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認知療法があるのになぜマインドフルネス心理療法か [2011年08月03日(Wed)]

認知療法があるのになぜマインドフルネス心理療法か

=専門家の我執・エゴ

 うつ病や不安障害の治療法としては薬物療法、認知行動療法、対人関係療法、マインドフル ネス心理療法などがあります。がんや身体の病気には、インフォームド・コンセン トとして、いくつかの治療法があることを患者さんに伝えますが、うつ病や不安障害の場合、病院に行くと、他の治療法の説明がな く、薬物療法が開始されているようです。イギリスの場合は、まず、心理療法(認 知行動療法)であるのとは違います。 薬物療法は、非常に重症である患者を重症にする効果があるということにも合致し て合理的なように見えます。日本には、認知行動療法の心理士が少ないので同じよ うにはできません。
 一つだけの立場と多くの立場をすべて含んだ世界の立場ということからうつ病( 不安障害も)の治療関係を図で表示すると下記のようになるでしょうか。 一つの立場では、図1のようです。自己(患者、クライエント)は 世界全体を知らないし、教えられていません。医師も心理士もそうです。他のことをよく知らない。 しかし、世界全体では、大体、図2のようになるでしょう。世界の立場なら、 患者(クライエント)および医師(または心理士)は、今は医師Aまたは心理士aの治療を受けていても、他に多 くの医師、心理士がいることを知っています。

うつ病、不安障害の治療世界の特徴

 多くの病気は、世界の立場をとっています。患者も納得のいく治療法、医師を探 します。医師も専門病院を紹介する仕組みになっています。がん治療の専門でない 医師は、患者さんががんではないかと思うと、専門病院を紹介するのが普通です。
 しかし、精神疾患(心理療法でも治るうつ病、不安障害などに限定しての議論です)は特徴的です。ある年月治らない場合でも「私のところで治ら ないので、もっと専門家(医師、心理士)を紹介します。」ということが少ないよ うです。患者(クライエント)さんも、同じ医師(または心理士)に、(治らなくても)長く ついています。病気なら早く治りたいので、ある期間治らないと、別の専門家をさがすはずであるのに、精神疾患は、不思議な関係 になっています。生命がかかっている(ながびいていると抑うつ症状が強まり自殺のリスクがある)のに、不思議です。

西田哲学でいう専門家の執着か

 もし、医師Aが医師Bか心理士a,bを紹介すれば、その治療で治るかもしれません。 薬物療法でなくて、心理士が担当すれば、治るかもしれません。アメリカでは、認 知行動療法やマインドフルネス心理療法で治る患者もいるのですから。専門家(およびその集団)が自 分の患者さんに自分の治療法をいつまでも執着しないほうが治るかもしれないわけ です。そのことは心理療法の中でも言えます。心理士a(病理レベルの治療には不得 意な心理士)が長くカウンセリングしても治らない患者さんを他の心理士bc(うつ病 を治療する認知行動療法が得意)に紹介すると治るかもしれません。別の病気がひそんでいるかもしれないのに、心理士の善意が治療を遅らせるかもしれません。

患者と治療者の全体の世界の立場

 図2のような全体(もちろん他の治療法もあります)の立場を知って患者と医師 Aが一定期間向き合う(自由に他の医師、心理士に変わることができる)ことが世 界の立場からであり、それがなく、図1のようであれば、「技術者(専門家およびその職業団体)の我 執、個人の苦悩、世界の歪曲」 の様相を帯びていると言えるのでしょうが、心理療法がアメリカほどに普及していない日本では患者さんに選択の自由が少なく悲しい状況になるのかもしれません。
 来る患者を<すべて>受け入れるのは支援者の良心と義務でしょうが、一定の期間でうまくいかない場合には状況が変化します。「治さないことが、か えって患者さんが治ることをもたらす」「治そうとすることが、かえって治ること から遠ざける」そんなことにならないような 仕組みを作っていきたいものです。うつ病や不安障害は多いです。自分や家族が。患者、家族、専門家が世界の立場で動くことにかかっているのではないでしょうか。
 薬物療法のみの専門家が多い日本です。前の記事で、西田幾多郎が、技法、スキルに熟練した専門家にも我執、独断が生れるという人間の本質という心は理解しにくいのですが、上記のようなことなのでしょうか、専門家でないので、よくわかりません。
 マインドフルネス心理療法は新しいのですが、これをしても改善しない患者さんもおられます。グループ治療に不向き、個人指導なら可能性あり、カウンセラーのスキル不足、患者さんが課題を実行できない、他の病気の可能性、患者と治療者の信頼関係など多くの要因があります。そういう人には、他の認知行動療法や薬物療法が向く可能性があります。 だから、そういうクライエント(患者さん)は、いつまでもこの治療法に執着しない方がいいのではないか、他の治療法、専門家を探すべきではと話し合います。

患者の立場からの治療体制の整備

 うつ病や不安障害も、 自由に色々な治療法と治療者を選択できるようにしたいものです。県に1カ所は、高度の心理療法を受けられる大規模病院を設置してもらいたいものです。うつ病が治らないことによる 社会的損失や個人の不幸、薬物療法を続けるコスト、認知行動療法者を育成するコストを計算して、認知行動療法者の育成に踏み切ったイギリスのように、ある県(市)だけでもそういう試算ができないでしょうか。
 患者さんは他の病気ならば、自分の納得できる医者をさがします。アメリカに行 く人もいます。 どういうわけか、うつ病、不安障害などの精神疾患は、図1の関係が、1年、3年も続きます。 支援者(治療者)も他のもっと専門とする医師や心理士を紹介することが少ない。そういう専門病院がない。 心理士も他の心理士を紹介しない傾向がある。一次的な治療で治らない難治性の精神疾患を引き受ける専門病院の仕組みがない。一次的な関係者のところに留める状況が定着しているようです。精神疾患は<病気>であるのに、他の病気とは違う関係が 生じています。治らないことも多い(再発)、致死率(自殺)が高いことや苦痛が 長い(社会的活動からの退避)のに、不思議な現象です。
 他の病気のように、患者さんや家族が重要な役割をになうことしかないように見えます が、精神疾患は、社会的な活動を困難にするという症状があるために、患者さんが多くても、よりよき治療 を求める社会運動とならず、患者さんを支援者と同等の人格として尊重する世界の 立場を実現することが遅れがちなのかもしれません。世界の立場に立つことが<科学的>であるはずです。心理療法で改善できる精神疾患(うつ病、不安障害、依存症など)が多いので、その治療法の普及のために国家予算をさいてほしいものです。

東日本大震災の被災地でのうつ病、PTSDの治療は?

 東日本大震災の被災地でも体調が悪いと、医師の診察が受けられるのに、精神の 不調(うつ病という深刻な病気、死亡=自殺がひかえているかもしれないのに)は、 医師の診察を受けられない状況なのかもしれません。精神科医が被災地には少ないようですから、気がかりです。うつ病に詳しい医者や心理士が少ないのではないでしょうか。 この非常事態に、すべての思惑を超えて、 被災者の立場で被災3県にうつ病治療法センターの設置をしていただきたいです。一つに偏らず、種々の専門知識を結集して、被災者の心のケアにあたっていただきたいです。
  • 専門家の我執(治療者・専門家も自己の我執、エゴをみつめつつ支援行動
    =さもないとクライエント・患者を結果的に苦悩から救わない)
  • 専門家の我執>(治療者・専門家にも我執、エゴがある)
  • 我執が人に本質的>(すべての人間に我執、エゴ)
  • NHK うつ病にまつわる専門家のエゴ >
     =薬物療法で治らず認知行動療法で治る割合が高い問題に、薬物療法の専門家が執着するとクライエントを不幸にする可能性がある。専門家が一つの立場に執着することの危険性。
  • カウンセリング、心理療法にも専門家の我執・エゴが起きる可能性がある
     =傾聴型で治らず認知行動療法で治る割合が高い問題に、傾聴型の専門家が執着すると クライエントを不幸にする可能性がある。
     病理の問題のスキルのないカウンセラーが病理を扱うエゴ。病気レベルならば、 病気を治すスキルのある治療者が扱うべきで、患者は当然、治してくれると期待している。 誠実な専門家でも、扱うスキルのない人が執着していると、クライエントを不幸にする。 専門家が一つの立場に執着することの危険性。
  • 西田哲学とマインドフルネス心理療法
Posted by MF総研/大田 at 21:17 | 新しい心理療法 | この記事のURL