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2008年度事業紹介 「人口変動の新潮流への対処」事業とは [2009年01月30日(Fri)]
2008年度の「人口変動の新潮流への対処」事業を紹介するパンフレットをつくりました。



(内容紹介)

「人口変動の新潮流への対処」事業

世界の人口構造は人類史上例をみない少子高齢化という激変期に突入している。特に先進諸国は不足する労働力を補うため、発展途上地域から労働者を導入している。日本は世界でもっとも少子高齢化が進行している国の1つでありながら、外国人労働力の受け入れの可否をめぐっては、さまざまな議論が展開されているが、十分な検討がなされないまま受け入れ実態が先行している。厚生労働省の予測によれば、就業支援が進まない場合、2030年までに労働力人口は1070万人減少すると推計されている。したがって、外国人労働者の導入は不可欠との見方も存在する。しかし、途上国も少子高齢化が進展しており、送り出し圧力がいつまでも続くとは限らない。

一方で、アジア諸国では国境を越えた人の移動が盛んであり、人材の獲得競争も生じている。人材を多く輩出する送り出し国も移動は移動する人の基本的人権という考え方から、移動に対して積極的な位置づけを与えている。こうした人口構成の変化、送り出し国との相互理解を深めることはグローバル社会を生きる上で、あるいは共生する上で重要であると考えられる。

こうした現状に鑑み、人口構成の変化にどのように対処すべきかについて本プロジェクトでは検討し、政策形成の資料として提示する。2008年度〜2010年度の3年間のプロジェクトを通して、最終的には日本の外国人労働者の受け入れはどうあるべきかという政策提言へつなげることを目的としている。2008年度のプロジェクトは「人口構成の変化と労働市場」「移民政策の国際比較」「多文化共生・社会統合政策」の3つの分科会から構成され、日本の労働政策や多文化共生・社会統合政策について整理し、また他のアジア諸国の移民政策について検討する。

<2008年度の概要>

◆第1分科会 「人口構成の変化と労働市場」

少子高齢化による人口の減少が及ぼす労働市場への影響を検討する。女性や高齢者の活用、海外へのアウトソーシング、機械化などの生産性の向上などを考慮したうえで、果たして新たな労働力を外国から導入する必要があるのか、地域別業種別に労働市場を捉えなおす。2008年度は、国内の外国人労働者問題に関する既存の諸議論を整理し、わが国における人口構成と労働市場の変化について客観的に議論するために必要となる基礎データをそろえることを目的としている。業種は、製造業、第一次産業(農業、水産業)、IT分野、看護・介護分野に重点をおく。

◆第2分科会 「移民政策の国際比較」

先進諸国は労働力人口の減少による経済活動の停滞を防ぎ、また国際競争力を維持する観点から移住労働者の導入を図っている。あわせて定住者に対する社会統合政策も打ち出され、アジア諸国でも移民政策は入管政策と社会統合政策の両輪を軸とするようになった。送り出し国も積極的な送り出し戦略のもと人材育成を始めるなど、グローバルな労働力移動は極めてダイナミックに展開している。

とはいえ、途上国の少子高齢化も急速に進んでいることから送り出しの見通しは必ずしも明るくない。2008年度はアジアの送り出し国(フィリピン・インドネシア・中国)と受け入れ国(韓国・台湾)を取り上げる。送り出し国については政策概要だけではなく、送り出し国自身の人口構成の変化による送り出しの見通しについても言及するとともに、当事者が海外就労をどのように考えているのかについても考えていきたい。これらに着目する狙いは送り出し国に対する理解を深めることにある。受け入れ国については入管政策だけではなく社会統合政策についても取り扱い、近年、注目を浴びている看護・介護部門にとくに詳しく言及する。国際比較は単なる制度比較にとどまることなく、制度と実態のかい離や問題点についても検討する。

◆第3分科会「多文化共生・社会統合」

移民政策を巡っては出入国管理に注目が集まりがちであるが、本分科会では移民受け入れ後に焦点を絞り、外国人住民への自治体施策のあり方や、地域住民・NPOによる社会統合および多文化共生の取り組みについて、国内8か所における現状と課題を整理する。そこから見えてくるのは外国人住民のニーズと行政やNGOやNPOによるサービスの供給のあり方が、定住者の属性、雇用状況あるいは地域の政策によって異なり、大きく1)中心市街地モデル、2)都市近郊モデル、3)集住地区モデル、4)中山間地モデル、に分けることができるということである。この分科会ではこうした地域の実態調査を通して、地域マネジメントのモデル構築を目的とする。



<次年度以降の取り組み(予定)>

2年目以降はテーマを絞って調査・研究を継続する。第1分科会は農業などこれまで明らかにされてこなかった業種を取り上げてより詳細な分析を行う予定である。同時に計量分析を取り入れ、外国人労働者の導入がどのような影響を日本社会に与えるのかシュミレーションを行う。これにより、定量・定性的な2つのアプローチから移民の及ぼすインパクトについて研究を行う。第2分科会は移民政策の国際比較の調査を継続しつつ、特に国家を超えた「地域」について取り上げる。EUという地域が新たに移民を規定する要因となっているが、アジアではASEAN統合が急速に進んでおり、地域統合がどのように国際移動に影響を及ぼすか検討する。第3分科会では1年目の多文化共生モデルに従い、それが他国でも適用できるのか、ドイツからいくつかの地域を事例として取り上げる。また、比較を通して地域や企業の役割に関する国際比較が可能となる。
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