• もっと見る
«「絶対無の場所」の自覚から心理療法へ | Main | 教員5400人、心の病で休職»
自覚と意志 [2010年01月08日(Fri)]

自覚と意志

 =マインドフルネス心理療法と西田哲学

 マインドフルネス心理療法は禅の哲学(多分、人の心の真相の哲学)によって心の病気がマイン ドフルネス心理療法で救われる構造を西田哲学(西田幾多郎)の言葉で簡単に見ている。

自覚と意志

 我々の現実の世界は主に3つの層をなしている(⇒3つの場所)。  自己自身を自己に於いて知ることが自覚である。自覚によって自己についての知識がふえる。
 「反省は自己の中の事実である、自己はこれによって自己に或る物を加えるのである、自己の知 識であると共に自己発展の作用である。真の自己同一は静的同一ではなく、動的発展である(西田幾多郎旧全集、2巻 16頁)。」
 反省、自覚によって自己を知る、自己についての知識が加えられる、自己に対する反省がただち に自己発展的な直観である。この能動的、創造的な特徴のため自覚は意志的行為なのである。自覚 というのは「すべての意識統一の根底となる統一作用の自覚のごときものであるとするならば、か くの如き能動的自己は、到底我々の意識の対象となることはできぬ、我々が反省したる自己という ものは既に能動的自己そのものではない。」(2巻18頁)

マインドフルネス心理療法へ

 思惟は対象のある作用であるから、思惟(思考)では意志は起こらない。ゆえに、いくら思惟に より学習をしてもそれだけでは、回避や逃避、依存は治ることはないだろう。行動が必要である。 行動は意志による。
 うつ病は運動でも自己洞察(マインドフルネス、アクセプタンス)でも治るのであるが、共通な のは、行為であるから意志作用を起すためなのではないか。行為は意志(決意)プラス動作である(「善の 研究」128頁)から。意志作用は動作がなくても成立する。
 では、うつ病を治すのに運動と自己洞察法とどちらがすぐれているのか、今後の研究の課題だが 、後者がすぐれているだろうという推測はできる。自己洞察法は高齢になって身体が不自由になっ てもできる。がんなどのために病臥している人でもできる。一日の中で、目覚めている間、実践で きる。運動はこういう制限があるし、自己の反省、自覚、「絶対無の場所」の自覚などは起きない だろうから。
 現実に、カウンセリングを受ける人で、運動はするが、自己洞察法(呼吸法)をできない人は治らないということが生じている。苦悩の対象を自己(場所、鏡のような)にそのまま映し、よくその有様を知る(自覚)ことによって、種々の作用と苦の対象をよく知り、解決への意志をおこすには、静かに坐って自己洞察法を実行することが必須である。5年前までは、運動、脳トレーニングをすすめず、自己洞察法のみを助言していた。それでも治った。苦悩も起す種々の精神現象を反省、自覚することがうつ病(不安障害も)を治し、再発を予防するには大切だろう。一度完治しても、自己洞察法をおこたってはいけない。自分の作用を反省、自覚して、自分を見失っていないか自覚することが再発をふせぐだろう。
 (続)
Posted by MF総研/大田 at 19:09 | 私たちの心理療法 | この記事のURL