NHK/「第4章 心理療法の壁」のあらまし [2009年10月03日(Sat)]
「第4章 心理療法の壁」のあらまし
=NHK「うつ病治療 常識が変わる」
第4章 心理療法の壁
=医療にj心のケアが定着しない理由
NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治
療の現状をみます。
まず、あらましを見ておきます。
心理療法の壁
薬物療法だけでは完治しにくいうつ病。完治率の高くない抗うつ薬、副作用のある薬
物療法、それなのに10分診療、治療技術の低い医師、さまざまな問題をかかえる薬物
療法に対して、アメリカ、イギリスでは心理療法に期待がある。日本ではどうか。
第4章には、おおよそ、次の内容が述べられている。
- 「認知行動療法」を基軸にして網み出した治療プログラム
患者同士の力で「うつ」が治癒。
沖縄県の精神保健福祉センターでの試み。(P134)
「これは
、精神科医で所長の仲本晴男さんが、心理療法の一種「認知行動療法」を基軸にして網
み出した治療プログラムである。」
(P134)
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イギリスでは国家の費用でまず認知行動療法を受ける
「イギリス政府は、認知行動療法を治療の軸とすることを決め、去年9月から、心理
療法士を3年間で3600人育成する国家プロジェクトをスタートさせた。」(P153)
医師によって軽度のうつ病と診断された場合は、医師は薬物療法を開始しないで心理
療法を受ける。
「医師によって軽度のうつ病と診断された場合は、医師は薬物療法を開始しない。各
地域にある国営の「心理療法センター」に紹介 され、抗うつ薬ではなく、認知行動療法
をはじめとした心理療法が施される。 」(P144)
- 日本では心理療法を導入するのに多くの壁がある。
以下にNHK取材班の指摘する壁のあらまし。
- 診療所にカウンセリングセンターを併設したのに
患者さんは敬遠。費用が壁。
京田辺市の診療所で、カウンセリングセンターを併設した。臨床心理士が治療にあたる
。
「しかし、残念ながらカウンセリングセンターを訪れる患者の数は、期待を大きく下
回り、経営は赤字である。原因は、はっきりしている。費用が高く、敬遠されているの
だ。」(P172)
- では、心理士を国家資格にして、カウンセリングを保険診療の対象とする案も浮上
。いくつかの動きがあるが、難しい壁がある。
- 「せっかく臨床心理士を雇っても、保険点数が認められなければ、国から診療報酬
は支払われない。彼らの人件費は、まるごと医療機関が背負わなければならないことに
なる。」
(P164)
「ならば、これだけうつ病の患者が増えているのだから、臨床心理士を国家資格にすれ
ばいいではないか。」(P164)
カウンセラーの国家資格への動き
「心理療法に携わる人々に、国家資格を与えるべきだと求めている団体は2つある。
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だが、カウンセリングへの不信
医師の団体からの疑問が提示された。
-
2つの団体は、別々の国家資格の創設の提案していくという。
-
「患者が心理療法を自由に選択できる日は、まだまだ先のようだ。」(P172)
- 種々のカウンセリング、カウンセラーがいるが、うつ病を治療できるスキルを持つものはごく一部
である。
「こうした野放しともいえる状態は当然見直すべきだが、きちんとした教育を受け、十
分な経験を積んだ人が行うカウンセリングを治療の選択肢として選べる環境にすること
は、イギリスで見たように、悪いことではないだろう。薬物療法だけでは治らな
い人が3割以上いるというデータが出ている今、心理療法という選択肢を加えることは
、患者の大きな利益につながる。医療制度の違いが」あるとはいえ、日本でも患者が治
療を選択できる仕組み作りは、やはり必要ではないだろうか。」
(詳細は、本をご覧ください。)
(大田注1)ここに発言があるように傾聴型のカウンセリングでは、うつ病には効果が
低い。前頭前野などの変調は、なおりにくい。だからこそ、自殺が減らない。
(大田注2)
いくら善意、誠実であっても、治療スキルがなければ、うつ病は治らず、患者の利益にはならない、
国家資格になっても、うつ病を治せるわけではないというのは、医師の国家資格があ
っても、内科や婦人科に詳しい医者がうつ病の治療が上手ではないのと類似するというのである
。臨床心理士とか医療心理師が国家資格になっても、そのままでは、うつ病治療のスキルがあるわけで
はないという意味である。国家資格を与えて、うつ病の治療にあたってももらうというのであれば、別にうつ病治療の心理療法(認知行動療法が定評がある)の指導法を教育する必要がある。うつ病ではない他の領域の認知行動療法ではまだ足りない。うつ病の認知行動療法の治し方の教育を受ける必要がある。
患者のために、これからも続々生まれる未来のうつ病患者のため
に、イギリスのような、新しい認知行動療法者を育成する対策を国民(カウンセラーや医師の団体ではなく)が要求するのがいい
のではないか。医師でもなく、カウンセラーの
団体でもなく、患者の利益のためのうつ病治療対策(それが自殺対策にもなる)を要求
したい。
うつ病、不安障害などの心理療法が国によって全部の県で格安で受けられるようにな
るまでには、種々の関係者の利害が対立して、認知行動療法者の育成の問題もあって、10年もかかるかもしれない。
(続く)
NHK「うつ病治療 常識が変わる」
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<目次>NHK「うつ病治療 常識が変わる」
- 第1章 ”不適切”な投薬
=症状を悪化させる多剤併用
- 第2章 クリニック乱立の闇
=なぜ診断がバラバラなのか
- 第3章 抗うつ薬の死角
=封印されてきた危険な副作用
- 第4章 心理療法の壁
=医療にj心のケアが定着しない理由
- 第5章 うつからの生還
=体験者たちが語る回復のプロセス
- 第6章 うつ病治療の新しい”常識”
=先進医療の現場をたずねて
- あとがき
=うつ病に強い社会をつくるために
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Posted by
MF総研/大田
at 09:02
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自殺防止対策
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