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NHK医者だけに頼らない体制の開始=NHK「うつ病治療 常識が変わる」(4) [2009年09月25日(Fri)]

NHK「うつ病治療 常識が変わる」(4)

=(4)プロローグ(3)
 =うつ病の薬物療法の問題点、限界、今後の新しい治療法と新しい支援の方向のまと め

 NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治 療の現状をみます。

「プロローグ」(3)

 最初に「プロローグ」がある。これは、本書の要約になっている。

医者だけに頼らない体制の開始

 うつ病は薬が多すぎて薬の副作用が加わりかえって長引くケースも起きている。
 抗うつ薬だけの10分診療で治らないうつ病の患者さんのために、薬以外の治療支援 を始めた病院もある。

NHK取材班の言葉(本より、要約と引用)

たとえば、東京の「メディカルケア虎ノ門」である。

<医師だけに頼らない治療体制をとる病院も>
 「このクリニックでは医師だけに頼らない体制を整え、治療と社会復帰を並行して進 めている。会議室で30代から50代とおぼしき、たくさんの男性がいくつかのグルー プに分かれて熱心なディスカッションを繰り広げている。これは社会復帰を目指すため のリハビリなのだが、傍らにはメモを片手に、参加者の発言や様子をこと細かに観察し ているスタッフがいる。患者が抱える生活上の問題解決をサポートする精神保健福祉士 や、臨床心理士などさまざまな分野のエキスパートが患者の抱えている問題を見つけ出 し、治療と復職に役立てようというのだ。彼らによって、診断そのものが間違っている ことが明らかになるケースも少なくないという。クリニックの院長を務める医師の五十 嵐良雄さんは、こう話す。
 僕が本当に感じているのは、診察だけしていればいいのか、ということ。たとえ診 察室で、1人に30分の時間をかけて診ても、30分のことしかわからない。5分の6 倍だと言えば6倍かもしれないけど、1日は24時間ですから」
 「診察では見えない部分もあるのでしょうか。?」
 「見えない部分ばっかりですね。診察室で相対しているだけではわからないですね」 (P5-6)



(ここから大田のコメントです)
 東京の「メディカルケア虎ノ門」は「アエラ」でも紹介された。 NPO法人MDAの「職場復帰支援プログラム」も繰り返し紹介される。繰り返し、同じとこ ろということは、ほかにはほとんどないことを意味する。今は、東京で、大企業の社員 が恩恵を受けることになる。
 それでも、こうした医者以外の支援を加えると、うつ病は治り、再発が少ないことが 実証されている。他の医者が行わない理由、その障壁を除くことができるか、だめなら ば、国や県の予算を使って、県に2,3カ所、このようなサービスを提供する施設を作 り、<勤労者>なら誰でも格安費用で受けられるようにしてほしい。各県の患者、家族 が結集してそういう陳情をすればいい。しかし、相当きびしい。県や市町村のうつ病、自殺対策も精神科医の指導を受けている。薬物療法以外を認めないならば、家族が陳情しても拒絶されるだろう。どの難治性の病気の家族も長い運動でようやく、国や県を動かしてきた。強く要求しない限り、自治体は動けない。県民、市民が動かないと新しいことはできにくい。
 ところで、まだ、足りない領域がある。職場復帰プログラム以前のうつ病が軽くなら ない患者さんが多い問題である。職場復帰プログラムは寛解にならないと受ける気力さ えもない。女性のうつ病、高齢者のうつ病、子どものうつ病も、紹介されているような 職場復帰プログラムでは間に合わないだろう。
 まだ不足するうつ病治療対策。
 いずれにしても、職場復帰プログラムで効果があるように、うつ病には、こういうこ とをしたほうがいい、という積極的助言が必要である。分析、傾聴型のみのカウンセリ ングだけでは病気レベルのうつ病は治らない。心理学の関係者も傾聴ばかりに固執しな いほうがいい。医者がカウンセリングを信用しないのは、そこだから(→第4章で出て くる)。
 心理学系の大学院で、積極的心理療法も教えるべきだ。そうでないと、臨床心理士に なっても、うつ病の人の支援ができるスキルが不足する。何度もいうが、認知行動療法 やマインドフルネス心理療法は一定の期間の目標を持ち、治る仮説、理論をもち、それ に基づく課題、実習、積極的助言で治癒させることが確認されている。
 傾聴型のカウンセリングは他の領域では大きな貢献をしていることは、もちろんであ る。問題が違えば、治療法も違う。重いうつ病に傾聴、分析だけしているうちに長びか せる、絶望させるリスクがあることを支援者(カウンセラー)ならば、理解したほうが いい。自分のスキルでは扱えない病気を扱わないほうがいい。心理療法者の倫理である 。医師の倫理も「うつ病はセロトニン仮説による抗うつ薬で治る」という仮説で治療し ているのであるが、この仮説がゆらいでいる。セロトニン仮説による抗うつ薬では治ら ないうつ病が多い。これを受け入れる医師は、他の支援も付加しようとしている。医師 も変わり始めた。臨床心理学もうつ病、自殺対策の領域には新しい方法が求められる。 以前の長老方は、その時代には貢献された。今は時代、環境、人の心が違っている。若 い人の新しい試みを妨害してはならない。どうせあと、10年前後しか活躍できない。 若い人が活躍してほしい。若い人は、今後の日本で50年も、うつ病、自殺対策に直面 しなければならない。現在の子どもたちが社会に出る直前、直後の10〜15年後まで には、治療効果の高い薬物心理併用療法の確立、うつ病不安障害などの予防法を開発し て、全国に普及させてほしい。重い苦悩を抱えた人に直接あう、この仕事は相当きつい。もうあと10年そこそこという長老は、体力知力の衰えもあり新しいことに挑戦しない。若い人こ そ、この重責をになう力がある。
(続く)
NHK「うつ病治療 常識が変わる」
  • <目次>序節=テレビ報道の内容とほかの情報を加えた本が出版された
     これまで、うつ病の啓蒙本やマスコミで紹介されたものはうつ病の”真実”ではなかった。隠さ れていた情報が公開され、これからは、これがうつ病の”常識”となる。
  • (1)本の目次から=医者、カウンセラーだけではうつ病を治せない
     ”不適切”な投薬 、クリニック乱立の闇 、抗うつ薬の死角 、心理療法の壁 、うつ からの生還、うつ病治療の新しい”常識”
  • (2)プロローグ(1)=抗うつ薬治療は5割が再発、3割が効果なし
     =うつ病の薬物療法の問題点、限界、今後の新しい治療法と新しい支援の方向のまと め。そのうち、長期間の追跡調査で、抗うつ薬で軽くなっても5割が再発、効果のない のが35%
  • (3)プロローグ(2)=薬が多すぎて薬の副作用が加わりかえって長引くケースも
  • (4)プロローグ(3)= 医者だけに頼らない体制の開始
  • (続)

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Posted by MF総研/大田 at 11:20 | 自殺防止対策 | この記事のURL