NHK/うつ病患者に症状を悪化させる多剤併用 [2009年09月28日(Mon)]
うつ病患者に症状を悪化させる多剤併用
=NHK「うつ病治療 常識が変わる」
=第1章 ”不適切”な投薬
症状を悪化させる多剤併用
NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治
療の現状をみます。
多剤併用
日本では、うつ病の患者に抗うつ薬を同時に複数投与する。そのような治療の仕方によ
り何割改善するのか、副作用はないのかについて臨床試験が行われていない。このような多剤併用が、日
本のうつ病患者が長引く原因の一つになっているようだ(以下、NHKの取材で紹介)。
NHK取材班の言葉(本より、要約と引用)
<日本の精神科医は抗うつ薬の同時投与35%>
「症状が良くならなければ、薬の量も種類も増やす「多剤療法」。
これは日本独特の考え方であるといわれている。今年8月、厚生労働省の「今後の精神
保健医療福祉のあり方等に関する検討会」に提出された資料によれば(別掲参照)抗う
つ薬を2種類以上処方している割合は、日本が34.9%と飛び抜けて高いことがわか
る。防衛医大教授で日本うつ病学会理事長の野村総一郎さんによれば、多くの抗うつ薬
を同時に投与して症状が改善するという治験データはないという。それにもかかわらず
、なぜ多くの精神科医が抗うつ薬に依存しているのか。」(P38)
(ここから大田のコメントです)
日本は自殺率が欧米先進国より高い。うつ病が長引き、自殺に至る割合も大きいのか
もしれない。種々の要因があるだろうが多剤併用(効果と副作用について臨床試験のデ
ータがない使い方)によって副作用がひどくて復帰できないこともあるようだ。長引く
うちに、収入減による子どもの進学断念、家庭不和、離婚、自殺などの悲劇も起きる割
合が高くなる。
杏林大学の教授、田島浩さんによれば、長引く患者の減薬、一剤投与、断薬を指導す
ると治る患者がいるという(この記事、また後に出てくる)。
自殺対策は、うつ病らしい人をみつけたら「医者にいくように」という対策だけでは
不充分である。支援を求めてきた人の中に、うつ病らしい人がいたら「精神科医を受診しなさい」とか、うつ病の人で治療中の人で「治らない」という人がいたら、「そのまま薬物療法を
続けていればいいでしょう」と、種々の支援のネットワークの人が助言すればいいというわけでもない。うつ病患者の家族も医者まかせだけでは不充分
ということがこの本を読めばわかってくる。薬物療法絶対主義や「うつ病は薬物療法で
治る」という偏向主義(これは、認知療法でいう偏見、二元観である、治る割合やイギリスの事情を知れば)の医者が主導する自殺
対策では、薬物療法以外の対策もすすめようという人たちの意見を封じ込めるおそれが
ある。県によって抜けが生じる。
心理療法ができない患者も多いので薬物療法も必要である。国が主導して、
柔軟な考え方、心理療法にも理解を示す精神科医の指導による自殺対策が求められる。
多剤療法の医者の多い日本。これからは、減薬、断薬を希望する患者に離脱症状の受
け入れの指導をするカウンセラー、減薬療法を支持する医者がどこにおられるかの情報
も必要である。
うつ病に効果のある心理療法も行われない日本。うつ病に効果の高い認知療法のスキ
ルのある心理療法者を育成しなかった臨床心理学。日本には傾聴中心のみのカウンセラ
ーや相談員が多いので、うつ病患者に助言することができない(*)。種々の問題がある
日本のうつ病の治療法。まず、薬物療法の問題から。
(*注)傾聴型のカウンセリングは、他の種々の問題、うつ病が深まっていない領域には
顕著な貢献をしてきた。しかし、重い病気レベル(前頭前野、大脳辺縁系、海馬などに
変調が起きているといわれる)のうつ病について傾聴型のカウンセリングが効果が高い
という臨床試験はない。
(続く)
NHK「うつ病治療 常識が変わる」
-
<目次>序節=テレビ報道の内容とほかの情報を加えた本が出版された
これまで、うつ病の啓蒙本やマスコミで紹介されたものはうつ病の”真実”ではなか
った。隠されていた情報が公開され、これからは、これがうつ病の”常識”となる。
-
本の目次から=医者、カウンセラーだけではうつ病を治せない
”不適切”な投薬 、クリニック乱立の闇 、抗うつ薬の死角 、心理療法の壁 、うつ
からの生還、うつ病治療の新しい”常識”
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プロローグ
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プロローグ(1)=抗うつ薬治療は5割が再発、3割が効果なし
=うつ病の薬物療法の問題点、限界、今後の新しい治療法と新しい支援の方向のまと
め。そのうち、長期間の追跡調査で、抗うつ薬で軽くなっても5割が再発、効果のない
のが35%
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プロローグ(2)=薬が多すぎて薬の副作用が加わりかえって長引くケースも
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プロローグ(3)=
医者だけに頼らない体制の開始
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プロローグ(4)=うつ病患者100万人、そのうち80万人が治らないのか
-
プロローグ(5)=
薬物療法を否定しているのではない
-
プロローグ(6)=
マスコミが問題点を指摘しないのは正しくない
-
プロローグ(7)=
あらゆる治療法が選択できるように制度を整えておく必要が
- 第1章 ”不適切”な投薬
=症状を悪化させる多剤併用
- 第2章 クリニック乱立の闇
なぜ診断がバラバラなのか
- 第3章 抗うつ薬の死角
封印されてきた危険な副作用
- 第4章 心理療法の壁
医療にj心のケアが定着しない理由
- 第5章 うつからの生還
体験者たちが語る回復のプロセス
- 第6章 うつ病治療の新しい”常識”
先進医療の現場をたずねて
- あとがき
うつ病に強い社会をつくるために
まだある「うつ病、自殺対策関連の問題」
以上がNHK取材班の本の内容ですが、この本で指摘されていない難しさを考えます。
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Posted by
MF総研/大田
at 10:57
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自殺防止対策
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