• もっと見る
«認知(思惟)作用よりも深い「意志作用」を活性化させる | Main | 「無縁社会」の衝撃»
傾聴に徹した心理士の紹介 [2010年04月03日(Sat)]

傾聴に徹した心理士の紹介

=マインドフルネス心理療法と西田哲学

 昨日、NHKテレビで「臨床心理士」の仕事が紹介されました。 傾聴に徹しようとする臨床心理士が紹介されました。あのように徹底した傾聴型の カウンセリングを身につけようとする臨床心理士ならば、長引く重いうつ病や不安障害の治療は難し そうですね。長びいているうつ病、 重いうつ病は脳内に変調が生じているのがほぼ確実なので傾聴だけでは治らないよ うです。理屈ではわかっているけれど、考えのレベルではどうしようもない病気レベルがあります。傾聴型のカウンセリングでは、クライアント(患者)が考えを述べるわけです。思考レベルです。語ることは、不快事象を再現するので、精神疾患のレベ ルの人には悪化させます。うつ病や不安障害には認知療法が世界的に認められており、傾聴型はうつ病、不安障害には効果があるとは認知されていません。うつ病や不安障害は難しい病気で、2,3回の相談で治るようななまやさしい病気ではありません。
 ただ、臨床心理士も広い領域で貢献しています。臨床心理士が受ける相談 内容は多岐にわたるので、重いうつ病、不安障害以外の領域の相談に大きな貢献をして きているわけです。大学で4年、大学院で2年という長期間の間に、種々の領域に わたって勉強するでしょう。人の悩みは広い領域にわたるので幅広い知識が必要になるでしょ う。
 うつ病、不安障害の場合、病理がわかっていますので、あまり傾聴は必要ありま せん。むしろ、どう助言するかがきめてです。認知行動療法の助言方法も習得するのが難しい。そうした認知療法でさえも効果が不充分とされてきました。うつ病、不安障害を治すのは大変なのです。それなりの治療技術が必要です。傾聴だけでは治りません。    うつ病や不安障害には、傾聴型のカウンセリングに徹していては、限られた時間(1,2時間)に助言できません。 うつ病や不安障害は、聴いてもらうよりも、病理を改善させる心の使い方を変えていく方が治ります。
 西田幾多郎の西田哲学でマインドフルネス心理療法をみています。認知療法もマインドフルネス心理療法も傾 聴はほどほどにして助言を重視する心理療法です。 認知のゆがみを変えるとか、反応パターン(意志の活性化)を変えることで治る、だからそういう積極的助言が重要になる。 だからこそ、認知療法は世界的 にうつ病、不安障害などに有効と認知されています。 傾聴型のカウンセリングではこういう精神疾患をうまく治せるという理論がありま せん。今、日本は、うつ病、不安障害、依存症、家庭内暴力、虐待などがあり、傾 聴型のカウンセリングでは治りにくい問題が多く、自殺もそこに基づくものが多 いです。大学の心理学系学部で臨床心理士が傾聴型ばかり教育されて社会に出ていくのは うつ病、不安障害などへの対策としては不充分です。6年も勉強したのに、うつ病、不安障害、依存症、DV、自殺念慮に効果があるとされている認知療法やマインドフルネス心理療法を習得しなくては、そういうクライアントを治すほどの助言ができません。
 認知行動療法は積極的に助言しなければなりません。傾聴型のカウンセリングで は傾聴に徹することを厳しく言われる。同じ1人の心理士ではこの立場を使いわけ るのは難しいでしょう。勉強する領域、習得すべき治療技法も違ってきます。
 傾聴型のカウンセリングだけでは、今の日本では、うつ病、不安障害、依存症、 DV,パーソナリティ障害などの治療は不充分でしょう。イギリスでは国家的事業として認知行動療法のカウンセラーを育成します。
 傾聴型の相談は幅広い問題の相談を受ける。「病気を治す」 というのではなく、「相談」でしょうか。うつ病などの治療のための 認知行動療法は狭く深いのでしょうか。 うつ病、不安障害、パーソナリティ障害などは、認知行動療法でないと治らないよ うです。それだけに症状が重い。傾聴だけで治るような問題ではない。日本の医者が心理療法のカウンセラーを認めないのもこういうところにあるようで、無理もないようです。それほどに、 日本では、うつ病、不安障害を治せる認知行動療法のできる心理士が少ないということです。
 日本では、種々の病気レベルの問題があります。認知行動療法を徹底的に使いこなせる心理士の育成を真剣に考えるべきだと思い ます。傾聴型のカウンセリングを重視する人の多い日本の大学で、はたして、認知行動療法の心理士がどう育成されていくのでしょうか。心理学の長老がたで認知行動療法に熱意ある関係者がおられるのでしょうか。せっかくの6年間に 認知行動療法やマインドフルネス心理療法を習得しない。 日本に認知行動療法が普及し、認知行動療法のできる心理士が増えるのはいつになるのでしょうか。大切なのは治療側の満足ではなく、クライアント(患者)さんの満足でしょう。 現在までの手法ではうつ病の患者さんを救えないと葛藤されるカウンセラーの人、従来のわくにとらわれない柔軟な若い人が活躍してほしいと思います。
 幅広い領域の悩みの相談に必須の傾聴型のカウンセリングも重要、狭く深いうつ病、不安障害の治療に必須の認知行動療法も重要です。両方が日本には必要でしょう。現在はあまりにかたよっています。だから、うつ病、不安障害などが治らず、自殺もこれにもとづくものが多くて自殺が減少しません。

使いわけを

 傾聴に徹することが求められる領域と、傾聴ではすまない領域があるのですから、 支援者も使い分けが必要だと思います。
  • 一人の心理士が2つを扱うならば、2つのプログラムを提供する。 傾聴カウンセリングのプログラムと、積極的に助言するプログラムを別々に行う。
  • 別々の心理士が提供する。他のプログラムのほうが適切ならば、他を紹介する。クライエントの利益を考えて、心理士は囲い込みをしないこと。本当の、来談者中心でしょう。 さもないと、長引かせて苦しめます。自殺も起ります。

Posted by MF総研/大田 at 09:20 | 新しい心理療法 | この記事のURL