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人口変動の新潮流への対処事業 資料集発行<予告> [2009年06月29日(Mon)]
 笹川平和財団は「人口変動の新潮流への対処」事業における2008年度の調査報告を「人口変動の新潮流への対処事業 資料集」(仮称)として発行します。

 この資料集は日本の人口変動・労働市場と移民の問題について考える基礎資料として、日本のあるべきかたちの議論に寄与することを目的とします。価値判断を伴いがちな議論の前に、客観的なデータを網羅的に得ること、国際的な動向の中で日本の置かれた現状をより相対的にとらえようとすることは重要だと考えます。
 2008年度は本事業の3つの分科会によって執筆を分担し、以下のような3部構成となりました。

第1部 日本における人口構造の変化・労働市場と外国人労働者の導入について
 †日本における少子高齢化・外国人労働者に関する基本データの整理と分析、他

第2部 アジアの移民政策の国際比較
 †フィリピン、インドネシア、中国における送り出し政策と台湾等の移民政策、他

第3部 日本の地域社会における社会統合・多文化共生施策の現状
 †日本における地域特性ごとの多文化共生モデル調査、他



 資料集全編の公開は2009年夏を予定しています。人口変動の課題に関心のある全ての人にお目にかけることを楽しみに、ただいま鋭意制作中です。

 発行の際には、改めて本ブログでご報告いたしますが、特に国内で多くの関係協力者を得て聞き取り調査をおこなった第3分科会による第3部「日本の地域社会における社会統合・多文化共生施策の現状」につきましては、関係協力者の皆様へ感謝の意を込めて、サマリーを先行公開します。

 来る全編の公開にご期待ください!


以下、第3部「日本の地域社会における社会統合・多文化共生施策の現状」<要約版>
1.総論:日本の外国人住民と地域での取り組みについて

 日本における外国人住民は、2007年末現在で約230万人である。外国人住民の増加は1990年の改正入管法以降に急になり、また多国籍化・多文化化が同時並行で進んだことが特徴的である。また地域による多寡や構成のちがいも大きく、外国人住民が直面する課題や、自治体、NPO等が提供する取り組みも地域ごとに大きく異なっている。

 本稿では外国人住民を対象とした地域の取り組みの現状に着目し、その内容や担い手の現状を地域の状況に応じて4つに分類して、現状と課題を明らかにすることを試みたものである。4つの地域とは、外国人住民の構成や人口に占める割合によって下記のとおり分類したもので、モデルごとに2つの地域を選んで取り組みを調査した。



 調査対象とした取り組みは「コミュニケーション支援」「生活支援」「地域づくり」「推進体制の整備」の4つで、調査した担い手はこれまでの地域における多文化共生推進の経緯を踏まえ、「自治体および国際交流協会」「NPO」「自助組織」に大きく分類し、ヒアリングや文献調査を通じて地域ごとの様子を明らかにした。


2.施策及び取り組みと担い手の現状

 施策及び取り組みの現状では、「コミュニケーション支援」のうち、「日本語教室の開催」「多言語による生活情報誌の発行」「相談窓口の設置」は4つの地域モデルに共通して充実していたが、他の分野では地域によってばらつきがみられた。

 各地域モデルの特徴として、

「中心市街地型モデル」地域では日本語教室の開講数、相談窓口の設置個所及び対応言語が多く充実している一方、行政による日本語教室の開設・運営支援に乏しく、ボランティア団体の自助努力によっているところが大きい。

「都市近郊型モデル」地域では、「中心市街地型モデル」地域と同様に、日本語教室の開講数と相談窓口の設置個所及び対応言語は比較的多いが、それ以外の取り組みは、「地方型モデル」地域よりは多様であるものの、「外国人多住型モデル」地域に比べると支援内容に偏りがみられる。

「外国人多住型モデル」地域では、相談窓口の設置個所の多さに加え、行政による日本語教室の開設・運営支援及び活動するボランティア人材の育成に積極的である。しかし、ラジオ等のメディアによる多言語情報発信やオリエンテーションの実施や地域の生活マナー・文化等を学ぶ機会の提供、通訳人材の育成等、手がつけられていないものも多い。

「地方型モデル」地域では、それぞれの実施頻度は少ないものの、ニーズに応じた取り組みがなされている。しかし、定住志向の外国人住民が多いことから、オリエンテーションの実施、情報や人材・物理的資源の収集・整理、関連団体のネットワーク形成が今後期待されるところである。

 担い手の特徴としては、日本語教室の解説や支援、多言語での情報提供や相談窓口の設置までは、全地域モデル共通して自治体や国際交流協会が実施していた。NPOやボランティアによる活動は「都市近郊型モデル」で顕著であり、「中心市街地型モデル」では自助組織による活動が活発であった。また各地域モデルで多文化共生推進のための指針や計画づくりを行っているが、策定プロセスへの外国人住民の参画に工夫を凝らしていることも明らかであった。

 「中心市街地型モデル」ではエスニシティを超えた地域づくりの促進、「外国人多住型モデル」では日本語習得機会の拡充、「地方型」や「都市近郊型」では母語・母文化の支援やコミュニティ形成へのサポートが、今後の課題としてあげられる。


3.今後の研究にむけて

 本研究により、地域モデルごとの施策及び取り組みの概要が明らかとなった。また担い手の存在が地域ごとに異なることや、今後拡充すべき施策及び取り組みの方向性および育成すべき担い手の特色も明らかとなった。

 次年度は外国人住民側の「需要(=課題やニーズ)」に着目し、今回明らかとなった「供給(=施策及び取り組み)」との間の過不足を見ることで、地域モデルの検証を行うとともに、海外の事例とも比較し、モデルの国際的普遍性についても検証したい。具体的には、今回の4つの地域モデルに該当する欧州の自治体において、同様の調査を実施する予定である。なお本稿では、予備調査として行った韓国・安山市とドイツ・デュースブルグ市の多文化共生の現状を、国内8地域と同じ視点から調査し、参考資料として付している。

 今後日本だけでなくアジア全体で必要とされる「地域における多文化共生社会の形成」に向け、自治体やNPOが参照できる地域モデルの提供を模索したいと考える。

2009年度第1回 事業委員会 & 農業勉強会(1) [2009年06月18日(Thu)]
 5月8日(金)午後2時より、2009年度、第1回目の「人口変動の新潮流への対処」事業 事業委員会を開催しました。

 本年度は3年間にわたるプロジェクトの2年目にあたる事業の根幹となる一年です。昨年度から継続する3つの分科会(「人口構成の変化と労働市場に関する分科会」、「移民政策・社会統合政策の国際比較を行う分科会」、「多文化共生・社会統合に関する分科会」)に加えて、多くの外国人が従事する農業分野について実態の一端を明らかにする「農業勉強会」と、低経済成長時代の社会統合政策についてEU地域から学ぶ「EU勉強会」を設けることになりました。

 同日、午後4時より、東京大学大学院農業生命科学研究科 安藤光義准教授をお招きし、第1回目の農業勉強会が開催されました。

<第1回 農業勉強会>

「農業における外国人労働力導入の実態
 ―茨城県・大規模畑作経営の事例から―」 安藤 光義(東京大学)


 茨城県は日本有数の畑作地帯であり、農地制度や農家の相続についてご専門にされている安藤先生は、農家へ調査にいくと必ずといってよいほど外国人労働者を見かけたことから、農家における外国人労働力についての調査を行われました。農家への聞き取り調査を中心に、まずは、外国人労働力導入の是非を論じるのではなく、価値判断なく現場の実態報告をいただきました。

“以前は、農繁期には近隣農家の家族の女性や学生アルバイトが活用されてきたが、農家の家族の高齢化も進み、労働力として確実に働いてくれる人材を確保することは多くの農家にとって容易なことではなくなった。一方、家族経営が中心であるとみなされてきた農業分野でも、特に園芸農家において常雇の労働者の雇用が増えていることが先行研究で指摘されている。この場合は、家族労働力が足りないから常雇いを入れているわけではなく、農家の経営拡大のために雇用労働者を増やしている。かつてのイギリスの資本家的農業経営は雇用型経営の典型だがそれは膨大な農村過剰人口が存在していたある歴史的な時代の一時点の産物であって、その後は家族経営に戻るといわれてきた。しかし、今、日本でおきている農業の雇用経営への変質の動きをどのようにとらえたらよいのか。そこで雇用されている労働者の性質をみていくと外国人労働力の存在が大きい。

 農繁期の日雇い労働力として重宝されている外国人(聞き取り先の多くではインドネシア人)、常雇として雇用主にとって安定した労働力となる研修生・技能実習生(多くは中国人)は既に日本の野菜産地の戦力となっている。今後、外国人労働力の導入を前提とした農業の大規模化が展開されると、日本農業の構造に大きな影響を与える可能性がある。また、国内の若年失業者との関係の整理や、現行の制度のまま外国人労働力を受け入れ続けるのかということが大きな問題となるだろう。”

(文責/聞き手・事務局)