(14)死の不安の克服(3) [2009年08月11日(Tue)]
がん患者の自殺予防・自殺のリスクが高い人の予防対策
=(14)死の不安の克服(3)
死を意識した時、人は新たな「わたし」意識を再構築、癒し、安らぎ、生き
る意味付けなどに強い関心を向けます。自分の哲学を構築しなくては最期が落
ち着きません。
マインドフルネス心理療法も「自己」の探求をめざします。自分、自己が
わからないために、悩みに対処できず、うつ病、不安障害を深めるからです。
先に「現在しかない」という立場がマインドフルネス心理療法であると言いい
ました。
現在しかないとしたら、一体、生きている現在の瞬間の自己とはどういうも
のであるかを探求する道があります。死の恐怖とは、生きているというのは「
これこれこういう自己」があると思っていて、それが消滅することの恐怖なの
でしょう。現在しかないという立場に徹する時、自己とはどういうものである
のかを探求します。確信をもてない限り、死ぬわけにはいきません。いつはて
るかわからない貴重な時間です。うつになっているひまはありません。
見られる対象(山や川)が向こうにあって、それとは別の自分がこちら側に
あって、相対して見るということが成立しているでしょうか。最近の脳科学や
哲学ではそうは見ていないようです。見るということは、目からはいってきた
ものを多くの神経が処理したものを解釈して見るということが現われているこ
とを明らかにしています。
自分の心が受け止めた事象を自分が解釈して環境や世界を再構成していると
いうことは自分と世界が別ではないということができるでしょう。今の瞬間自
己の場で、対象が成立して、見る、聞く、感じるなどの現象が生じているでし
ょう。環境と自己は、自己の場にあって、2つは分かれていないでしょう。自
己とはどういうものかを探求してくと、自分と世界が別ではないということを
実感できるでしょう。論理で理解するだけではなくて、体験する時に、自己に
関わる心理的な苦悩が克服されることがあります。
現在の瞬間のみがリアルですから、今、ここは、自己と環境の相互作用(い
わば、「自己と環境世界の場ということもできます。
私たちは、環境から刺激を受けて、見えるとか聞こえるとか私的事象を生起
させています。次々と刺激、反応、行動の連続です。そして、自分から環境に
行動として働きかけていきます。今ここにおける自己と
今ここにおける歴史的(時間的)・状況的(空間的)な環境に働き、変えてい
きます。自己と環境は自己の身体を焦点として相互に作用しています。
未来は存在せず、自己の選択次第で変化しますから、固定した自己も環境もあ
りません。固定したものはありません。不幸を予測しているような未来も、自
己や他者や環境の変化で変わり得るものです。また、自己は世界と別ではない
という感覚も出てきます。そういう探求を通して、自己、未来、世界、現在、
未来(死後)、苦と楽などという種々の哲学的なテーマにとりくむことになり
ます
書かれたものは、多くの闘病記、哲学書、宗教書があるでしょうが、マインドフルネス心理療法では書いてあるものを示すことはありませ
ん。自分で洞察、探求していくものです。マインドフルネスとアクセプタンスを実践します。
うつ病になる人は概念で自己を描きそれを嫌悪し否定し、あわれと思い、消滅することに恐怖する。概念に迷う。直接経験と概念の違いを洞察していきます。直接経験で苦痛のあるものはアクセプタンス(受容)します。「死」は自己が生きている限り、直接経験ではありません。概念のようです。生きている限り、生きることに全力をかけます(マインドフルネス)。これは理屈の書いた本を読むだけではありません。しかし、全力で現在になりきれば、自己とはどんなものだろうかと探求していく時、死ぬような自己とはどのようなものか、生や死が違った目で見えてくるでしょう。
闘病記を書いて生きた人は類似して生きているように見えます。
自己洞察瞑想療法( SIMT: Self Insight Meditation Therapy )は、「自己」とは何かということを探求します。
西田幾多郎は次のように言います。
「自己は単に作用ではなく、作用するものでなければならぬ、否、作用を内に包むも
のでなければならない。自己が自己の底に超越するということは、自己が自由となる
ことである、自由意志となることである、自由意志とは客観的なるものを自己の中に
包むことである。しかし、意識一般の如く対象がなお自己自身の内容でない場合は、
自由なる自己とはいわれない。真に自由なる自己は自己自身の内容をもたねばならな
い(内容なき意志は意志ではない)、しかもこれを自己自身の内容として内に包むも
のでなければならない、すなわち自己自身の於いてある場所となるものでなければな
らぬ。」(『叡智的世界』)
真の自己は、考えた内容、対象的にとらえられるものではない。すべてを包む、客観・世界を包む場所的なもの。こうしたマインドフルネス心理療法による探求も、また、がん患者さんの探求できることでしょう。今ここしかない、今から今へと絶対現在に生きる、すべてを包む自己の探求が「自己の死」を自覚したがん患者さんに、ひとつの生き方を示唆することでしょう。
がん患者の心のケア、スピリチャルケア、うつ、自殺予防
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Posted by
MF総研/大田
at 14:02
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がん・ターミナルケア
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