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無視・傍観・軽視・放置・見放される病 [2009年09月17日(Thu)]

無視・傍観・軽視・放置・見放される病

 =支援を求める人が多いのか少ないのか
 =国、自治体の対策がすすめられるまでの間、家族が真剣にならないと

 自殺支援対策が提案されてネットワークづくりが開始されている。 この方面も重要だ。
 ところが違和感を感じることがある。「既存の組織のネットワーク化」だけでは不順だ。新しい対策も必要である。
 ライフリンクの調査データでは、自死した人のうち
  • 相談機関に行っていた人は72%にのぼる
  • そのうち、亡くなるまでの「ひと月以内に行っていた人」は62%
 多重債務とか自死遺族支援、電話相談、自治体など多数の相談機関があるが、連携がとれていないから、自死を防ぐために支援組織が互いに連絡しあっていこうという対策が始まっている。これはこれですすめていくとたしかに救われる人が多いだろう。
 ところが、奇妙だなという感じがある。相談する人が7割というが、これまでは相談しない人の方が多いということが言われていた。
  • 内閣府・自死対策推進室が作成したパンフレット
      「生きやすい社会」の実現を目指して」
    によれば、うつ病などの精神疾患になった人の75%は医療機関を受診しない
  • 厚生労働省の調査では、自死を企図する人の8割は支援を求めない。
 こういう統計データもある。 既存の支援組織のネットワークだけでは自死は減少しないだろう。 新しいサービス、新しい支援組織を作る必要がある。 そうでないと、 多くの人が、「無視・傍観・軽視・放置・見放される」ことになるのではないかと危惧している。 うつ病に精神科があることはわかっている人も多いだろう。情報がないわけでもない。しかし、行かない、行けない。 また、精神科医にかかっても再発率が低くない心因性うつ病が多い。 もし、ネットワークを組んでも、どこにも行かない人、他をすすめても行かない人、精神科医を紹介しても受診しない人が相当多数残るのではないか。どういう対策がいいのか。精神科医にかかっても 治らない人も多い。がんなどで 病院で入院中の患者さんの自死も多い。現在の病院のサービスでは不足である。うつ病はコミュニケーション能力を低下させる。対人恐怖的になる。ひきこもる。支援の行動をしない。つまり既存の組織、既存のサービスのネットワークだけではきわめて不充分というような兆候がある。
 また、これまでも指摘されているが、この「うつ病」がからむ領域での連携はうまくいきにくい。それぞれの組織の得意スキル、見識と思惑と利害と治療技法の知識の違いがからむ。 自死防止対策は、既存の組織(うつ病の治療以外の支援組織)のネットワークも重要だからすすめるとして、 別な視点からも対策の方向づけをしてもらいたい。精神科医にかかっても治らない、再発が多いということ、つまりうつ病治療の支援を求めているのに、自死する医療の遅れもきわめて重大な問題だ。日本人は支援組織があっても支援を求めない人が多い。それでは組織の連携がすすんでも、支援を求めない。 なぜ、そんな心ができるのだろうか。家庭と学校の教育にも問題があるのではないのか。
 支援を求める割合が、ライフリンクの7割、厚生労働省の2割という極端な違いがあるのはなぜか。母数(全体の数と対象)とサンプルのとりかたの違いがあるのだろう。
  • ライフリンクのデータは過去10年ほど(年間3万人として30万人)の中から、調査に応じてくれた自死遺族305人が母数。ご家族が調査に応じるので、自殺前にも相談するタイプが多い集団かもしれない
  • 内閣府のデータは、うつ病などを経験した人(自死ではない)の75%が医療機関を受診しないというもの。自死の前にうつ病になっていることが多いが医者にかかっていない人の割合は高い。重症ではない人が含まれるかもしれない。
  • 厚生労働省のデータは、四つの救命救急センターで調査した。センターに運ばれた未遂者1516人と、亡くなった209人の遺族らを対象。8割が誰にも相談していなかった。 精神科医に相談したのは2%−5%。
 大きな母数の中では、どこにも支援を求めようとしない人、できない人の割合がきわめて高いのかもしれない。ネットワークのどこにもたどりつかない多くの人たちがいるかもしれない。 なぜ、どこにも相談しない人が多いのか。
 誤解すると対策が偏る。善意による「無視・傍観・軽視・放置・見放される」人々が出てくる。みんな支援組織の人は善意で真剣で誠実である。精神科医、心療内科医も一生懸命治療している。だが、それでも治らない、再発する人が多い。うつ病、非定型うつ病、パニック障害、対人恐怖症、心的外傷後ストレス障害、統合失調症、アルコール依存症、パーソナリティ障害など。治らないと自死も起きる。
 ネットワークを構築すれば、各種の相談機関およびプライマリーケア医から、うつ病の人が精神科医に紹介される。今でさえも10分診療だというが大丈夫なのか。再発率が高いのにその対策が見えない。薬物療法を受けても治らない人、再発を繰り返す人は、どこそこに相談してください、という情報がない。
自死予防対策で考慮してほしい「無視・傍観・軽視・放置・見放される病」
参考記事
Posted by MF総研/大田 at 07:03 | 自死防止 | この記事のURL