パニック障害の改善例ーその後 [2007年04月27日(Fri)]
** 自己洞察法によって症状が改善した事例(後編) **
埼玉メンタル・カウンセリング協会(マインドフルネス総合研究所の前身)の新しい心理療法(マインドフルネス、アクセプタ
ンスを中心とした「自己洞察瞑想療法」)で、パニック障害が改善した方から、手記が寄
せられました。前編として、掲載させていただきました。
今度は、その2年後のご様子を、メールの内容で、ご紹介します。ご本人の承諾を得てい
ます。プライバシーにかかわることは含みません。
- 初めてカウンセリングにこられた時、40代の主婦であった。
- プライバシー保護のため、ご本人と同定されるような情報は含んでおりません。
- カウンセリングにおいでになった年を【(0)年】とし、その2年前を【(-2)年】、翌
年を【(+1)年】とします。 これは、大田の処置。
- (注X)は、メールには、なかったもので、大田の
加えたコメントである。
薬物療法では治らなかったパニック障害で、面接前にあった症状がほとんどなくなって
から、2年後にも、「外出恐怖も何もかもなくなり」と、全く発作も広場恐怖もないとい
う。
しかも、自分と他者、環境というものについての洞察が深まっておられることがわかる
。こういうものの見方の深まりは、マインドフルネス心理療法においては、よく報告され
ている(注3)。すでに、セラピストからは離れている
のに、本人が、その後も、呼吸法を中心にしたマインドフルネス、アクセプタンス、機能
分析法などを実践していると、セラピストの指摘によらず、自分からおのずと洞察されて
くる。
この方は、治療中においても、症状や環境について、自己について、洞察の深まりがあ
った。いつか機会があれば、ご紹介したい。
【(+4)年春】
Mさんから、当協会の代表あてに、メールをいただいた。2年近く経過した頃であった。全く
発作が起きず、完治した状況が続いている。この人は、前編に記載されている時の面接以
後は、全く、来訪されていない。ご自分ひとりで、実践を継続して、自己洞察が深まって
いった様子がみられる。
XX先生
ご無沙汰しております、XXです。
<一部省略>
先生とこちらの療法のおかげで、私は普通の主婦の生活ができるようになり、
さらに、ささやかですが、家計の足しになるアルバイトができるようになった
ことに感謝しております。
今は外出恐怖も何もかもなくなり、穏やかに過ごせています。
でも、短時間ではありますが、坐禅(呼吸法)はしています。
頭の中がしんとなる心地よさは、ほかの何ものにも代えられません。
でも、今まさに苦しいまっただ中の方もいらっしゃるわけです。
その方たちにも何とか良くなっていただきたいと、心から思っています。
> 体験談を見て、パニック障害の方がよくおいでになります。
> この心理療法への信頼を高める効果があります。
> 社会へのご貢献ありがとうございます。(注4)
私としてもうれしいかぎりです。
自分の症状が一番ひどかったときを思い出してみると、
「このつらさが一生続くのだろうか」「二度と普通の生活が送れないのでは?」
という不安が一番強かったように思います。
「つらい状態は固定的で、絶対に変化しない」と思い込まずに、
「自分は変化しうる存在なんだ」「永遠に同じ状態ということはあり得ない」
という希望があるかないかで、随分違う気がします。
体験談というのは、そういう役割を持てると思っております。
<一部省略>
それから、私自身のことですが、パニックになったそれなりの理由というものが、
自分の気質・性格の中に大いにあったと気付きました。
環境のせいばかりにしていたのですが、自分の気質がそれなりの環境をつくり、
その環境からの刺激でさらに自分の気質が強まる、という因果関係のようなもの
だったと、やっと気付いてきたこのごろです。遅いですね。
でも、この気質は先天的というか、心の癖のようなものかもしれませんね。
私のようにパニックになる人は、他人と自分の境をつけ過ぎる、他人から傷つけ
られることを防御するために、その人を嫌う方法をとる、ということが多いのでは
ないでしょうか。
つまり、「自分、自分」という狭い思考やものの見方のせいで、自分自身が苦しむ
のではないでしょうか。
いつか、先生から頂いたプリントの中に、心を病む人と病まない人の違いのような
ものが列挙されていて、「母のように包み込む気持ちのある・なし」が
書いてあったように思います。
あの当時はあまりぴんと来なかったのですが、なぜか心にずっとありました。
それが今になってみると、まさにそのとおりだと納得できます。
母のような気持ちがない=受容しない、包容力がない、排除する、慈悲心がない
ということですから、そういう自分なんだと認めることはかなりキツいことです。
でも、見るべきものは見なければ、何も変わりません。
ただ、生来の性格ですから、なかなか「母のような気持ち」を常に持つことは難しく、
周りの人を批判してしまったり、軽く嫌悪してしまったりという気持ちのほうが
まだまだ多く、反省の多い毎日です。
でも、そういう自分の状態を意識していれば、二度とパニックに戻ることはなく、
わずかずつでも変わっていけるのはないかと思っています。
以前、先生がおっしゃった「心の中で第二の自分が見ている」というようなことです。
(注5)
心の悩みの答えは仏教にある――という直感は今も変わらず、まずは初期仏教から
少しずつ調べて勉強しているところです。
知れば知るほど、お釈迦さまは本当に素晴らしい教えを開かれた、と感動します。
その仏教を基本にした先生の療法は、絶対に世のためになると確信しております。
(注6)
先生にはぜひご活躍いただき、苦しむ方を導いて差し上げていただきたいです。
そのお手伝いが少しでもできれば、これほどうれしいことはありません。
そのおかげで私自身も精進させていただくことができますから。
(注7)
ありがとうございました。
|
(注)
大田のコメント (次の記事)
このように、発作も広場恐怖も全くなくて、普通の生活を送っておられる。ところで、パニ
ック障害になる人は、中脳水道(または青斑核という説もある)に脆弱性、過敏性があっ
て、そこが興奮した時に、発作が誘発されるという仮設が有力である。そのようなクライ
アントが心理療法で完治した時には、脳神経はどんな変化が起きているのだろうか。
HPA系の負のフィードバックは改善されたのだろう。縫線核セロトニン神経も強化されただろう。これで、就寝中の発作や、発作のない時の身体症
状も消失する。前頭前野が活性化して、意識的な抑制、広場恐怖への自動思考、予期不安が抑制される。しかし、解明されていないことがある。
中脳水道の脆弱性、過敏性は、そのままであって、セロトニン神経の無意識の抑制と、
前頭前野からの意識的な抑制の2つの抑制力が発作の誘発を抑制しているのか。
それとも、中脳水道(または、青斑核)の脆弱性、過敏性が解消したのか。このいずれ
であるのかは、確認されていない。
もし、脆弱性が残ったままであれば、何十年後、加齢による、セロトニン神経や前頭前
野のおとろえによって、高齢になってからパニック発作が起きることがあるのか、わかっ
ていない。高齢者のうちには、介護などで、うつ病になる人は多いが、パニック発作を起こさない高齢者は多い。若い頃、パニッ
ク障害となって、マインドフルネス心理療法で完治した人が、その後、高齢になっても、
再発しないのか、知りたい。心理療法は、中脳水道などの脆弱性を完全に修復するのかど
うか。その後、高齢になっても、再発しないのか、知りたい。心理療法は、中脳水
道などの脆弱性を完全に修復するのかどうか。心理療法で完治した人を何十年も追跡調査
しないと判明しない。
この心理療法は、マインドフルネスとアクセプタンスを重視した瞑想によって、ストレ
ス耐性を向上させることにより、種々の心の問題を解決する心理療法であり、アメリカでは、
かなり盛んになっているが、日本では、まだ、これを行なうカウンセラー、セラピスト、
精神科医は、ほとんどいない。だが、研究が始まっているから、今後、日本でも、普及し
ていくだろう。アメリカのセラピストは、開発者が、それぞれ、名称をつけている
(ストレス緩和プログラム、弁証法的行動療法など)が、私の心理療法は、少し異なるところがあるので、独自の名称(自己洞察瞑想療法)をつけた。総称すれば、マインドフルネス心理療法であろう。そして、認知行動療法の一種である。
|
|
Posted by
MF総研/大田
at 23:25
|
パニック障害
|
この記事のURL