心理療法・2種を使い分ける(3) [2009年09月01日(Tue)]
心理療法・2種を使い分ける(3)
心理療法やカウンセリングには、大きく分けて2つあります。精神分析療法
(傾聴が主)と認知行動療法(積極的助言)です。その2種の違いを
「自己評価の心理学」(クリストフ・アンドレ&フランソワ・ルロール、紀伊
国屋書店)が紹介しているので、簡単に見ておきます。 |
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| 1)考え方や行動の仕方を変える大きな力を発揮する | 1)患者に大きな努力を要求する |
| 2)セラピストが積極的に患者を支える | 2)自分が不安に思ったり、自分にとって難しいこと(たいていは嫌なこと)に 直面しなければならない |
| 3)科学的な研究によって、実際に治療の効果が 証明されている。 | 3)どうして自分はそんなふうに考えたり、行動するのかについては、あまり理 解の助けにならない |
表11・12 精神分析療法の長所と短所
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| 1)自分についてよく知ることができる | 1)行動の仕方を変えるのに、効果を発揮するとはかぎらない |
| 2)どうして自分はそんなふうに考えたり、行動するのかについて、理解の 助けになってくれる | 2)時間がかかる |
| 3)セラピストがあまり患者を支えてくれない |
このように、2種の心理療法、カウンセリングはかなり異なる。問題の改善 を望む人、クライエント、患者は自分の問題にどちらが向いているか、本人が 選択しなければならない。そうでないと、改善せずに長引くことになる。
一般的に、カウンセラー側から、こちらのカウンセリングよりも、あちらの 心理療法があなたには向いているようだから、そちらをすすめます、とは言っ てくれない。だから、自分で判断するしかない。
それは、カウンセラーが自分の得意わざとして一つに精通して、他の心理療 法や問題の種類について詳しくないためである。時に、2種に精通して、1人 のカウンセラーがクライエントの問題に応じて、使いわけてくれる場合がある 。だが、少数だろう。認知行動療法はうまく指導できるようになるためにはカ ウンセラーが対象となる問題領域の種類(うつ病、不安障害、いじめ、発達障 害、など)と 指導法をかなり学習しなければならない。
どちらを選択するか
対人恐怖症を含む不安障害(パニック障害、心的外傷後ストレス障害、強迫 性障害、全般性不安障害など)、うつ病、過食症、パーソナリティ障害ならば 、認知行動療法のほうが効果が高い。-
「では、このうち、いったいどれを選べばよいのだろう? ・・・・
たとえば、あなたが恐怖症の問題に悩んでいるのであれば、セラピスト(分析
医)がどれほど優れていようと、精神分析療法を受けるよりは認知行動療法を
受けるほうがいいーーーだいたい、特別な場合を除いて、患者が恐怖症に悩ん
でいるとわかれば、精神分析医は認知行動療法を行なっているセラピストのも
とにその患者を送るのが普通なのだ。その反対に、患者が父親とうまくいかず
、その理由を知りたくて悩んでいるのだとすれば、認知行動療法のセラピスト
はその患者に対して精神分析医のところに行くように勧めるだろう。」
354頁
このように、日本では、本当は認知行動療法のほうが再発も防止できる可能 性が高い問題領域に、ただちに、薬物療法が開始され、心理療法を全く紹介し ないことが一般的になっている。心理療法も傾聴型のカウンセリングが多い。 こうして、苦しみ続けるのは国民である。 心理的ストレスによる不登校、退学、休職、退職、自殺が減少 しないのは、こういうところにも原因がある。
こういうことを医者も心理療法家も官僚も言わないのはなぜなのだろうか。欧米とは何が違うのだろうか。カウンセラーによる心理療法は健康保険の対象ではない。うつ病などの治療に詳しいカウンセラーは少ない。心の問題による社会問題が広く起こっていて、国民が苦しんでいる。よく言われるが、無駄な予算配分をやめて、メンタルヘルスの領域に予算をまわしてほしい。
また、中学生のいじめらしい自殺が報道された。 日本人の他者への思いやりが極端に低下してしまっている。こんなに心の問題で苦しむ国民を支援できなければ世界の中での位置がどんどん落ちていくだろう。
精神分析療法(傾聴型)と認知行動療法(積極的課題提供型)


