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うつ病の改善例・手記(1) [2011年10月14日(Fri)]
うつ病の改善例・手記(1)
 =マインドフルネス心理療法(SIMT:自己洞察法)によって症状が改善した事例

 マインドフルネス総合研究所の新しい心理療法(マインドフルネス、アクセプタ ンスを中心とした「自己洞察瞑想療法」)で、うつ病が改善した方の手記を掲載し ます。
 薬物療法では治らなかったうつ病で、すぐ前に、自殺念慮まであったひどいうつ 症状が改善され、再就職もはたし、その後、順調に勤務しておられます。
 同じようなことで、悩む人に役立つならば、自分の体験を発表してもよいという ことですので、ここに、掲載させていただきます。
 初めてカウンセリングにこられた時、20代の独身女性でした。
プライバシー保護のため、ご本人と同定されるような情報は含んでおりません。 (*筆者注)は、手記にはないもので、大田が加えたコメントです。

長いので、3,4の記事に分けます。
1)うつ病になる
<前年の春ころから>

   カウンセリングに行く前年の春ころから、うつになりました。 うつ病は、当時事務職員として勤務していた精神科での仕事上のストレスが主な原 因となって発病しました。
 ただ、そのことはきっかけであって、いつ鬱病になってもおかしくないような、 次のことをかかえていて、いつもギリギリの状態で生きていたことも原因であると 思います。
  • 病気の母に対する心配
  • 両親が不仲の中で育ったことに起因する様々な悩み(自己評価の低さ、社会の中で の生きにくさなど
  • 仕事上のストレスの積み重ね
  • 通信制の大学の勉強がはかどらなくなった焦り
 その全てをギリギリで耐えていて、その出来事をきっかけに全てがもろく崩れた ようでした。 ただただ自分の無力さに絶望していました。頑張っても頑張っても報われないこと に生きる希望もなくしていました。
 母を亡くしたら生きていけないのでは・・・という恐怖も常にありました。 母子依存がとくに強く、そうならざるをえない環境に育ったことを恨んだこともあ りました。

2)薬物療法による治療の経過

<前年10月>

病院へ通院、そして薬物療法
 薬はまず軽い眠剤から始めました。初めて心療内科に行ったのは、前年の10月 です。
 いつでもどこでも寝られるくらい普段から睡眠力には自信があったのですが、寝 付けない、また中途覚醒の時間がどんどん早くなっていく、その間がものすごく苦 しい・・・という状態が続くようになり、ちゃんと眠れるようになればなんとか頑 張れるのではないかという期待もあり、眠剤をもらう決心をしました。初めは眠剤 を飲むことにすら抵抗がありました。軽い眠剤では全く効果がなくなり、徐々に強 いものに変わっていきました。
 抗うつ剤もまもなく処方されたのですが、副作用に対する不安と、抗うつ剤その ものに対する不安でなか飲むことができずにいました。
 発病する前に、一人の医者の本音も聞いたことがありました。「うつ病はなおら ない。」と。
 11月ごろから抗うつ剤(ルボックス)を飲みはじめました。治るなら・・・と 思い、行ってみた東京のセラピー(1回15000円もしました)ではどうにもな らないと感じ、体も限界だったので、少しでも楽になれるのならという思いでした 。そのころの睡眠剤も短時間のものでは全く効かなかったので、長時間のロヒプノ ールを処方してもらっていました。
 休職して、本格的に薬物治療を始めました。
 トレドミンを25mgからはじめ、最終的には一日の最大使用量の1.5倍の125 mgまで量は増えました。他の世代の抗うつ剤も勧められたのですが、副作用に苦し む患者さんを沢山知っていたので、拒みつづけていたので、やむをえずトレドミン を最大使用量以上に増やすことになりました。3〜4ヶ月ぐらいその量だったと思 います。
    (*筆者注)薬で軽くなる人もいますし、副作用のない人もいます。個人差があります。

<カウンセリングに行くことになる年1月〜4月>

起き上がれない
 一番症状がひどかったのは12月から2月ぐらいでした。そのころはベットから 出るのも億劫で、ひどい日は1mはなれたヒーターの電源に手を伸ばすこともしん どいくらいでした。トイレに行くのにも思い立ってから何時間も経たないと動けな かったり、外の駐車場にある車までもがものすごく遠い場所に感じていました。
 友達の誘いもほとんど断っていたのですが、友達との時間を持つことと、長年や っていた 同好グループの集まりに行くことは、社会とのつながりを保つ数少ない支えでもあ ったので、体調がよいときは多少無理をしてでも夜だけは外にでるようにしていま した。
 少しずつパソコンに向えるようになってからは、ひたすらうつ病からの脱出方法 についてばかり検索していました。 本も10冊以上は読みました。それ以外の本は全く頭に入ってこないのに、なぜか うつ病についての本だけは読めたことも、今思えばとても不思議です。
 人とコミュニケーションをとることがものすごく辛かったので、心を許した友達 と会うのが精一杯で、ひどいときはスーパーのレジでおつりをもらう手が震えるこ ともありました。
 うつ病を克服したひとは、あの苦しみを忘れてしまうということをある本で知り ました。この苦しみを忘れることができることなんて正直信じることはできません でしたが、忘れてたまるもんかという気持ちと、グルグル頭の中を駆け巡る苦しさ を吐き出すためにも、大学ノートに思うことを全部書くことを2月ぐらいからはじ めました。5月のはじめまで書き続け、大学ノート2冊分になりました。今読み返 しても恐ろしいほどの内容で、確かに今現在あの苦しみを体感していない自分にと っては、ありえないような世界に思います。
 3月には同じ苦しみを分かち合える人と話すことができれば何かが変わるのでは ・・・という期待もありうつ病の自助グループにも2度参加してみました。しかし 、正直うまく機能を果たせていないような印象を受け、通うことは断念しました。

自殺も考えた
 休職扱いだったのを、4月に退職をしたこともあり、絶望感は以前つづいていま した。マインドフルネス心理療法にたどり着くまで、自殺願望がものすごくあった ことも正直なところで、合わない睡眠剤を何度も変更しているうちにあまっていた 睡眠剤を沢山残していて、もうだめだと思ったら飲むしかないとひそかに思ってい ました。(自殺願望については、「4)抑うつ気分が改善」の項にも記載しています )
 初めてカウンセリング予約のためにメールさせていただいたときの、短文を打つ のが精一杯で、約束していただいた当日もぎりぎりまで起き上がれずに、行こうか どうか迷っていたほどでした。

3)カウンセリング開始
<発病してから1年ほどたった年の4月>


マインドフルネス心理療法のカウンセリングを受ける

 薬物療法を開始して、6か月になるが、一向に改善しませんでした。インターネ ットで検索してみつけたカウンセリングの団体(マインドフルネス総合研究所の前 身)に、カウンセリング予約のメールを送りました。その短いメールを打つのさえ 、やっとの思いでした。面接の予約の日にでかけました。
 面接では、いつも、カウンセラーのお二人から指導を受けました。 発病の頃の様子、これまでの薬物療法の経過、現在の様子などをきかれて、お話し しました。そして、その後、なぜうつ病になるのか、薬物療法で治らない場合でも 、新しいカウンセリング手法で治る可能性のあるわけを説明していただきました。
 そして、呼吸法の行いかた、日常生活の行動の中での心得(食事中の心得を実際 、お菓子を食べながら五感覚に注意を向けている方法を教えてもらいました)を指 導してもらいました。そして、次の面接までに、自宅で行なう課題を与えられまし た。

4)抑うつ気分が改善
<マインドフルネス心理療法を開始して1カ月経過>

 課題のいくつかを実行し始めて、1週間すると、不思議なことに気分が少しよく なってきました。先週までと違うのは、呼吸法、水泳をやったことでした。朝起き るようになって、する時間が多くあるので、クッキーを作ってみようという意欲が 出てきて、本を見ながら作ってみました。カウンセラーの方にもさしあげようと作 りました。
 初回の面接から2週間後に、2回目の面接に行きました。その時、クッキーをさ しあげて、こんな意欲が出てきた、とお話ししますと、大変喜んでくださいました 。
 この時以後は、うつ病のこと、感情処理のこと、呼吸法のこと、セロトニン神経 や前頭前野のことなどの説明が図に書かれたプリントを渡されて説明されたことと 、呼吸法の実習の2本立てでした。また、2回目には、「活動スケジュール表」を 渡されて、毎日の目標(朝起きる、呼吸法、軽い運動などの課題)を設定しておい て、毎日、実際、どうだったかを記入するようなフォームでした。私は、それに記 入して、面接のたびに持参しました。
 自分がうつ病を起こしたり、治らないのは、繰り返し同じ反応パターンをするか らで、それを分析する図、苦悩の循環図も教えられました。
 約1カ月経過して、抑うつ気分や無気力、自己否定観が劇的に好転しました。嬉 しくて、5回目のカウンセリングに行った翌日、次のようなメールを送りました。 なお、その後の「」もカウンセリングの先生に送ったメールから抜き出した言葉で す。(見出しは、この手記を書くにあたって挿入したもの)

<2カ月経過>


(次の記事へ)

(続く)
★そのほかのかたたち
Posted by MF総研/大田 at 06:07 | 新しい心理療法 | この記事のURL