福井県主催のシンポジウム(2) [2010年11月04日(Thu)]
福井県主催のシンポジウム(2)=(2)自殺予備軍シンポジウムで私が語ったのは、「心理的面での自殺予備軍」です。 毎年、3万人以上の尊い人命が失われていますが、「これは氷山の一角のでしょう? 」という私への問いかけに対して、「うつ病の患者さんが100万人以上ですからそ うなります」と答えましたが、そのほか、うつ病でありながら治療を受けていない人 も相当います。うつ病になると半数以上の希死念慮、自死念慮が起きるのですから、 現在、うつ病である人が最もリスクが高いです。そのほかに、統合失調症、アルコー ル依存症からも自死があります。 自殺予備軍最初にお話ししたのは、もっと、自殺予備軍があるということです。「自殺学」の権威、シュナイドマンの言葉を紹介しました。
「精神療法家は、患者が 極度の焦燥感、苦悩、苦痛、威嚇といった出来事を以前に も経験したことがなかったかを検討し、 心理的痛みに耐える能力や、人生で問題から 逃避するパターンはどのようなものであったかを見きわめる必要がある。」 まだ、病気レベルでなくても、図のような精神的な苦悩、身体的な苦悩、行動的苦 悩のある場合治ればいいですが、治らないと誰かがささえてくれていますが、 将来何十年かの後にささえを失うと、その心理的な反応パターンによってうつ病 になるリスクが高くなるでしょう。長期的視野でみた、自殺予備軍(第2の長期的な 自殺予備軍)になります。まだ病気レベルになっていない段階で、心理的痛みに耐え る能力を向上したり、人生で問題から逃避するパターンを変える心理療法を受ければ いいのです。不幸にして、うつ病や不安障害(パニック障害、対人恐怖症など)になった人も、 その段階で、この反応パターンを変えれば、もう自殺予備群から抜けることができるのです。 高齢になってからは同居しても自殺がある統計上、年代、原因で多いグループから考えています。
◆家族の不和、支えてくれていた人の死亡、離別 ◆支えてくれていた人の支援不能状況の出現 =身体・心の病気、老齢 があるでしょう。 こうしたことがあるために、うつ病になりやすく、治らないと自殺に追い込まれる でしょう。同居していてもささえきれないのでうつ病になる。そして、薬物療法で治らないと自殺がある。中高年になってからのうつ病は、不安過敏性の非定型うつ病が多いので、薬物療法がききにくいのです。心理的反応パターンを変える心理療法の重要性が理解されるはずです。安い費用で、うつ病(特に、非定型うつ病)、不安障害に効果のある心理療法を受けられる場所、NPOが必要です。 メンタルな側面の自殺予防対策を60歳以降は、経済問題、過労、勤務、多重債務などによるものではないでしょう。 ここにも予防対策の重点をおかないといけないでしょう。うつ病は、若い人もなりま す。薬物療法で治りにくいうつ病もあります。 つらいことに耐える心のスキル、つらいことがあった時の反応パターンは薬物療法だけでは成長しません。 こうした領域における支援対策をとっていただき たいです。もう切迫している自殺予備軍と長期的にそこに追い込まれていく自殺予備 軍がいます。若い頃からの自殺予防対策、すなわち、不安過敏など、それに対する反 応パターン、痛みに耐える能力などのことですが、それが大切です。同居家族のささえなくても うつ病を悪化させないような心理的スキルの獲得対策です。 それと、うつ病、非定型うつ病、 不安障害などが薬物療法でも治らない人に対する治療支援対策です。 そういう方面で、 家族にできること、地域にできることがあります。うつ病、不安障害に強くなるように、どの年代でも変わることができます。そのような心を本質的に備えていますから。ただ、 あまりに高齢ですと、意志作用を活性化するトレーニングは無理になります。 少し早くから予防対策として心の反応パターンのトレーニングをするのがいいと思います。また、偏見、プライバシーの問題があって、 個人によっては、グループ指導方式、近所の人にあう可能性のある場所に通う方式は難しい方がいます。また、病気のためにカウンセリング所に行けない人もいますので、多様な心理療法の形式、サービスが必要になります。多くの支援者が必要になります。そうでないと、薬物療法だけでは、自殺を防止できません。 (続く、もう一つの記事へ) (シンポジウムで言いたかったことですが、時間がなくて十分に伝えられませんでしたので、ここに記しました。マインドフルネス心理療法については、石川県かほく市の講演でお話しさせていただきます。実は、呼吸法を活用すると、意志作用を活性化できるのです。初期のころ、呼吸法を用いて、意志作用を探求してもらいます。⇒もう一つ、シンポジウム関連の記事へ) |
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