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良い医師選びの注意点5カ条 [2009年10月07日(Wed)]

良い医師選びの注意点5カ条


 =NHK「うつ病治療 常識が変わる」 =第2章 クリニック乱立の闇  =なぜ診断がバラバラなのか

 NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治 療の現状をみています。 第2章 クリニック乱立の闇の中で、防衛医大の野村さんの「良い医師選びの注意点5 カ条」が紹介されている。

良い医師選びの注意点5カ条

 「しかし、残念ながら、国や学会の取り組みはまだ緒についたばかり。多くの患者と その家族は、より信頼できる医師を求めてさまよっている。こうした状況に 置かれている人たちにとって、体制の整備を気長に待つ余裕はまったくない。今すぐ役 立つ情報を心から待っている。そこで野村さんは、講演などで呼ばれた際に必ず話して いることがある。それが「良い医師選びの注意点5カ条」だ。 この5項目にひとつでも該当すれば、その医師の治療法に対して疑問を抱いていい。」 (P91)

 次の5つがあげられている。
    @薬の処方や副作用について説明しない
    Aいきなり3種類以上の抗うつ薬を出す(初診、あるいは最初の処方で)
    B薬がどんどん増える
    C薬について質問すると不機嫌になる
    D薬以外の対応法を知らないようだ
(続く)
(大田注)
 臨床試験で1種類の抗うつ薬を服用したら効果があって副作用はこうであったという 臨床試験のデータがある。そのような治療法を推奨しているのが野村さんだろう。 重複すれば、ひどい副作用が起きるおそれがあるが確認されておらず、うつ病本来の症 状とは区別がつかず、効果も重複投与は臨床試験で確認されていない。薬が処方される と患者さんはどういう効能か副作用はどうかが知りたいのは当然だろうが、質問すると 不機嫌になる医師は「良い医師」ではないと野村さんはいう。

 今、うつ病のカウンセリングについても、効果や副作用(短所)の情報も少ない。う つ病の患者、家族はてさぐりで情報を得るしかない。
 病気を治すのであれば良いカウンセラー、良い心理療法者ということもいくつか同様 のことが言えるだろう。

@心理療法の方法や課題の意味効能や副作用について説明しない
ABは該当しないかと思う。
Bに近いのは、セッションごとに課題があることであるが、個人のペースですすめれば よい。第一ラウンドでやりきれないのは、あるところでもう一度くりかえせばよい。薬 物療法も個人差があるように、心理療法も個人によって、半年から2年くらいの幅があ る。
Cその心理療法や技法、効果ある意味について質問すると不機嫌になる
 認知行動療法やマインドフルネス心理療法も実行している患者さんから質問がたくさ ん出る。それに適切に答えられる カウンセラーが良いカウンセラーである。答えられないと患者さんの信用を失う。 だから、心理療法者は自分自身の経験や勉強が必要になる。うつ病の神経生理学も進展 するので、うつ病の認知行動療法者は その方面の勉強も必要になる。
D他の治療法、他の心理療法もあることを知らないようだ
 傾聴型のカウンセリングの本を見ると、こういうことが書いてある。
「沈んだ心が浮上するのが望ましいことかもしれませんが、現代医学や最新の心理学を もってしても、人の心を簡単に変えることはできません。」
 もし、カウンセラーがこう教育されているならば、「人の心を簡単に変えることはで きません」ということが、「人の心を変えることはできません」というふうに受け止め て(「簡単に」が脱落し)、認知行動療法のように効果が確認されている積極的助言を 否定する人になっているおそれがある。偏見、白黒思考である。「簡単」ではないが、 変えようとして助言努力するのが認知行動療法である。 うつ病には、認知行動療法が効果があることが確認されている。
 人の心は変わることができる。簡単ではないが、それを指導するのが認知行動療法で ある。「人の心を簡単に変えることはできません」 ということは心の成長、向上の可能性を否定、抑圧するおそれがある。うつ病について 知らないカウンセラーが応対していると「治らないでいいことを」容認することになる おそれがある。治らないことのあきらめに導くおそれがある。カウンセラー自身のスキ ル不足、治せないことを自己肯定して、治す技術向上、治す手法の勉強を怠る口実にし ていることはないのか、個人の心の課題(隠れた本音)である。組織としての宣伝はい い。だが、カウンセラーとしての個人の痛みの問題であろう。 薬物療法もあまりに長くかかるのは患者さんの苦悩が長い。カウンセリング、心理療法 もあまりに長くかかると患者さんの苦悩が長い。退職期間が長く、自殺のリスクのある うつ病に無期限、治る理論、治る仮説にもとづく治療手法がないのは患者さんの思いに よりそっていない気がする。傾聴型のカウンセリングの人からは、そういう認知行動療 法者のほうが患者の気持ちを聴いていないと主張されるだろう。きっとそうだろう。一 方だけでは不充分で、傾聴して患者さんの症状にあった積極的助言を毎回する。両方を するのがいいのだろう。1回のセッションでいかに構成するか、カウンセラー、心理療 法者の力量であろう。
 傾聴型のカウンセリング以外の心理療法の情報も不足している。隠されている。認知 行動療法や森田療法などが知らされていない。
 私の話しは、「人の心は変わることができる」という立場からの主張である。傾聴型 のカウンセリングの立場からも合理的な主張があるだろう。だが、 うつ病は長期間社会活動ができず自殺もある深刻な病気である。認知行動療法のような 心を変える心理療法を否定するのならば、やはり、認知の偏り、情報隠し、勉強不足、 我田引水が垣間見える。神経生理学的変調が起きている病気の 「療法」ならば、病因、治療原理、それにみあった治療法が説明されるべきであるとい うのが私の考えである。うつ病の場合はどうか、パニック障害の場合は、パーソナリテ ィ障害の場合は、というように。もちろん、私もマインドフルネス心理療法が絶対とい うのではない。すべての人に効果がある絶対の治療法などあるはずがない。 私の助言する心理療法をできない人もいるので、薬物療法や認知療法もすすめる。患者 さんの命がかかっているので、支援者の思惑利益で、患者さんの囲い込みをすべきでは ないという信念を持つ。 自殺という痛ましい症状があるので、色々な治療法について情報を隠さず公開して患者 さんに自由に選択していただくのがいいと思う。
 「良い医師(薬物療法)」は野村さんの意見が参考になる。「良い心理療法者、良い カウンセラー」については、「自己評価の心理学」に欧米の人の意見が述べられている 。次回にご紹介したい。次の連続テーマの一環となる。
    ⇒良いセラピスト(カウンセラー)
 1人では、なかなか難しいので、チームでやればいいと思う。医師も説明など補助者を置いて説明してもらう方法もある。カウンセリング所もチームでやれば、患者さんにとって親切な体制になる。 参考
  • <目次>うつ病を扱う傾聴型の心理療法と認知行動療法の違いを研究者が述べているの を紹介
  • Posted by MF総研/大田 at 09:31 | 自殺防止対策 | この記事のURL