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自殺は防止できる=家族ができることから行動を(3) [2007年08月29日(Wed)]
マインドフルネス心理療法の本
うつ病や不安障害などを治すための新しい心理療法が開発されました。 それを紹介した本です。本で紹介した課題を実践すると治ります。
毎日、少しずつ実践して、脳内に生じていた変調に変化をおこして症状が軽くなるのです。

自殺は防止できる=家族ができることから行動を(3)

(前から続く)

まず家族が動くべきわけ

 うつ病や自殺問題については、医者やカウンセラーなどの専門家がいるのに、なぜ、家族が支援しなければいけないんだと不審に思われるでしょう。
 次に、長い論文で記述しています。  このうち、薬物療法で治らない人がいる、しかし医者は薬物療法以外の心理療法を提供しないことが多い、カウンセラーもうつ病に効果のある認知療法やマインドフルネス心理療法を知らない人がいる、認知療法やマインドフルネス心理療法ができるカウンセラーも少ない、などの問題を分析しています。
 今の医療制度では、医者が心理療法を提供しても診療報酬が少ないので、これから心理療法を勉強して行なおうという医者はふえにくい環境です。
 カウンセラーも、うつ病だけのスキルを向上させる動機が働きません。カウンセラーは、種々の組織に勤務しており、うつ病を治す役割を期待されておらず、うつ病の心理療法を習得しても、収入にむすびつかない状況にあります。独立のカウンセリング所で、心理療法を提供しても、保険の対象ではないので、料金が高くて、クライアント(患者)が多くなる見込みがありません。こうしたことから、日本では、うつ病(他の精神疾患も)が薬物療法で治らない患者さんのために、心理療法で治そうという職業専門家は育ちにくい環境になっています。  大学や公的機関の心理学の研究者や臨床心理士などが、患者数にかかわらず、定額の給与を保障されている身分の人が、心理療法を研究して、薬物療法で治らない患者に、認知療法などを提供していく可能性があります。だから、認知療法に期待するような声が聞かれます。

 ところが、アメリカでは認知療法にも弱点があると指摘されるようになっています。日本で、期待されている認知療法でさえも治らないうつ病、パニック障害などの患者がいる。そうすると、認知療法に効果がある人もいれば、さらに別の心理療法が必要な人もいる。  しかし、認知行動療法がうつ病を治す効果があるのは認められており、イギリスでは、国費によって、認知行動療法のカウンセラーを育成するプログラムが開始されました。  こうしたわけで、日本でも認知行動療法とマインドフルネス心理療法を受けることができる場所をたくさん作っていくべきだと思います。患者さんにより、自分でできる方、効果のある方を受けるとよいのです。

家族などが治療の場を作る

 こんな状況ですから、うつ病を治す治療法、治療体制が今後、準備されていくでしょうが、 治療効果の高い治療法、治療体制が全国のうつ病の方、自殺したくなるほど苦しんでいる方に提供されるまでには、相当の期間、10年、20年の時間が必要になるのではないかとおそれるのです。だから、家族ができることなら、効果があると思われることは、何でも開始した方がよいとすすめているのです。何しろ、家族の生命がかかっています。
 認知療法が向く人もあり、マインドフルネス心理療法が向く人もあります。どちらも、自分 でやっていると、甘える心理、回避する心理があり、超えるべき壁を超えることがむつかしいので、他者の支 援を得ることがいいと思います。習慣化された思考・行動傾向や、変調を起こしている脳部位 の回復には相当の期間がかかりますので、参加回数が少ないと新しい反応パターンが修復されません。 最低、月に1回は、通うことが早期の回復になりますので、自宅から居場所までの時間が1時間以内でないと、半年、1年は通えません。時間からも、交通費からも、1時間以上かかると、2回以上行く人は 少ないというのが、私が行なってきたこれまでの経験から言えることです。だから、全国、各 都道府県に、数カ所、居場所を作るのがいい。これを患者家族が作る運動をしたほうがいい。関心のない人が多いので、家族でないと活動する人を期待しにくい。
 重症の人は、支援経験の短い家族(ボランティ ア団体)では扱えないかもしれないので、都道府県に1カ所は、重症の人を扱う拠点を作り、ベテランの方が担当し て、両者が連携をとりながら、薬では治らない場合のうつ病、不安障害、過食症の人の支援をすすめてい くことを提案します。職業専門家は、うつ病の治療をする動機づけのない制度になっていますので、まず、家族か ら動いていき、ある程度の規模になれば、新しい制度づくりの陳情も可能になるのではないで しょうか。できることなら政府がイギリスの方式を学んで、日本でも認知行動療法、マインドフルネス心理療法のできるカウンセラーを育成してほしいですが。
 難病には、患者家族会が活動しています。うつ病、パニック障害、対人恐怖も、1年治らなければ、慢性化するおそれがあります。患者家族が、結集して、長期化するうつ病、パニック障害、対人恐怖を治すための活動を起こす必要があるのではないでしょう。偏見があり、また、仕事が忙しくて、活動しにくい状況にあり、そういう患者、家族の方に代わって、進めていく人が多くなればいいのですが、そのためにも、実情を知って いただく必要があります。

ご家族が治療できるところをさがす

 そういっても新しく治療の場を作るのは大変です。ご本人は症状がつらくて、カウンセリング所をさがすこともできないかもしれません。うつ病らしいとわかったら、ご家族が治療できるところをさがしてあげてください。ごいっしょに治療する場へ同行してください。ご本人が1人でいくことは不安であり、症状をよく説明できない場合があります。カウンセラーが言った課題を理解、記憶できない場合があります。ご家族が同行していると、本人に伝えることができます。家族がいっしょに治す支援をすると治る可能性が高まります。
連載記事=自殺は防止できる
Posted by MF総研/大田 at 14:24 | 自殺防止対策 | この記事のURL