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神経生理学的フュージョン [2010年10月23日(Sat)]

「どうやってうつ病、不安障害を治し自殺を防止するのか」

自己洞察瞑想療法(SIMT)の構造

(=この章は、マインドフルネス心理療法を研究しようという専門家、カウンセラーの人向けに書いています。)

神経生理学的フュージョン( neuropsychological fusion )
 =(C)の領域

 うつ病、不安障害などは、神経生理学的フュージョン(連合)を考慮しなければ、治りにくいケースが増加している。認知だけの問題ではない、神経生理学的な変調が生じている。それを変えることを治療方針としなければならない。
 個人は環境・世界によって作られ、個人は環境・世界を作る。「作られたものから作るものへ」という現象は、もう一つの領域においても生じている。個人は内的環境・世界ともいうべき脳・身体から働きかけられて、個人が受け止めて、種々の意識作用を起こして行為している。上記の非叡智的フュージョンで述べたすべての意識作用は同時に内的環境・世界の動きでもある。個人と外的環境・世界との相互作用の時、同時に、すべて内的環境・世界の動きでもある。自己がいかなる意識作用、意志、行為を起すかによって、脳、身体の内的環境・世界を作りかえている。自己は内的環境・世界から作られ、内的環境・世界を作りかえているのである。内的環境・世界はまた自立的に動いている。個人の意志を越えて自立的に動いている。時々刻々と自己に迫り意識作用が内的環境・世界によって作られるが、自己は意志的叡智的に働くか、非叡智的な心作用をするかによって内的環境・世界を作りかえる瞬間に立っている。
 自己は自立的に動いていく外的内的環境から作られ、「今」という瞬間に、それを作り変えることができる位置に立ち、その内的外的環境・世界を作りかえる壮大なプロジェクトに参画するのである。一個の個人だけでは変えることができないが、個人が参画しなければ、個人の周囲の環境・世界は変化が緩慢であるということができる。他者が変えてくれる部分もあるが、自己が変える影響は絶大である。

 うつ病や不安障害(対人恐怖症、パニック障害、PTSDなど)などになるとネガティブな 思考を起こし、そのために起きる感情を嫌悪して非機能的行動を繰り返す。 ここには、言語プロセスが大きな影響を与えていて、関係フレーム理論、認知的フュージョンが提案された。
 ところが、難治性の精神疾患や深刻な問題には、認知の修正を直接用いるのではなくて、種々の精神作用の自覚、意志作用の活性化、自己自身を見るという直観的叡智を獲得することによって、症状や問題が軽くなることがある。 意志作用や直観的な叡智を行使できず、非機能的行動が繰り返されるとを非叡智的フュージョン(NIWiF, non-intuitive wisdom fusion)という。非機能的行動、非叡智的フュージョンの背景には、神経生理学的な変調が大きく影響している。抑うつ気分やパニック発作や鉛様麻痺感などの激しい発作の背景には、神経生理学的変化がクライアントの非機能的思考や行動に強く影響していることが観察される。これを「神経生理学的フュージョン」(NPF, neuropsychological fusion 、神経生理学的連合)と呼ぶことにする。神経生理学的認フュージョンが強く影響しているクライアントの場合には、この神経生理学的変調を軽減する技法があれば、それを用いることによって、心理的柔軟性の欠如の改善に効果があることが確認される。

<第1>うつ病、不安障害にある心理的柔軟性の欠如、体験の回避

 うつ病、不安障害(対人恐怖症、パニック障害、PTSDなど)などに罹患していない人は自由 意思で自らの社会的な役割をはたすべきことに注意を向け、思考し、判断し、機能的行動を選 択している。その時には、自分の社会的な役割をはたすという目標を破壊しないこと、その 時に不要なものを抑制し、社会生活を阻害せず必要なものを自分の学習や体験の中から適切なものを検索して、想起 して、行動に反映している。
 しかし、うつ病、不安障害等に罹患すると、こういう精神活動の一部が障害される。思考や自由 意思ではなく、思考や感情をコントロールできないという無力感におおわれている。 自由意思で、自らの社会的な役割をはたすべきことに注意を向けることができず、非機能的な思 考、行動を抑制できない。その結果、自分の社会的な役割をはたすことができずに苦悩する。 その時に不要なものを充分抑制できず、自分の社会的な役割遂行に必要な活動を自分の学習や体 験の中から検索して、想起して、行動に反映できない。
 このような疾患に罹患している時には、感覚などの刺激、思考、情動性自律反応などから、非 機能的な行為や体験の回避が繰り返される。ある刺激から決まった思考を起こし、ある思考や感情から決まっ た行動(非機能的な行為)を起こす。こうした関係を「連合」とよぶ。

<第2>意識下の連合・生理学的変調

 クライアントが非機能的行動を引き起こすのは、ACTでは、認知的フュージョンによることが説明される。これは同意できる。これを前提として治療すると改善するクライエントもいる。ところが、身体症状や特定の精神症状が強い場合には、言語プロセス、認知的フュージョンではうまく治療行動にむすびつきにくいケースに遭遇する。
 たとえば、うつ病では、気分が悪いとか疲労感が持続する場合、否定的な思考(思考も行動の一種である)を起こす。気分が悪いと、その不快感が強いので、職場に出ることを回避する。非定型うつ病の鉛様麻痺感も同様である。起き上がることができない。思考によらずに回避行動が起きる。パニック発作が就寝中に起きる患者がいるが、これも言語によらずに激しい発作が起きる。多くの精神疾患に身体症状が併存していて、やはり、非機能的行動への連合がある。これらは、近年、脳神経生理学的な視点からの研究がすすんできて、前頭前野、海馬、HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)などに萎縮や異常な亢進、機能低下などの病理現象が生じていることが報告されてきた。パニック発作はPAG(中脳水道周辺灰白質)の亢進説が提示されている。
 感覚(視覚、聴覚、痛みなどの身体症状、内臓知覚など)、思考、感情、身体反応、行動などは意識上に あるが、これらの刺激が過度に強い場合には、回避などの思考を 意識的変えようと思って容易に変えられるものではない。 非機能的な思考、行為が起きるところには、意識下に生理学的な変調が生じていることが多い。
 たとえば、 うつ病の人の非機能的な思考、行為の背景には、前頭前野や海馬の萎縮、HPA系(視床下部ー 下垂体ー副腎皮質)の亢進と負のフィードバック機能不全などがある。 非定型うつ病の鉛様麻痺感も大脳辺縁系のいずれかに亢進が起きていると推測される。
 こういう変調の神経領域の変化を見ることはできないが、症状として意識される。 たとえば、前頭前野の萎縮(と推測される)によって、精神活動の渋滞の症状が起きる。
 意識下の神経生理学的変調がある。意識下の神経生理学的病理があるために、意識的な思考、行動に影響 する。これは、意識下の前頭前野、海馬、HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)などの変調から、思考、行動などに関係、連合が生じている。これを神経生理学的フュージョン( neuropsychological fusion )と呼ぶ。神経生理学的フュージョンは非叡智的フュージョンを増悪させる。神経生理学フュージョン→非叡智的フュージョンの方向である。

<第3>非叡智的フュージョンから神経生理学的フュージョン

 逆方向も生起する。非叡智的フュージョンによって、非機能的思考・行動を繰り返すと、ストレス反応を引き起こして、神経生理学的病理を拡大、維持させる。前頭前野、海馬などの萎縮が進行する可能性がある。そうすると、この神経生理学的病理の悪化により、非叡智的フュージョンがさらに拡大、悪化する。
 こうして、神経生理学的フュージョンと非叡智的フュージョンは相互に関係、連合を形成している。 意識上の連合(非叡智的フュージョン)と、意識下の連合(神経生理学的フュージョン)がある。うつ病や不安障害などに、このような連合があるとす れば、神経生理学的病理を心理療法的技法で改善、緩和できる。これを利用すれば、この相互フュージョンの解消や緩和をすることができて、症状軽減の効果が高まる。これをクライアントに説明すれば、治療行動への動機づけができる。
(続く)

「どうやってうつ病、不安障害を治し自殺を防止するのか」

 自己洞察瞑想療法(SIMT)の仮説、治癒理論
 ( SIMT: Self Insight Meditation Therapy )はマインドフルネス心理療法の一種である が 1993年、日本で開発適用を開始した心理療法

Posted by MF総研/大田 at 21:18 | 私たちの心理療法 | この記事のURL