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NHK/減薬療法でうつ病が治ったもう一つの事例 [2009年10月01日(Thu)]

減薬療法でうつ病が治ったもう一つの事例
 =NHK「うつ病治療 常識が変わる」

=第1章 ”不適切”な投薬  =症状を悪化させる多剤併用

 NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治 療の現状をみます。

減薬療法でうつ病が治った他の事例

 薬づけになってかえって心と体の変調が何年も続いていた人に、減薬して治すことを している杏林大学の教授、田島浩さん。寺田さんのほかの事例。

NHK取材班の言葉(本より、要約と引用)

<4年間、出社休職を繰り返しついに退職した伊藤さん>

 会社員だった伊藤さんは、うつ病になり抗うつ薬を服用し、数カ月休むと症状が落ち着くのでテスト出勤するのだが、また具合が悪くなる繰り返しだった。 結局退職を余儀なくされた。(P32)

   薬の量も増え、最も多い ときであ わせて19錠に達した。
 田島さんの診断により、減薬を始めた。

 「すると、これまで体験したことのない苦しさに襲われるようになった」(P34)

 「長期にわたって薬を飲んでいた方は、病気のせいではなくて、薬のせいで全体神経 の感情の感受性が結構、鈍くなっているんですね。ただ医者が思う以上に、抗うつ薬を 長期に使うと思わぬところまで鈍くなっている。しかし、全部が薬の影響かどうかは、 (薬を)切ってみないとわからない。なかなか判断が難しいんです」と田島さんは語る 。」(P35)

 減薬して1か月目、うつ本来の悲観的な気持ちが支配するようになったので、入院。 抗うつ薬を効果の強いタイプに切り替え、量も増やして経過を観察した。
 入院して3週間後、軽くなって退院。意欲がもどってきた。

(詳細は、本をご覧ください。)

(ここから大田のコメントです)
 治りきらないうちに出社するので、再燃する。うつ病は、気分(前頭前野ではなくて大 脳辺縁系)が多少回復しても、前頭前野の機能低下が回復しないうちに復帰すると、うま く頭が回転しない(思考、判断、集中、コミュニケーションなどの機能)ので、仕事を うまく処理できず苦悩するので症状が再燃するようである。以前の薬を服用したまま再 燃した時に薬が増量される。意識障害まで起こすことがあったのだ。このケースは、減薬、別の薬で軽く なったからよかった。減薬の仕方は難しいようだから、減薬療法に詳しい医師を訪ねる のがいいのだが、田島さんのほかにもそいういうことを支援してくださる医師の情報が あれば、患者さんは助かるだろう。
 でも、伊藤さんは前頭前野まで回復したのかしらん? 寛解の段階かもしれない。た った1か月で「完治」して、ストレスにあっても数年再発しないならば驚異的だ。 私の場合、完治に近いまでに回復されるまでには、1,2年かかる。
 そもそも、うつ病になるには、ストレスに対処する方法がある。軽くなったところで 再発予防の心理的トレーニングを受けることが新しい常識となってほしい。

(続く)
NHK「うつ病治療 常識が変わる」 まだある「うつ病、自殺対策関連の問題」
 以上がNHK取材班の本の内容ですが、この本で指摘されていない難しさを考えます。
  • <目次>無視・傍観・軽視・放置・見放される病
     =現在のうつ病治療、自殺対策はどこが問題か、どこがもれているか。
  • <目次>うつ病を治すスキルを持つ心理療法者は少ない
      心理療法的助言の提供は、資格は無関係。宗教者でもできるし、やっている。だが、う つ病の助言はスキルが必要である。治る理論のない方法で助言して悪化させてはならな い。命にかかわる病気である(悪化すると自殺する)。
      うつ病の認知行動療法(マインドフルネス心理療法を含む)を提供できるスキルが必要 であるが日本の医者、心理士はこのスキルを持つ人は少ない。認知行動療法を提供でき れば誰で もいいかというとそうとも言えない。認知行動療法のセラピストにもうまい、 下手があ る。認知療法の仮説、理論にも限界があることがわかってきた。その限界を補 って患者 さんを治癒に導くのはセラピストのコミュニケーション能力、人格、動機づけ などマニ ュアルにない力量に左右される。
Posted by MF総研/大田 at 09:54 | 自殺防止対策 | この記事のURL