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PTSDの予防法 [2011年04月12日(Tue)]

被災者の心のケア、心の病気の予防のためのマインドフルネス心理療法

 (16)PTSD(心的外傷後ストレス障害)の予防法(1)

 大災害の被災者の方は、その出来事が去ってから、心的外傷後ストレス障害 (PTSD)になる人がおられます。フラッシュバック、悪夢などの 再体験症状、回避症状、過覚醒などの症状に 苦しみます。
 こうした症状が現われる背景に、 前部帯状回(内側前頭前野)、海馬、前頭前野の体積の減少、交感神経の亢進があ るようです。
 PTSDを治すための治療法には、薬物療法や心理療法があります。 PTSDを発症(数か月後まで発症し、5年10年治らない人もいます)してからは、 治療法があります。薬物療法(SSRIなどの抗うつ薬)、認知行動療法、EMDR(眼球 運動による脱感作と再処理法)、マインドフルネス心理療法(第3世代の認知行動 療法)があります。
 東日本大震災におけるPTSDについては、現時点では、マインドフルネス心理療法 で「治したい」という要望はなく、それは、半年後から数年にわたって要望がある でしょう。まず、薬物療法が試みられるでしょう。それでも、心理療法を受けたい という要望があれば、その時には、できる限り、ご提供したと思います。  現時点では、発症を予防する方法があるのかどうかが関心事です。うつ病はある 程度、発症を予防できそうです。呼吸法や自分の心の作用を観察する方法など記載 しました。PTSDはどうでしょうか。

PTSDの発症を予防できるのか(1)
 PTSDになりやすい人

 PTSDになりやすい人に対して、事前に把握して、予防対策を提供すればいいとい う考えが思いつきます。
 PTSDが発症してからは、海馬の容積減少があるとされるがそれが発症前からあっ たのか、その外傷後に減少したのかどうかについては見解がわかれています。 そういう神経生理学的な脆弱性についての研究もありますが、省略します。

 ただ、発症前からある種のなりやすい要因が推測されている。そのような人は自 分でも自覚できるはず(たとえば不安過敏である)ですから、そういう人に対して 外傷後、支援対策を提供することができれば、PTSDの発症を予防できるかもしれま せん。
 統計によれば、女性のほうが男性よりも2倍程度あること、高齢者よりも若い人 に多いという報告があります(加藤寛,2006,64頁)。高齢者は過去を乗りこえてきた 経験から心の病気になるほどに影響を受けにくいようです。 重要なのは、神経症傾向(不安過敏性、不安障害傾向でしょう)や内向性の人は、 なりやすいと言われている点です。
     「過去の災害研究で得られた知見として最も重要なのは、災害前の個人的な背景 が影響するというものである。マクファーレンが示した神経症傾向や内向性がPTSD などの発症に寄与するという見解は、PTSDが単に原因に暴露したことによって起こ るのではなく、個人の脆弱性が大きく寄与するという理解を知らしめた。
     そのほか、災害後の個人的対処法(coping skill)や社会的支援(social support) が、どのようにPTSDなどに影響するかについても研究されているが、主に方法論的 問題から一致した見解には達していない。」(加藤寛,2006,64頁)
 災害前から、不安障害、不安過敏性、内向性傾向のあった人は、災害によって起 きた経済的、環境的な激変、将来の不安が大きく感じられて、悲観的、否定的な思 考を重ねて、神経生理学的な反応が累積して、PTSDの症状につながるリスクが高く なるでしょう。そのようなリスクのある人々に対する支援が保健所などで行われて います。「個人的対処法(coping skill)」にも言及されていますが、災害以前から 、認知療法、マインドフルネス心理療法のスキルのあった人は、おそらく、こうし た場合にも、効果があるでしょうが、「方法論的問題から一致した見解には達して いない」とされていますね。ただ、今回の災害時にも、現在治療中の方からも数人 、被災地ではなくやや離れた土地でこの地震を経験していて、報告を受けています が、呼吸法、自己洞察法で乗り越えて、影響は長くは受けていないようです。 マインドフルネス心理療法による予防効果は今後の課題です(注2)。


(注)
(加藤寛,2006)加藤寛「自然災害とPTSD」(こころの科学129号)日本評論社。
(注2)被災を受けた県のある市町村か、心理学系の大学との共同で、被災を受けた ある市町村の人々に集中して、数年継続して(並行してカウンセラーを育成しなが ら)、マインドフルネス心理療法を提供して、長期間にわたり、これを提供しない 他の地区との比較研究をしてみたい気があります。うつ病、PTSDの発症率、治癒期 間、治癒割合の比較研究です。被災地が近いので、できそうです。 マインドフルネス心理療法は、まだ提供できる医師、心理士が多くはありません。 しかし、アメリカでの実績を見ると、研究に値する心理療法です。

(続く)
  • <目次>災害時、心の病気の予防のためのマインドフルネス心理療法
  • 参考記事
  • Posted by MF総研/大田 at 11:15 | 災害とストレス | この記事のURL