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うつ病は現在の薬物療法では治らない人が2,3割 [2011年01月10日(Mon)]

うつ病は現在の薬物療法では治らない人が2,3割

 =従来の薬物療法も心理療法でも「うつ病」には不充分

 うつ病は自殺念慮が起きる深刻な病気である。自殺が13年間3万人以上であるのは、 うつ病の治療法が遅れているのも問題である。
 うつ病になっても、薬物療法で治らない人が多い。非定型うつ病ならば、薬物療法 ではあまり効果がない。 抗うつ薬はモノアミン(セロトニンなど)に作用する薬であるが、根本的な治療薬で はないことがあきらかになってきた。
     「しかし残念ながら、現在モノアミン仮説は過去のものとなりつつある。・・・
    現在の薬物療法では、わずかに50%以下のうつ病患者が完全寛解に至るだけであり 、部分寛解を含めても反応率は70−80%程度となっている。」(参照文献146頁 )
 セロトニンが薬によって増加しても、すぐには、治らない。うつ病の病変部位は、セロトニン神経ではなくて、他の部位である。前頭前野、帯状回、海馬、HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)、自律神経系、体内時計、鉛様麻痺感の部位(具体的な部位は未知)など、セロトニン神経ではない部位の変調が回復しないと、うつ病は治らない。
 非定型うつ病は特に治りにくい。こうして、治らない人が相当の人数になる。うつ 病の人が100万人いれば、20万から30万人が治らないことになる。薬物療法を受けていない人は、3,4倍いるかもしれず、うつ病が治らず苦しんでいる人は多いはずだ。自殺問題では、触れられることがなく対策が遅れてしまうのが、パニック障害、対人恐怖症などの不安障害である。これも薬物療法だけでは完治しにくく、社会復帰できないで苦しむと、うつ病を併発して、自殺のリスクが高まる。不安障害の人への対策も十分ではない。
 モノアミン仮説による薬物療法よっては、 治らない患者さんの救済対策が極めて重要な課題である。モノアミン仮説によらない薬の研究も行われているようだが、いつ実用化されるかわからない。自殺のリスクがあるために10年も待てない。認知療法、マインドフルネス心理療法などの心理療法をどの県でも受けられるような対策をとるべきだ。
 心理療法も、傾聴型の心理療法が多い日本では、認知療法、マインドフルネス心理療法によって、うつ病を治すカウンセラー、心理 士がきわめて少ない。
 パニック障害や対人恐怖症など不安障害も治りにくく、電車に乗れず、小集団の職場にいられず就職できず、追い込まれるとうつ病を併 発して、おなじく自殺への危機がある。
 とにかく、上流の社会的経済的要因の対策ばかりでなく、下流の、うつ病、不安障害などを治す心理療法の普及が急務なのである。 このことを関係者は熟知しているのだろうか。

患者の立場に立たないエゴイズム

 治らない割合が高い病気に、一つの薬物療法が効かないのであれば、他の治療法を提供すべきであるのに、うつ病の心理療法の領域には、医者も心理士も参入できにくい体制になっている。熱意ある人が参入してもこの領域で報われない。健康保険や国の助成金がないので、患者家族の負担が大きく、受診者がふえない。心理療法者が報われないので、日本では、認知療法、マインドフルネス心理療法の臨床を行う人が出てこない。心理士は別の分野にしか行かない。うつ病、不安障害を治す領域に、心理士も医者も参入できない。
 治療法がないのではない。専門家が知らないわけでもないだろう。国や医師やカウンセラーの団体が用いないだけだ。知らないならば、勉強不足で大問題である。知って用いないならば、 国や団体のトップの良心の問題でもある。トップが動かないと若い人は動けない。国が動かないと県は動かない、県が動かないと市町村は動けない。

 集団のトップや長老は、過去の自己自身の主張にしばられて、新しい独創的なものを受け入れられない。下位の構成員は、そういう長老に縛られる。大きな集団ほどそういう硬直性がある。トップも構成員も新しいことをして批判されることを警戒する。なかなか動かない。13年も自殺が3万人以上、続くのもそういう犠牲の面もある。時代が変化している、傾聴型ではすまない心の病気が急速に増加したのだろう。

 従来の心理療法やカウンセリングは、大変幅広い領域の知識が必要とされて、効果をあげてきた。ただ、その手法は、現代の深刻な心の病気には使えないという事態になっている。これまでのように、従来の心理療法を必要とする分野もあるが新しい変化に対処すべき新しい救済法がある。うつ病、不安障害などを心理療法者が治すというのは新しい領域なのだろう。もともと、病理レベルをカウンセラーが扱うという事態を想定していなかったのだろう。アメリカでは、別の人材がやっているということか。新しい人々による、新しい革新的な考え、手法が必要となっている。伝統に縛られない新しく参加する人、若い人の活躍を期待する。 傾聴型は徹底的に傾聴だろうし、 傾聴型のスキルを習得するのも難しいという。 認知療法やマインドフルネス心理療法は積極的助言が必要であるというので、かなり哲学が異なっている。同じカウンセラーが行うのは葛藤を起すのではないだろうか。他の人材がやるしかないのだろう。
 うつ病、不安障害は、積極的治療型の心理療法で、もう少し治せる割合が高まる。自殺をもう少し減らすことができる。

    (参照文献)
    楯林義孝,2008 「第6章 うつ病と神経可塑的変化 『精神の脳科学』加藤忠史編、 東京大学出版会
Posted by MF総研/大田 at 20:27 | 自殺防止対策 | この記事のURL