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NHK/「第6章 うつ病治療の新しい”常識”」のあらまし [2009年10月04日(Sun)]

「第6章 うつ病治療の新しい”常識”」のあらまし
 =NHK「うつ病治療 常識が変わる」

第6章 うつ病治療の新しい”常識”
 =先進医療の現場をたずねて

 NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治 療の現状をみます。
 まず、あらましを見ておきます。

うつ病治療の新しい”常識”

 今は、完治しにくいうつ病。新しい治療法が研究されている。
 第6章には、おおよそ、次の内容が述べられている。
  • 適切な診断を下すために光トポグラフィー装置
    群馬大学医学部の精神科医、福田正人准教授が開発したうつ病の診断技術。 脳の血流が典型的なうつ病と躁うつ病の患者とでは違うという。
     これは、「先進医療」に承認された。今後、医師が患者の診断をする時の重要な資料 となることが期待される。 (大田注1)
  • 全員参加のうつ病治療・宇治おうばく病院の場合
     最長2月間入院しての集中治療。名づけて「リ・デザイン」。
     「うつ病は、過度なストレスに対し、身体が発した警告だとわれわれは捉えています 。このリ・デザインの最大の特徴は、ひとつは期間を区切って治すということ。不思議 なことに、たとえば精神療法を10回行なう時に、1回目から8回目まではほとんど変 化がないのですが、9回目、10回目に劇的に変化するケースがあるんです。限界を設 定するのは非常に意味があるんです。また、もう一つは、医師以外のスタッフが大きな 役割を果たす点です。さまざまな医療スタッフが患者さんと丁寧に関わりながら、時間 をかけて病状の変化をつぶさに観察し、それを治療につなげるということです。」 (P230)
     毎週、定例の患者さん同志の会議が開かれて患者さんの 模様をスタッフが観察して、 診断、治療の参考にする。
     自己負担は、月10万円くらい。
  • メディカルケア虎ノ門の場合
     再休職予防を掲げてのプログラム。
     「その特徴は、休職中の患者を対象に、治療と並行して再就職に耐えられるだけの負 荷を患者に与える”厳しいリハビリ”が行われることである。」(P236)
     「リワーク・スクール」は臨床心理士によるカウンセリング、漢方、運動、映画鑑賞 、漫画雑誌新聞を読む、漢字練習、算数ドリルなど、週3回、3時間から徐々に時間を 増やしていく。
     「リワークカレッジ」では週5日、1日6時間半、週1回は”ナイトプラン” で午後7時30分まで残業。
     ほかに家族の勉強会が月1回。
     半年から1年で卒業して、復職する。

(大田注1)  典型的なうつ病か双極性障害であるか診断が違うと、処方される薬が違って、長引か せる。この診断違いを防止することを防ぐには、確かに進歩がみられる。だが、それほ ど安心もできない。診断が正確でも、治療法の側面ではない。再発が多い、効き目のな い人もいるという薬物療法である。 診断も難しい が、長期にわたるコミュニケーションが必要な治療の側面は極めて難しい。 その問題が残ったままである。
 宇治おうばく病院やメディカルケア虎ノ門の方法はいいプログラムであると思う。全 国に普及してもらいたい。
(続く)
NHK「うつ病治療 常識が変わる」 まだある「うつ病、自殺対策関連の問題」
 以上がNHK取材班の本の内容ですが、この本で指摘されていない難しさを考えます。
  • <目次>無視・傍観・軽視・放置・見放される病
     =現在のうつ病治療、自殺対策はどこが問題か、どこがもれているか。
  • <目次>うつ病を治すスキルを持つ心理療法者は少ない
      心理療法的助言の提供は、資格は無関係。宗教者でもできるし、やっている。だが、う つ病の助言はスキルが必要である。治る理論のない方法で助言して悪化させてはならな い。命にかかわる病気である(悪化すると自殺する)。
      うつ病の認知行動療法(マインドフルネス心理療法を含む)を提供できるスキルが必要 であるが日本の医者、心理士はこのスキルを持つ人は少ない。認知行動療法を提供でき れば誰で もいいかというとそうとも言えない。認知行動療法のセラピストにもうまい、 下手があ る。認知療法の仮説、理論にも限界があることがわかってきた。その限界を補 って患者 さんを治癒に導くのはセラピストのコミュニケーション能力、人格、動機づけ などマニ ュアルにない力量に左右される。
Posted by MF総研/大田 at 19:11 | 自殺防止対策 | この記事のURL