NHK/減薬療法で10年のうつ病が治った [2009年09月30日(Wed)]
減薬療法で10年のうつ病が治った
=NHK「うつ病治療 常識が変わる」
=第1章 ”不適切”な投薬
=症状を悪化させる多剤併用
NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治
療の現状をみます。
減薬療法で10年のうつ病が治った
薬づけになってかえって心と体の変調が何年も続いていた人に、減薬して治す杏林大
学の教授、田島浩さん。
NHK取材班の言葉(本より、要約と引用)
<10年続いた寺田さん夫妻の闘い>
「10年間苦しめられてきたうつ病が、わずか半年でウソのように治ったという人が
いる。」(P22)
「寺田さんが、田島さんのもとを訪れた時、アナフラニールという抗うつ薬を1日9
錠、副作用を抑える胃腸薬を2種類形3錠、さらに抗不安薬を3条、その他の薬をあわ
せると、全部で19錠服用していた。
田島さんは、寺田さんのように治療が長期化している患者の多くが、適量をはるかに超
えた量の薬を服用しており、それがかえって症状悪化に拍車をかける原因となっている
と指摘する。」(P23)
<減薬、他の薬>
「稚津子さんの減薬は、およそ半年かけて慎重に行われた。これまで投与されていた
抗うつ薬は特に副作用が強いタイプだったので、これを全面的に切り替え、量も半分以
下に減らした。その間もたびたび意識を失って転倒し、足を骨折したこともあった。そ
れが見違えるほど体調が良くなったのは、夏を過ぎてから。いつも苦しかった「気持ち
」が、重く立ちこめた霧が晴れるように軽くなってきた。」(P29)
(詳細は、本をご覧ください。)
(ここから大田のコメントです)
この例で見るように、うつ病になった家族がおられるのならば、家族が同行すればい
い。うつ病の患者さんは判断力、記憶力、コミュニケーション力が衰えているので医師
に思うように症状や希望を伝えられない。医師の
診察、処方に家族が判断して、他の医師、心理療法をさがす必要がある。非定型うつ病
やパニック障害は特に薬物療法だけでは完治しにくい。
よい医師、よいカウンセラーをさがすのも家族である。本人はつらいし、医師、カウン
セラーに依存する気持ちがある。うつ病は、
やさしいだけでは治らない。誠実な支援者、カウンセラーに依存してかえって長引かせることもある。病気の心理、生理を改善する助言をする心理療法者でないと治る保障がない。長びいていると、何かのストレスによって悪化させて、自殺されることがある。うつ病は無視、軽視、傍観、見捨ててはいけない。
家族が真剣になることが家族と自分を救う。
カウンセリングがあればいいというのでもない。カウンセリングの手法、経験によっ
て天地の差がある。うつ病には、認知行動療法がいい。それでも治らないならば、マイ
ンドフルネス心理療法がある。どちらも積極的助言をする認知行動療法の枠内にあるが
、仮説、理論、治療法がかなり違う。だから、一方がだめでも他の心理療法が向くかも
しれない。患者さんの状況、症状、年齢などの違いが出てくる。マインドフルネス心理
療法のうちにも、種々のものがある。最近、ACT(アクセプタンス・コミットメント・セ
ラピー)や弁証法的行動療法の翻訳本が次々と出版されている。
壮大で緻密であり、それだけに、支援者にとっても習得するのが難しそうに見える。
日本で、このACTや弁証法的行動療法が全国に普及するまでに10年かかるだろう。
自己洞察瞑想療法もマインドフルネス心理療法の一種である。西田哲学の理論、襌の実践
手法を応用してコンパクトにまとめられた心理療法である。うつ病や不安障害
の神経生理学的基盤を検討して、病理の形成、維持に仮説を立てて、マインドフルネス
心理療法の手法で治るはずだという理論で、病理の軽減に効果ある課題を実行する。
積極的な助言、課題の実行で、短期間(半年から2年)に、うつ病、不安障害などを治
すことを目指す。
うつ病、不安障害には、薬物療法、心理療法、心理療法にも種々ある。家族が真剣に
検討して選択すればいい。患者さんは、依存心、変化を求めない心、行動したくない心
がある(*)ので、家族が真剣に動くべきである。家族が救う。
(* 注)この傾向が中学生、高校生、大学生の頃できる人がいる。だから、うつ病、
不安障害、自殺予防は、子どもの頃の教育が重要である。私の支援経験や自死遺族の手記を読むと、小
学生の頃から「死にたい」という気持ちがあったという人もいる。経済社会的支援の方
面ばかりではなく、メンタルな側面の分析、予防、治療も極めて重要である。
寺田さんはそもそも介護疲れからのうつ病であった。ストレスのためであることは明
確であり、これは、医者の薬物療法だけにまかせるのではなく、地域の介護支援サービ
スをする機関を助言する民生委員や相談員、メンタルサポートや心理療法を行う人、学
校で教育する人を育成するのがいいのだ。それが、自殺対策になる。
高齢者のうつ病は非定型うつ病が多いようだ。
非定型うつ病は薬だけでは治りにくい。高齢化社会になる日本、なおさら、心理療法が重要になる。
(続く)
NHK「うつ病治療 常識が変わる」
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<目次>NHK「うつ病治療 常識が変わる」
- 第1章 ”不適切”な投薬
=症状を悪化させる多剤併用
- 第2章 クリニック乱立の闇
なぜ診断がバラバラなのか
- 第3章 抗うつ薬の死角
封印されてきた危険な副作用
- 第4章 心理療法の壁
医療にj心のケアが定着しない理由
- 第5章 うつからの生還
体験者たちが語る回復のプロセス
- 第6章 うつ病治療の新しい”常識”
先進医療の現場をたずねて
- あとがき
うつ病に強い社会をつくるために
まだある「うつ病、自殺対策関連の問題」
以上がNHK取材班の本の内容ですが、この本で指摘されていない難しさを考えます。
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<目次>無視・傍観・軽視・放置・見放される病
=現在のうつ病治療、自殺対策はどこが問題か、どこがもれているか。
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<目次>うつ病を治すスキルを持つ心理療法者は少ない
心理療法的助言の提供は、資格は無関係。宗教者でもできるし、やっている。だが、う
つ病の助言はスキルが必要である。治る理論のない方法で助言して悪化させてはならな
い。命にかかわる病気である(悪化すると自殺する)。
うつ病の認知行動療法(マインドフルネス心理療法を含む)を提供できるスキルが必要
であるが日本の医者、心理士はこのスキルを持つ人は少ない。認知行動療法を提供でき
れば誰で もいいかというとそうとも言えない。認知行動療法のセラピストにもうまい、
下手があ る。認知療法の仮説、理論にも限界があることがわかってきた。その限界を補
って患者 さんを治癒に導くのはセラピストのコミュニケーション能力、人格、動機づけ
などマニ ュアルにない力量に左右される。
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Posted by
MF総研/大田
at 07:23
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自殺防止対策
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