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【コラム】7月11日に、世界の人口を考える [2010年06月08日(Tue)]
【「人口変動の新潮流への対処」事業 事業委員 短信6】
Ikegami Kiyoko
池上 清子    国連人口基金 東京事務所長
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国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)定住促進担当、国連本部人事局行政官、家族計画国際協力財団(JOICFP)、国際家族計画連盟(IPPF)ロンドン資金調達担当官などを経て、2002年9月より現職。2008年、大阪大学大学院人間科学研究科博士号取得。NGO間のネットワーク構築、開発途上国での女性の健康、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、人口と開発、HIV/エイズなど諸問題に取り組む。外務省ODA評価有識者会議委員、内閣官房長官諮問機関アフガニスタンの女性支援に関する懇談会メンバーを務める。著書に「有森裕子と読む 人口問題ガイドブック」(2004年 国際開発ジャーナル社)、「シニアのための国際協力入門」(共著、2004年 明石書店)など。
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 50億人目の赤ちゃんは、1987年7月11日、ユーゴスラビアで生まれたマテイ・ガスパルくん。国連人口基金(UNFPA)が認定し、当時のデクエヤル国連事務総長は「マテイくんと同じ世代の人々が平和に暮らせるように」と祝福の言葉を贈りました。これを機に国連は、7月11日を国連の記念日の一つである「世界人口デー」として制定しました。60億人目の赤ちゃんは、12年後の1999年10月12日に、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボの病院で産声を上げたアドナン・メビックくんです。アナン前事務総長に抱かれたアドナンくんの写真が、新聞でも大きく報道されました。10年余を経た今年の世界人口は69億、そして70億人になるのは2011年と予想されています。2050年の推計人口をみると、現在の先進国と呼ばれる国のなかでは、米国だけがトップ10に入ることになります。

 日本にいると、少子高齢化、人口減少社会という言葉しか耳に入りませんが、実は世界でみると、人口は毎年約7900万人づつ増加しています。これは、ドイツよりもやや少ない人口数です。つまり、毎年ドイツと同じような規模の国が一つ、地球上にできていると同じような状況なのです。しかも、その95%が開発途上国で増えています。このように、人口を数の面からとらえて、マクロ経済の変数と考える人口の“マクロの視点”は、国や地域の開発を進める上でも、さらに市場の動向を分析する上でも、重要なデータとなります。一方で、国連を含めて国際社会は、開発を進めて貧富の格差を無くし、世界人口69億人の一人ひとりが、自分らしく生きられるような社会を目指しています。生活の質を改善するという観点からとらえる人口の“ミクロの視点”は、人権の基本理念でもあります。

 この“ミクロの視点”は、2000年に国際社会が協働して貧困削減などに取り組む枠組みとしてまとめられた「ミレニアム開発目標」にも受け継がれています。8つの目標を2015年という期限内に達成することを目指していますが、その中で目標5「妊産婦の健康の改善」は、20年前からほとんど改善されておらず、目標達成への進捗が最も遅れています。

 今も世界では、1分に1人、年間53万6千人のお母さんが、妊娠や出産が原因で亡くなっています。その99%は開発途上国に集中していますが、そのほとんどが避けられる死亡だと言われています。この妊産婦死亡の原因は、貧困や若年妊娠など、経済的・社会的な背景によるものが多いのですが、特に「3つの遅れ」が原因といわれます。一つ目の遅れは、治療を受けることを判断するまでの遅れ。二つ目は、産科ケアが受けられる病院や診療所を見つけ、そこにたどり着くまでの遅れ。そして三つ目は、帝王切開などの緊急産科ケアを、適切かつ十分に受けられるまでの遅れです。妊産婦死亡に効く特効薬や予防ワクチンはありません。この救えるはずの命を守るためには、医療面からの支援だけではなく、保健教育を含めて社会慣習を変えていく必要もあるのです。妊娠は病気ではありませんが、全妊産婦の15%はリスクがあることをふまえて、全ての妊産婦が産前健診を受けるような行動変容が求められると同時に、必要なケアが受けられるような環境を整えることも必要です。男児志向が強い文化圏では、男の子が生まれるまで妊娠・出産を繰り返す傾向が多く見られます。出産間隔を十分空けることで母体を保護することにより、安全な妊娠・出産ができるようになれば、“歩留まり”を考えて産んでいる「もう一人分の人口増加」はなくなるでしょう。

 一人ひとりの、意思決定の積み重ねが、その国の人口数を決め、そして世界の人口を構成することにつながります。だからこそ、それぞれが自分らしく意思決定することが重要になるのです。もし世界のどこかに、政策や文化的な価値観によって、自分らしい選択ができない場所があるなら、それは見過ごしてはいけない事実だと思います。今年の「世界人口デー」を前に、改めてそんな思いを強く持ちました。