「あとがき」NHK「うつ病治療 常識が変わる」 [2009年10月04日(Sun)]
「あとがき」
=NHK「うつ病治療 常識が変わる」
あとがき
=うつ病に強い社会をつくるために
NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治
療の現状をみます。
「あとがき」です。
うつ病治療の新しい”常識”の「あとがき」
あとがきは、高橋美鈴さんの署名入りである。
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「番組を終えて一番感じたことは、これだけうつ病に苦しむ人が増えているにもかか
わらず、「うつ病治療」についての情報があまりに少なく、また最新の情報が浸透して
いないことです。自分や家族が、いつかかるかわからない、しかも、時には命にもかか
わる重大な病気なのに、他の病気に比べても、その治療法についての情報や知識はまっ
たく足りていないのです。」(P248)
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「薬だけが最初の選択肢という時代は近い将来、見直されるかもしれません。すべて
の人が適切な治療を受けられるように、そして、新しい知見が一刻も早く医療の中で位
置づけられるように、「常識が変わる」とともに、実際の医療が変わらなくてはならな
い時期にきていると思います。」(P249)
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「患者になる前に病気について知識を持っておく、周りの人と話し合っておく。それ
が、自分や身近な人をいざというときに守り、支えることになると思います。」(P250)
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「うつ病の問題は、私たちの社会のあり方、生き方そのものをも映しているように思
います。この生きにくい時代に、助け合いながら生きていく……うつ病に強い社会をつ
くることは、そうした「絆の再構築」にほかならないのかもしれません。
そのための取材や報道はこれからも続いていきます。」(P252)
(大田注)
うつ病は、思考、判断力、コミュニケーションの前頭前野の機能が障害される病気。自己の根源的な不安をつきつけられ、死の渕をさまよう病気。
医者の薬物療法だけでは軽くはなっても、存在の不安まで完治させてくれない。長く、心の後遺症のような不安を残す。
ストレスによって発症した病気であれば、軽くなっても、また同様のストレスにあえば
再発するのが当然と思い、この15年、マインドフルネス心理療法(最近までアメリカ
で同じものが発展しているとは知らずに、この名称は使っていなかったが)をすすめて
きた。
NHKがうつ病の治りにくさを報道したので、
これからうつ病、自殺対策は変わるだろう。今後、2,30年の歴史が明らかにするだろう。うつ病は、
セロトニン神経に作用させる薬物療法だけでは完治しにくい病気である。前頭前野や海馬
、大脳辺縁系、帯状回などの変調が起きている病気であり、
そのような領域のリハビリテーションが有効な病気であるようである。だから、復帰プログラムの
ような行動活性化技法を併用する病院が実績をあげているのだろう。だが、それも、少
し軽くなってからである。重症の人でも治癒に導く認知行動療法、そしてそれは、再発
しにくい心の使い方を習得する。
一方、うつ病になりやすい心理的傾向は、子どものころに身
につけてしまう。中学、高校、大学の頃、うつ病の教育、認知行動療法的トレーニング
を学校で教育することがうつ病、不安障害、違法薬物依存などを減少させると思う。
もはや、うつ病、自殺問題は、無視、傍観しないほうがいい。家族、親族のうち、うつ病になる人が出る。そ
うなったら悲劇である。うつ病は治りにくい。
若い時に形成される傾向といっても、後にいつになっても変えることはできる。
だが、
発病してから、認知行動療法やマインドフルネス心理療法で変えることはできるが、完治するまでの間の苦しみが大きい。
大学の頃、20代で発症すると、貴重な青春時代を失う。働き盛りで幸福な結婚のはずだったのに、
うつ病になって退職、離婚、子どもの進学断念などの悲劇をもたらす。幸福な老後のはずだったのに、失う。定年直
後や、がんになって、介護状態になって、配偶者を亡くして・・、うつ病になり自殺す
る。幸福な生涯をまっとうせず遺族に深い傷を残す。
ただ、いつの時期であっても、心の使いかたをトレーニングによって変えることができる。それが、心理療法の「治療」というものだ。うつ病になった人がトレーニングによって治る。心の反応パターンは変えられるということだ。
これまでの10年間に30万もの
尊い命が失われた。このままでは今
後の10年にまた30万もの人がおいつめられる。予算をあなた自身の、家族の命を「
守るために配分してもらっていいのではありませんか。
NHK「うつ病治療 常識が変わる」
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<目次>NHK「うつ病治療 常識が変わる」
- 第1章 ”不適切”な投薬
=症状を悪化させる多剤併用
- 第2章 クリニック乱立の闇
=なぜ診断がバラバラなのか
- 第3章 抗うつ薬の死角
=封印されてきた危険な副作用
- 第4章 心理療法の壁
=医療にj心のケアが定着しない理由
- 第5章 うつからの生還
=体験者たちが語る回復のプロセス
- 第6章 うつ病治療の新しい”常識”
=先進医療の現場をたずねて
- あとがき
=うつ病に強い社会をつくるために
まだある「うつ病、自殺対策関連の問題」
以上がNHK取材班の本の内容ですが、この本で指摘されていない難しさを考えます。
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<目次>無視・傍観・軽視・放置・見放される病
=現在のうつ病治療、自殺対策はどこが問題か、どこがもれているか。
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<目次>うつ病を治すスキルを持つ心理療法者は少ない
心理療法的助言の提供は、資格は無関係。宗教者でもできるし、やっている。だが、う
つ病の助言はスキルが必要である。治る理論のない方法で助言して悪化させてはならな
い。命にかかわる病気である(悪化すると自殺する)。
うつ病の認知行動療法(マインドフルネス心理療法を含む)を提供できるスキルが必要
であるが日本の医者、心理士はこのスキルを持つ人は少ない。認知行動療法を提供でき
れば誰で もいいかというとそうとばかりも言えない。
認知行動療法は、種々の領域に適用されている。うつ病の認知行動療法は特殊領域である。うつ病の認知行動療法でなければならない。
認知行動療法のセラピストにもうまい、
下手があ る。
セラピストの性格が内向的であると積極的な指導ができない。
認知療法の仮説、理論にも限界があることがわかってきた。その限界を補
って患者 さんを治癒に導くのはセラピストのコミュニケーション能力、人格、動機づけ
などマニ ュアルにない力量にも左右される。
上手な「うつ病」の認知行動療法のセラピストを
育成したもらいたい。
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Posted by
MF総研/大田
at 22:06
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自殺防止対策
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