自分を責めた。お盆では笑顔をみせ元気そうだった。その後、家のことに何も手を つけられなくなった。お盆明けの4日後、なくなった。
 書き置きが残されていた。
「子どもの能力しかなくなった。ごめんなさい。」

 自殺する人は、家族にも「死にたい」と言わないで実行することが多いです。 「死にたい」ともらして、思いとどまるように説得しても死なれることがあります。 その精神状態が治るとは思えないようで、言わずに死んでしまうことも多いのです。 家族から「そんなことしないで」といわれても、してしまうことがあります。 これは、何としても避けたい。家族がうつ病を理解しておいて、ささえてあげたい。
 死なれないためには、いくつかを本人に十分納得してもらう必要があります。 (1)うつ病という病気であること (2)家事ができない、死にたいというのは治療すれば治るという展望を説明すること  (3)悩みの出来事は色々な支援を受けていこうと具体的に説明すること (4) 現実に専門家のケア、治療を開始する、家族が同行すること、 (5)治るまでに時間がかかることを納得すること、(6)重要なことはあとで決めること、(6)家族全員が悲観的になっている場合、こういう情報を得るために、地域の相談機関に相談すること、などです。

 この人たちに、自殺の、うつ病の兆候がみられます。朝早く目がさめる「早朝覚醒」。家事ができなくなる。 「子どもの能力しかなくなった」というのは、うつ病の症状によって、頭が回転せず家事もできなくなることでしょう。被害のストレスによって、前頭前野、前部帯状回、海馬などに病理が生じているようです。日常の行動さえもできずつらいのです。
 被災地の方は多くのものを失っているので、うつ病になる可能性がきわめて高い。うつ病の症状につい て、集会などでよく説明する機会を持ち、「死にたい」思いがあるのならば、家族が「病気のためだ、死なないで」と説得できる ようにしたい。そして、うつ病の治療につなげたい。うつ病になると、 思考力、判断力が低下しているので、治せる「うつ病」のせいだということを理解していないことがあります。うつ病について知らない人にとっては、実際自分がそうなった時、実にわかりにくいのです。悩みから死にたくなるのは当然だと思う。そこに「うつ病」という病気があることを知らず、うつ病が治れば、頭も回転し、家事・仕事もできるようになり、死にたい気持ちも消えるものです。「死にたい」のは、うつ病という病気がさせているのです。うつ病は薬物療法や心理療法でかなり治るのです。うつ病であることに気づいて治すことが大切です。 何も言わないで自殺されないように、うつ病の兆候(睡眠障害、家事ができない、じっと動かない、人にあわない、起き上がれない、などいくつかある)に気づいて、家族や知人が踏み込んで、自殺したい 気持ちを聞き出して、上記のケアをしないと死なれてしまう。「死にたい」という気持ちを知ったら、「そんなことを考えてはいけない」などと言って、対策をとらないのはいけません。 うつ病による「死にたい思い」(希死念慮・自殺念慮)は、状況の変化、病気の軽快が進まない限り、繰り返し出てきます。ちょっと刺激があると、実行されてしまうおそれがあります。すぐに、専門家のケア、治療を開始すべきです。

(続く)
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    (難治性のうつ病、非定型うつ病、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)には マインドフルネス心理療法が効果的)
  • Posted by MF総研/大田 at 16:51 | 災害とストレス | この記事のURL