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【コラム】外国人労働者受入れのインパクト評価のための笹川プロジェクト [2010年05月17日(Mon)]
【「人口変動の新潮流への対処」事業 事業委員 短信4】
Junichi Goto
後藤純一
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慶應義塾大学総合政策学部教授・神戸大学名誉教授。1951年山口県生まれ。’75年労働省(現在の厚生労働省)入省。Yale大学、世界銀行、MIT、米州開発銀行、神戸大学等を経て、09年4月より現職。経済学博士(Yale大学)。専門は国際経済学・労働経済学。著書「国際労働経済学」「外国人労働の経済学」、「外国人労働者と日本経済」、「Labor in International Trade」等。
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「人口変動の新潮流への対処」事業第1分科会主査


 わが国の出生率・出生数は、戦後ほぼ一貫して減少を続け、2008年には出生率1.37、出生数109万人と人口維持水準を大きく下回っている。出生率(数)の持続的減少は、わが国人口の減少および高齢化をもたらし、深刻な労働不足を引き起こす。日本人労働者が不足するのなら外国人労働者を受け入れるべきだという議論が盛んであるが、外国人労働者問題が顕在化した1980年代後半から20年の歳月が経過しているにもかかわらず、依然として客観的根拠に基づいた議論は少なく、受け入れの是非についてのコンセンサスには程遠い状況にある。

 そこで、笹川平和財団では、厳密な経済モデルに基づいて外国人労働者受入れのインパクトを計測し、客観的かつ建設的議論に資するためのプロジェクトが進行中である。従来、外国人労働者受け入れに関する経済学者の見方は、労働力が余っている国から、足りない国へと労働者が移動するのであるから、双方にとってプラスになるとするバラ色議論が主流であった。しかし、近年、受入国における社会資本に対するフリーライダーの問題など現実的な要素を取り入れた場合にはプラスになるかマイナスになるかは一概に言えないとする議論が台頭してきた。また、外国人労働者受け入れのコスト・ベネフィットは受け入れの規模に依存するという主張もあらわれてきた。
 笹川モデルはこうした新しい学説を取り入れた一般均衡論的経済モデルに基づくシミュレーション分析を行うものである。プロジェクトは来春完成を目指し目下作業中であるが、その暫定的結果をみると、少人数の外国人労働者を受け入れた場合には経済的・社会的コストがベネフィットを上回るため、マイナス(ないしごくわずかのプラス)の効果となるが、500万人、1000万人といった大規模な受け入れをした場合には、アメリカなどのように一大集団として受け入れられるためベネフィットが大きくなり、日本経済社会は大きな恩恵を受けることになるようである。これを図示するとU字型グラフになり、わかりやすく言えば、すきま風的な受け入れは好ましくないがハリケーン的受入れはプラスになる。

 これまで、外国人労働者受入れ問題に関しては、客観的議論に基づくコンセンサスがないためか、インドネシアやフィリピンからの看護師候補者・介護福祉士候補者受入れについても数百人という極めて小規模な受け入れにとどまっている。わが国の看護師(准看護師を含む)の数は現在就業している人だけでも120万人、介護福祉士の人数は約64万人である。こうしたなかで海外から数百人のオーダーで受け入れても焼け石に水ということは明らかである。明確な方針もないまま少人数を受け入れるのではなく、受け入れのコスト・ベネフィットについての冷静な議論を行って方向性についてのコンセンサスを形成することが急務の課題である。もし外国人労働者を受け入れないのなら確固たる信念をもって代替策(モノ・カネの移動の促進、女性の職場進出支援など)を実施し、受け入れるのであれば人手不足解消に資するよう大規模に行うことが重要であろう。
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