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【国際シンポジウム】「社会統合政策の課題と挑戦 ― 新たな理念と役割を求めて」開催報告 [2010年02月05日(Fri)]
 2010年1月14日(木)、日本財団ビル2階において、国際シンポジウム「社会統合政策の課題と挑戦 ― 新たな理念と役割を求めて」を開催しました(当日プログラムはこちら)。昨年度、ご好評いただいた国際ワークショップに続き、「人口変動の新潮流への対処」事業の2年目企画です。アジア、EU、日本の地域から社会統合政策の専門家や実践の現場にいる担当者をお招きし、約140名の方にご参加いただきました。

 冒頭の挨拶では羽生会長より、「日本では少子高齢化の問題よりも、移民の社会統合について国民的にも政治家の間にも、コンセンサスがないことが課題である」と語られました。「異民族間の結婚率が外国人の社会統合を示す指標であるというエマニュエル・トッド氏の説を採用するなら、1975年から2007年までの間に、結婚数全体に占める国際結婚の割合が0.6%から5.6%にまで増加した日本は間違いなく外国人受け入れの方向に向かっていると言える。その時に備えて、笹川平和財団は東アジアにおける人口問題の研究センターを目指したい」と、大きな事業の方向性が示されました。


第1部 多様な展開を見せる社会統合政策―EUにおけるダイナミズム


 第1部は、安里和晃笹川平和財団特別研究員・京都大学大学院准教授より、「外国人登録者数が200万人を超えた日本では、『外国人を入れる』『入れない』を議論する時期は既に過ぎている。どのように受け入れるかをEUやアジアの社会統合の経験から学ぶことが今の私達に必要だろう」と、今回の国際シンポジウムの趣旨を確認する講演から始まりました。

 続いて欧州評議会文化政策・多様性・対話部長Irena Guidikova氏から、住み分け型の多文化主義や同化のマイナス面を排除した社会統合モデル、インターカルチュラルシティ・モデルについてお話いただきました。移民のもたらす多様性が都市の活力となるという新しい概念です。OECD国際移民部政策アナリストJonathan Chaloff 氏は、世界の労働力移動・その賃金の傾向について述べ、社会統合過程に問題があって移民の能力が活用されなかったり、移民の子供たちの世代が受け入れ社会でチャンスを得られないという状況を避けるために必要なことをOECDの提言として紹介されました。


第1部ファシリテーター:小川全夫氏  第2部ファシリテーター:明石純一氏  

 昼食休憩をはさんで第2部の開始にあたり、ファシリテーターである筑波大学助教明石純一氏より、昨年日本の入管法が20年振りに大きく変わったことが言及され、まだ、真正面からの移民政策を持たない日本にとっては受け入れの先輩にあたるアジア諸国から学ぶことは多いのではないかという期待が語られました。

 距離は欧米より近くても、あまり知る機会のないアジア諸国の社会統合政策には参加者から驚きの声も。シンガポール大学アジアリサーチ研究所シニアリサーチフェローLai, Ah-Eng教授から説明されたシンガポールのユニークな多文化主義について、台湾大学社会学部Tseng, Yen-Fen教授と韓国培材大学社会学部Lee, Hye-kyung教授からは、それぞれ台湾と韓国でともに増加している結婚移民への社会統合政策が解説されました。女性の社会進出が急速に進展している一方で、社会が外国人女性に対して、「よき妻」「よき母」「よき嫁」であることが最も重要であるかのように押し付けかねない言語施策、統合施策について、両氏から警鐘が鳴らされ、移民の女性化がはらむ複雑な課題が浮き彫りになりました。


第2部 アジアにおける社会統合政策の胎動


 第3部では、地方自治体の社会統合・多文化共生担当者や労働組合というコミュニティから現場の声を聞くことができました。デュースブルク市岐阜県美濃加茂市は外国人が集住している地方都市という共通点があります。デュースブルクはかってはドイツ有数の工業都市でしたが鉄鋼産業の衰退ともに移民のゲットー化が社会問題化し、現在は生き残りをかけて、移民の持つ異文化の力を活用しようとしています。市統合局長Leyla Oezmal 氏は、自身がトルコ系移民2世でもあり、移民の子供への教育、社会参加の機会の重要性を熱く訴えました。美濃加茂市からは、日本が国としての社会統合政策を持たない中で、自治体が先駆的に外国人住民と地元住民との相互理解や課題解決に奮闘してきた事例を、坂井嘉巳氏(美濃加茂市市民協働部生涯学習課課長兼中央公民館長)よりご紹介いただきました。
 オランダのアバカボ労働組合連盟政策アドバイザーMarco Borsboom 氏からは、オランダにおける医療・福祉分野に従事する移民受け入れの経験について、好況期の人材不足の時期から、移民を実現するための「三国間協定」の試み、またその後の経済状況の変化と見えてきた課題について実状をシェアしていただきました。


第3部 多様な主体が推進する地域の社会統合


 最終討論では、フロアの参加者よりいただいた多くのご質問をもとに意見交換をおこない、過ぎてゆく時間を惜しみながらクロージングを迎えました。今年も、多くの皆様から当プロジェクトの最終年度にあたる3年目に向けて、確かな示唆をいただきました。


ほぼ満席の会場と最終討論
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