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【コラム】九州大学アジア総合政策センターの国際会議 [2010年03月10日(Wed)]
【「人口変動の新潮流への対処」事業 事業委員 短信2】
Ogawa Takeo
小川全夫
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九州大学・山口大学名誉教授。特定非営利活動法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター理事。アジア太平洋アクティブ・エイジング・コンソーシアム創始者。社会老年学から調査研究して、地域高齢化やアジア高齢化に対する政策提言を行っている。著書に「地域の高齢化と福祉:高齢者のコミュニティ状況」(恒星社厚生閣)、「生涯現役社会づくりプログラム開発:日米東アジアの比較と協力」(九州大学東アジアセンター・オン・エイジング)など。
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 2010年2月27日に福岡市で開催された「東南アジアから日本へのケアワーカー移動をめぐる国際会議:政策担当者と研究者の対話」は、九州大学アジア総合政策センターの大野俊教授たちの研究グループの成果発表を兼ねていた。現在この研究グループは、インドネシア大学との間で共同研究を進めている。フィリピンからはジェニファー・ジャルディン=マナリリ海外雇用庁長官、インドネシアからはハポサン・サラギ大統領府海外労働者派遣・保護庁局長が参加、日本側からは厚生労働省職業安定局経済連携協定受入対策室、外務省アジア大洋州局南部アジア部南東アジア第二課の関係者が参加した。

 経済連携協定に基づいて、インドネシアやフィリピンから来日した看護師・介護福祉士候補者の理由動機や目的動機は、両国で違いがあることが報告された。インドネシアからの候補者は、比較的経済的に困ってはおらず、職業上のキャリア・アップをめざしている人が多く、年齢が若く未婚者が多いのに比べて、フィリピンからの候補者は、比較的経済的に困っていて、家族への仕送りを第一の動機にあげる人が多く、年齢幅も広く既婚者が多かった。

 またインドネシアの研究者からは、候補者たちは、現在かなりの職業上のストレスを感じながら頑張っていることが報告された。

 国家試験問題が日本語で出題されることに対して、英訳で出題してもよいのではないかという論議がある。これに対して、産業医科大学川口貞親教授が、過去の問題を英訳して模擬試験を行った結果、必ずしも全員が合格点に達することはなかったという報告があった。

 とくに注目を浴びたのはインドネシア大学バクティアル・アラム教授の「摩擦から創造へ」という認識であった。来日しているインドネシア人看護師・介護福祉士候補者が、本来の看護や介護の役割を果たせないもどかしさと、経済的な期待外れや日常生活での孤立など多くのストレスを感じることはあろうが、それが次の創造へと向かう動きでもあることを指摘したのである。看護師としての経験を認めてもらえず、看護助手のような仕事をさせられているある候補者は、むしろ高齢者と接することに看護や介護の原点を見出したという。また時間厳守という日本人労働者の働き方に当初は疑問をもっていたが、いつしか時間を守るようになったという。こうした努力を傾けている外国人看護師・介護福祉士候補者や、かれらを雇用して今後の国際化に備えようとしている施設や病院にとって、国が明確な将来構想を示さないと、候補者の自己研さんと雇用主の経営ガバナンスの苦労は報われない恐れがある。

 第4部のパネル・ディスカッションでは、超高齢社会におけるケア移民の受け入れと人材育成をテーマに論議しあった。ここでは、今の政府間経済連携協定を超えて、将来的な介護人材を育成するには、大学間、施設間、関係団体間の連携を深めることが重要な課題であることが明らかにされた。


(筆者、登壇者の肩書は2010年3月現在のものです。)
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