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(3)NHK「うつ病治療 常識が変わる」 [2009年09月23日(Wed)]

NHK「うつ病治療 常識が変わる」

=(2)プロローグ(1)
 =うつ病の薬物療法の問題点、限界、今後の新しい治療法と新しい支援の方向のまと め

 NHK取材班による「うつ病治療 常識が変わる」(宝島社)から、日本のうつ病治 療の現状をみます。精神科医にかかっていた患者がなぜ自殺するのか、なぜ、うつ病が 長引く患者が多いのかを教えてくれる本です。うつ病の啓蒙書とはかなり違う情報が多 い。自殺対策にたずさわる人の必読書。そうでないと効果的な対策をとりそこなうおそ れがある。

「プロローグ」(1)

 最初に「プロローグ」がある。これは、本書の要約になっている。 次の点が記載されている。

うつ病患者の5割再発

NHK取材班の言葉(本より)

 「しかし、一方では、思いもよらない事態も招いている。アメリカでの最新の研究に よれば、患者の50%が症状を再発させており、25%が治療に2年以上かかっている 。残念ながら、うつ病は「誰でもかかる可能性があるが、すぐに治るかどうかはわから ない」、つまり”心のカゼ”とはとても言いにくい状況に陥っているのだ。」(4頁)

 「アメリカで、抗うつ薬が効果を上げたかどうか、うつ病患者約4000人を、99 年から7年間追跡した「STAR*D」という調査が行なわれた。その結果は、驚くべきもの だった。抗うつ薬を4回、種類を変えても効果が上がらなかった患者が35%に上った 。つまり、3人に1人は抗うつ薬が効かないというのだ。」(8頁)

 「「薬を飲めばすぐに治る」と言われてきたのに、一向に回復しない。そんな状況が 続いた患者が、医師に対する強い不信感を持つのは無理もない。」(4頁)

 (ここから大田のコメントです)
アメリカでは公的健康保険がないので、個人的に保険会社と契約する。そうなると、保 険会社が、薬物療法でも心理療法でも無制限の治療は許さない。勢い、効果の高い治療 法の開発が盛んになる。アメリカでさえ、この再発率だ。
 うつ病の治療技術のすすんだ国でさえも、この再発である。日本でも、同等、または 、それ以上再発しているかもしれない。
 日本のうつ病の啓蒙本(*)では、高い割合で治るようなふうに書いてあることが多い 。だが、一度軽くなっても再発しやすい。まず、ここをおさえることからスタートしよ う。「だから抗うつ薬は一生服用しなさい」という医者も出ているが、それでは別の問 題がある。薬の影響でボーっとした感じや精神活動が活発でなく、仕事に支障をきたし たり、他の副作用で苦しむ。そんなことも指摘されている。後に出てくる。
    (*)日本でも専門書では、やはり効果は6割程度と書かれている。一般国民は、専門 書を読まずに啓蒙書を読むので「休養して抗うつ薬を飲めばすぐ治る」と思いこむが、 現実は薬の効果がない人と再発して治らない人が多い。隠されているというのか、本の 著者は特に薬の使い方がうまいのか、その著者のところの患者も再発していたのに、別 の医者にかかったのか、実情はわからないのだ。
 今のままでは、うつ病にかかって薬物療法だけだと悲惨であるという教訓だ。ところ が心理療法や復帰のサービスを提供すると再発しにくい、治る割合が高いという朗報も ある。だから、自殺対策もこういう方面も重要だということだ。なお、ほかにも、予防 法についても社会経済的な支援対策ばかりではなく、メンタルな方面の対策も重要であ る。
 98年以前だって、2万5千人もの多数の人が自殺していた。自殺は経済問題ばかり ではない。うつ病になる原因(特に、うつ病になりやすいメンタルな特徴が形成されるわけ、支援を求めない心、うつ病について学習する機会がない教育、など)がよく分析されていない自殺も多い。ただ、うつ、うつ 病が多いのは確かだ。うつは、うつと判断しにくい精神にさせる病気(だから医者でさえも誤診する)という特徴のある病気であり、本人が他人から支援されて治るよ うな精神状態ではないと思わせるところがある、つまり、おかしな人格になってしまった、人に言ってもわかってもらえないと思いこんでしまう。だから、家族にさえも、その苦しみを 伝えない、言ってもしようがないと思わせるような病気である。本人にも家族にも医者にも理解されにくい病気である。家族が前兆に気づけというのは無理である。この難しい病気について、義務教育のどこでも教育されなかったのだから。
 自ら数年格闘しつつ(休退職せずに)、うつ病について勉強し、完治後、これまで15年うつ病の人をマインドフルネス心理療法で治そうとしてきた私からみれば、(NHK取材班と同じように)現在の組織、現在のサービスだけではだめだと思ってい る。新しい治療法、新しい支援法、新しい予防法を付加しないと予防も治療も限界があると思っている。自殺した人の多くが精神科医にも接触しているが、治っていない人が多かったのだ。この実情の部分について、全国に展開すべき対策(たとえば、認知行動療法や復帰プログラムを全国どこでも格安で受ける)があいまいである。 NHK取材班の問題 提起に今後も期待したい。でも、早くしないと今日も100人、大切な大切な人が自殺 していく。たいてい、うつ病になっている。家族さえもわからない。
 うつ病についての真実、情報を隠さず公開して、代替医療(心理療法など)や効果ある対策(復帰プログラムなど)の情報も教えるべきである。うつ病の人を薬物療法だけ、傾聴型のカウンセリングだけに囲いこんではいけない。 いつ自殺するかもしれないのに、多くのカウンセラーもうつ病の深刻さ、治す助言ができない。 病気ならば当たり前のことが隠され、軽視、見放されています。誰がこういう方向に導いてきたのでしょう。大きな立場からの方向が違ったのでしょう。

(続く)
NHK「うつ病治療 常識が変わる」
  • <目次>序節=テレビ報道の内容とほかの情報を加えた本が出版された
     これまで、うつ病の啓蒙本やマスコミで紹介されたものはうつ病の”真実”ではなかった。隠されていた情報が公開され、これからは、これがうつ病の”常識”となる。
  • (1)本の目次から=医者、カウンセラーだけではうつ病を治せない
     ”不適切”な投薬 、クリニック乱立の闇 、抗うつ薬の死角 、心理療法の壁 、うつからの生還、うつ病治療の新しい”常識”
  • (2)プロローグ(1)=抗うつ薬治療は5割が再発、3割が効果なし
     =うつ病の薬物療法の問題点、限界、今後の新しい治療法と新しい支援の方向のまと め。そのうち、長期間の追跡調査で、抗うつ薬で軽くなっても5割が再発、効果のない のが35%
  • (3)プロローグ(2)=薬が多すぎて薬の副作用が加わりかえって長引くケースも
  • (続)

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Posted by MF総研/大田 at 22:43 | 自殺防止対策 | この記事のURL