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貴重な体験を語ってくださった・その後 [2010年04月15日(Thu)]
 セッションに参加中に、改善状況を報告してくださるかたもいるが、 セッションを終って、半年後、1年後の改善状況を報告してくださる方がいる。 心理療法の有効性を追跡確認できるありがたいデータとなる。
 マインドフルネス心理療法のセッションは心の使い方のトレーニングをして、セ ッション10までいく。その後は、
  • 1)さらにしばらくセッションに通う(最長は2年ほどの人がいたが、さらに 3−6か月が多い)
  • 2)セッション10のあとは、 カウンセラーのもとに通わず自己洞察法を自分でやっていく
  • 3)心の健康クラブで続ける
  • 4)トレーニングを全くやめる(こちらにはわからないが、自主トレーニング さえもやめる人もいるだろう)
 こういう方向がある。他の心理療法と違って、完治までカウンセラーが必要であ るわけではない。基礎的なマインドフルネス、アクセプタンスなどの心得で身につ く。不快な事象が起きてもそれを感じつつも、願いを想起して、不快を受容しなが ら今の瞬間を逃げないで、適切な行動を選択する「意志作用」が活性化しだしてい る。自分の残された問題について分析、改善計画、実行ということをやっていく のだが、1)2)3)がそうである。
 2)になった方のその後の改善状況をおしらせいただくことがある。 パニック障害となり、種々の場面の回避がみられた方。 心理療法の手法を十分習得したと半年ほど前「あとは自分でやってみます」と双方 合意で通うことをやめた(セッション10までいかずに一方的にやめるのではなく )かたから数日前に連絡があった。
     「新幹線に乗れました。○から○までですが、とても嬉しいです。まだ、高速、 電車、バスの練習中ですが、これからも気長に頑張ってみます。」
 この人は自主的にマインドフルネス心理療法のトレーニングを続けているので、 やがて、北海道や海外にも行けるようになるだろう。別な人は、飛行機に乗れたと 報告してくださったかたもある。就職できたと報告してくださった人もいる。

 自分の残された問題について分析して、改善計画、実行ということをやっていく のは、うつ病でも不安障害でも同じである。回避、逃避したくなる出来事が一生起 きる。つらいことがあっても、のりこえていく「意志作用」の心の使い方は一生用 いていくものである。面倒だが若い頃の半年から1年のトレーニングに通うことは 生涯の宝をみつけることになる。「自分はすばらしい宝を持っていた、気がつかず にうまく使いこなしていなかっただけだ。自分は大丈夫だ。」と思えるようになる 。私が25年前にうつ病になって、今生きていられるのも、ずっとマインドフルネ ス心理療法として体系化した自己洞察法を続けているからだ。対人関係での感情的 な出来事から発作的症状(感情的に激しく興奮、拒絶過敏、鉛様麻痺感、過食、過眠、パニック発作、痛み、暴言、ひどい落ち込みなど)が起きるかたがおられる。つらいのが自殺したくなることもある。心理療法で治療すると、症状がでなくなってからも、対人関係、つまり、 人とのコミュニケーションがついてまわる。 友人、同僚、親戚、患者さん、クライアントの方との応対などのおつきあいにマイ ンドフルネス心理療法の心得がいかされる。 中学生の時に読んだ田宮虎彦の小説の最後に近い場面の言葉が忘れられない。自殺する場所を求めてさまよう青年に向かって、年老いた遍路のおじいさんがいう。
    「生きていくことはつらいもんじゃが、生きておるほうがなんぼいいことか。」
 こう思えなくなる人も多い悲しい時代になった。社会の支援が薄く改善すべきところも多い。 うつ病や不安障害になっては治す医療が遅れている。 国や 県が改善対策を検討している。だが、そういう外部から与えられる支援対策があっ ても、それだけでは治らない心の病気がある。心の問題がある。 経済的支援、就労支援があっても、治らない場合も多い。だから、薬物療法が研究されているのだが。心の使い方を変えていくことで治る人がいる。 自分の意志作用をうまく使って改善して生 きていく余地もある。職業的知識、身体の健康も大切だが「心の健康」も同様の比 重で大切だ。中学、高校、大学などの 頃、不安、怒り、不満に過敏な心になってしまって、改善せずにそのまま社会に出 ると、ストレスが大きいので、つらい人生となるリスクが高くなる(のりこえられ るひとも多いだろうが)。 これまでは、家族や学校が「心の健康」の教育を大切にしてこなかった。これから 「心の健康」教育も重視してもらいたい。
 成人までに、不安過敏などがなかった人でも、社会に出てかなりたってから、限度を越えるストレスにあって、うつ病、不安障害を起す人もいる。40代、50代、60代でうつ病になったり、自殺も起きているのはそういうケースが多い。特に、定年後は 失うものが多くて、介護、がん、配偶者の死などもあって、うつ病、自殺が多くなる。 こうしたところにも、自分について知らない、自分の精神作用の自覚がない、そういう心の探求をしていないことが原因の一つであると思う。 自己の精神作用を自覚せず、悩みの思考(つらい、嫌だ、不満だ、思いどおりにいかない、こわい、不安だ、など)を渦まかせていて解決行動をしないと、うつ病になる。
 私の場合でも、不安過敏は、大学生のころなくなっていた。就職して順調で、40歳まで何も感じなかった。しかし、40代でうつ病になった。後からわかったが、自分について知らなかった。対象的知識ばかりが豊富でも、自覚的自己の作用、自己自身を知らなかった。ストレスが自己の処理できる限度を越えてうつ病になった。不安過敏性だったからではなくて、自分を知らなかった。後に習得する禅の心得、マインドフルネス心理療法の心得を身につけていれば、発症を防ぐことができたはずだと思った。実際、回復の後、15年後に、もっとストレスの強い状況になっても再発しなかった。 対象的知識(産業領域の知識)ばかりで、自己の精神作用、自己の存在について知らなかった。限度を越えれば、知識では間にあわず、うつ病、不安障害を発症する。 そういう人が多いと思う。
 子どもを持って、育てる年代の人も、ストレスが与える子どもの心への影響を知っておくと、育て方がちがってくるだろう。 社会的、経済的な支援のほかに、心の健康ということは、すべての人にとって重要だ。
Posted by MF総研/大田 at 07:06 | 新しい心理療法 | この記事のURL