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抗うつ薬は「非常に重症」の患者にしか効果がない=新しい研究発表 [2010年01月14日(Thu)]

抗うつ薬は「非常に重症」の患者にしか効果がない=新しい研究発表

 うつ病患者に抗うつ薬が投与されるが、再発が多いとか効果がない患者が多いことが知られてい たが、最近の研究によって、その実態がさらにわかってきた。
 抗うつ薬とプラセボを比べたランダム化比較試験の結果を分析したところ、抗うつ薬の優越性が 明確なのは症状が「非常に重度」の場合だけで、「重度」「中等度」「軽度」の場合は、優越性が ないか無視できるほどに小さかった。そういう論文がJournal of the American Medical Association 2010年1月6日号に掲載された。次のホームページに概要が紹介されている。  これは重要な研究成果である。抗うつ薬は非常に重症の人だけに効果がある。大うつ病エピソー ドの症状が重度の間だけである。軽くなってきた段階、最初から重症でない患者には抗うつ薬を投 与してもほとんど効果がないということである。抗うつ薬を一生服用しなさいといわれる患者もい ると伝え聞くが根拠がないわけである。非常に重症でない患者に抗うつ薬を投与してもほとんど効 果がないということは、無駄な医療費が使われることにならないだろうか。
 抗うつ薬にかかる費用は健康保険でまかなわれる。国や自治体、事業所が一部負担している。薬 物療法に費用がかかると保険の財政が圧迫される。自治体などの予算もかかる。うつ病の程度が「 非常に重症」ということでない患者のための治療法が国や自治体の予算で開発されるべきである。
 そこで注目されるのが、イギリスで採用された認知行動療法である。うつ病を治すには認知行動 療法を提供する制度を早急に推進すべきである。うつ病は非常に重症でなくても長引くと、自死(自殺)する。自死が減少しないのは、薬物療法だけに頼った精神医療も大きな一因である。60歳以上 の自死は雇用問題からではない。30歳、40歳でも働く場があるのにうつ病が治らず職場復帰で きないため、自死する人もいる。家庭の主婦でもうつ病が治らずに離婚、自死もある。こうした「 雇用」「多重債務」によらない自死も多い。うつ病(および、不安障害や適応障害も)を治す医療の向上、薬物療法以外の支援が重要 であることを自死防止活動にたずさわる関係者は理解していただきたい。うつ病の人を早期に発見 して、精神科医にまわせばいいということだけではない。

抗うつ薬は低用量が最も有用
★2019年、さらに新しい研究が発表された
 ガイドラインに影響する

マインドフルネス心理療法

 抗うつ薬だけで完治したという人もいるだろう。しかし、その後再発が多い。また、薬物療法だけで、非常に重症から重症、軽症、寛解になったという人も、重症から後は、薬物のおかげではないかもしれない。何か行動した人が治ったのかもしれない。運動、散歩、ヨガ、坐禅、楽器演奏、家事手伝いなど積極的に動いたのが効いたかもしれない。
 うつ病は抑うつ症状や睡眠障害がなくなって、非常に重症ではなくなった段階でも、前頭前野の機能低下と思われる精神症状が残って、これがなかなか回復しないようだ。
 アメリカでは、認知療法(第2世代)にも反応しにくいうつ病(非定型うつ病もそうだと思う。)や不安障害の人のためにマインドフルネス心理療法(第3世代の認知行動療法)が開発されて長い苦しみから解放されている。日本もマインドフルネス心理療法を受けられるような体制を作る運動を起すべきである。

減薬、断薬

 薬を服用している人は急に減薬、断薬してはいけません。離脱症状が起こり、危険です。  減薬、断薬に詳しい医者に相談しながら減薬してください。心理療法を受けずに、離脱症状のつらさに耐える(受容、アクセプタンス)心構えもなく減薬、断薬すると危険です。減薬、断薬は、薬物療法や心理療法を受けて、十分軽くなってから、専門家の援助を受けながら少しづつ行うのがいいでしょう。
 当研究所の場合、セッション10までおこなって(半年から10か月)から、不快事象の受容のスキルが十分に身についてから、医者の了解を得て、少しづつ減らしていく方法を推奨しています。
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Posted by MF総研/大田 at 12:37 | うつ病 | この記事のURL