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NO:5092 5月1日 『イラク19人のロシア女性を終身刑に』 [2018年04月30日(Mon)]
*イラク政府はイラクに在住する、ロシア女性19人に対して、終身刑を下した。彼女たちはロシア人IS(ISIL)のメンバーの妻たちだった。もちろん、彼女たちは夫に付いてイラクに来ただけで、戦闘に参加していた者は、ほとんどいなかったろう。*

*赤ん坊を抱いている女性も、その一団には入っていた。当然、子供たちも親たちと同じように、刑務所で暮らすことになるのであろう。そこで教育が行われるとは、あまり信じられないし、成長した段階でその子供たちは、どのような処遇を受けるのかも分からない。*

*受刑者の女性たちは20代から、30台の前半であろうと思われるが、彼女たちが残りの人生を、本当に刑務所で過ごすのであれば、これ以上の残酷はあるまい。彼女たちはIS(ISIL)に参加して戦うと言い出した、夫の言うままに、夫につき従って、イラクまで来ただけの話だ。誰もIS(ISIL)を支持し、戦闘に加わろうとは、思っていなかったはずだ。*

*同じように、トルコ人のIS(ISIL)のメンバーの妻たちは、確か20人以上が死刑判決を、下されている。この場合も、戦闘に参加する気持ちなど、無かったはずであり、ただ従順に夫の言うままに、イラクまで付いて来たのであろう。*

*トルコ人女性の場合は死刑判決であり、ロシア人女性よりも重い罪ということになる。それは、イラク政府が大国ロシアを恐れ、やがては釈放を考えての、判決だったのかもしれない。他方、トルコの場合はそこまで配慮する必要が、無かったということであろうか。*

*それにしても、イラクでの何十年にも及ぶ、終身刑の刑務所暮らしは、大変な苦痛であろう。刑務所内はエアコンなど効いていないだろうし、付いていたとしても、故障は頻繁に起ころうし、停電も起ころう。*

*イラクの夏は炎熱地獄だ、外気は日陰でも5〜60度、屋内もそれとほぼ変わるまい。一日中サウナに入っているような、ものすごい暑さに襲われるということだ。この女性たちを救うことこそ、人道活動なのだと思うのだが、誰も動き出してはいない。所詮、国際的な人道団体も、アメリカの意向に従って、活動しているということであろうか。*
Posted by 佐々木 良昭 at 10:39 | この記事のURL
NO:5091 4月30日 『ドイツがサウジUAEに武器輸出停止・英断は実行されるか』 [2018年04月29日(Sun)]
*ドイツがサウジアラビアとアラブ首長国連邦に対して、武器の輸出を止める方向にある。もし、これが正式に決定されれば、地域の状況には、大きな変化が生まれよう。述べるまでも無く、武器の輸出は大きな利益を生むものであり、このことで関係が強化されれば、他の物品の輸出も拡大することが、見込まれる。*

しかし、ドイツは3年にも及ぶイエメンとサウジアラビア・アラブ首長国連邦の戦争がもたらす惨禍を、見過ごすことが出来なかったのであろう。60万人のイエメン人が殺され、22万2千人が食糧難の状態にあるのだ。そして10万人のイエメン人が家を追われてもいるのだ。

サウジアラビアはドイツからパトロール・ボートを輸入し、イエメンの港の監視に当たっているが、そのためにイエメンには、援助物資が搬入できない状態が、生まれている。このことがイエメン住民の食糧難を、生み出しているのだ。

そればかりか、イエメンでは医薬品が大幅に不足しているために、国内で広がるコレラに対する治療が出来ず、何十万人もの患者が出ており、死亡している人たちも、少なくないのだ。

今回の、ドイツのサウジアラビアとアラブ首長国連邦に対する、武器輸出中止が正式に決定されれば、ドイツは武器の輸出、武器関連の物品の輸出を、止めることになるが、それは以前に契約されたものの、キャンセルをも含むことになりそうだ。

問題は、イランがイエメンのホウシ派に対して、武器を供給しているといわれているが、イランを始め、イエメンの反体制派に対する武器の流れを、どのようにして阻止するか、ということであろう。

ホウシ派によるサウジアラビア国内への、ミサイル攻撃が繰り返されており、ホウシ派のミサイルはサウジアラビアの空港など、都市部にも届いているのだ。

イスラエルを訪問しているアメリカのポンペオ国務長官は、サウジアラビアに対してイエメン戦争を手控えるよう、苦言を呈している。その事は欧米の間でイエメン戦争を終わらせようという意志が、働いているのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 09:06 | この記事のURL
NO:5090 4月29日 『ギュルの大統領立候補は消えるか』 [2018年04月28日(Sat)]
*元大統領だったギュル氏は、彼のスマイルと柔らかな演説で、トルコ人を魅了するばかりではなく、欧米人も魅了してきていた。彼は国際機関での仕事の経験もあり、考え方が欧米に近い、ということもあるのであろう。
*
*そうしたことから、今回のトルコ大統領選挙で、彼を担ぎ出すことにより、エルドアン大統領を失脚させよう、という試みがあった。しかし、野党のなかにはいろいろ異なる意見があり、未だに統一候補としてギュル氏を立てることに、合意できないでいる。*

*
彼を推すだろうと思われている政党は、野党第一党のCHP,そしてSP,IYIなどだ。ただし、IYIのアクシェネル女史は大統領選挙に立候補する、と言っており彼女が選挙候補者から降りて、ギュル氏を推すとは思えない状態にある。CHP内部ではギュル氏を推薦することに、抵抗を示しているメンバーが少なくない。*

*こうしたギュル氏に対する支持の弱さは、彼の穏健な姿勢から来ているのかもしれない。彼が大統領の時期には、大統領よりも首相であったエルドアン氏の、強いキャラクターが国民を魅了していた、という事実がある。*

 従って、ギュル氏が大統領に当選しても、何も変わらないだろう、という推測をする人達も少なくないようだ。トルコ人は強いキャラクターのリーダーを好み、彼が自分たちを強引にまで、リードしてくれることを望む傾向があるからだ。それは、オスマン帝国の歴史から、来ているのかもしれない。

 現状では、エルドアン候補に並び、IYIの党首であるアクシェネル女史、HDPのデミルタシュ氏が候補者として名を連ねている。そこに、どうギュル氏が加わってくるのか来ないのかが、いま話題になっている。

 与党AKPの首相ユルドルム氏は『ギュル氏はAKP設立当初からのメンバーなのだから、AKPから立つべきだ。』と語っている。加えて『ギュル氏は我々の友人だから、彼が望むどのようなポストでも、用意しよう。』とも語っている。

 つまり、『大統領に立候補しない限り、どんなポストでも与えてやるから、立候補は降りろ。』と言っているのだ。ギュル氏もエルドアン大統領が首相の時代、汚職に手を染めていた可能性があろう。そうなると、冷静なトルコ国民からは、あまり支持されないかもしれない。例え支持され大統領になったとしても、以前と同様に強力な政治指導力は、発揮できない可能性があろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:12 | この記事のURL
NO:5089   4月28日   『IDBとAIIBが連帯へ』 [2018年04月27日(Fri)]
イスラム諸国で構成されるイスラム開発銀行と、中国を主体とするAIIBが、連携関係になる方向にある。

AIIBは84か国がメンバーになっており、1000億ドルの資金を有している、国際的にも巨大な銀行だ。他方のIDBは、サウジアラビアなど多数の産油諸国を、メンバーに抱えている優良銀行だ。

これから、この二つの銀行が連携して、発展途上国のインフラ開発に、乗り出す方針のようだ。IDBのメンバー国になっている、アフリカ諸国の多くの地域では、いまだに電力が共有されていないのが実情だ。

IDBとAIIBでは加盟国が相当ダブっており、連携統一の方向に向かうのは自然な流れだ、とIDBのハッジャル代表は述べている。IDBのメンバー国は57か国だが、そのうちの6500万人は、いまだに電力の供給がなされていないのだ。従って、AIIBとIDBが協力して、現状の改善に向かおうとしている。

電力事業では日本企業が、多くの国々で活躍していることもあり、今後、この新たな連携によって生まれるビジネスに、日本企業も大きく関係していくものと思われる。日本企業もこれまで、
JBICの資金を使い、多くの国々で電力開発事業を、行ってきているが、これからは新たに生まれた、AIIBとIDBの支援もあり,事業はより活性化していくものと思われる。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:32 | この記事のURL
NO:5088   4月27日  『トルコ大統領選挙のもろもろ』 [2018年04月26日(Thu)]
トルコの大統領選挙が6月24日投票と決まったが、それがそのまますんなりと実行されるか否かは、いまだに不明な部分がある。与党AKPについては、エルドアン大統領が現役立候補することは間違いないが、野党側の候補者はまだ最終決定に、至っていないのではないかと思える。

野党側で立候補がほぼ確実なのは、IYI党のアクシェネル女史であり、クルドの政党HDPのデミルタシ氏、と言ったところであろうか。それ以外にも野党候補として、元大統領のギュル氏の名前が挙がっているが、最終決定ではないようだ。
ギュル氏の立候補については、エルドアン大統領から相当圧力が、かかっているようだ。そうでなけれ、既に立候補宣言しているはずであろう。

 巷ではギュル氏が立候補すれば、51パーセントの支持をる、と予測されているのだが、そうなった場合はエルドアン大統領は、落選するということだ。ギュル氏は元首相のダウトール氏とも、何度と無く話し合いをしているし、両者は公職離脱後には、比較的頻繁に意見交換をしていた、と言われている。

 エルドアン大統領は野党側候補者には、あらゆる方法で圧力をかけ、立候補取りやめをさせるつもりであろうし、もしそれでも立候補した場合には、物理的な圧力をかけるかもしれない。選挙の投票結果についても、既にいろいろな説がささやかれている。

 エルドアン大統領は前回の選挙同様に、在外トルコ国民に投票の機会を与えることになるが、そのためにヨーロッパ諸国を歴訪し、選挙のための集会を企画している。しかし、前回の選挙では、ほとんどのヨーロッパの国々が、選挙運動の大集会を、許可しなかったと記憶するのだが、今回はどうなのであろうか。

 もし、ヨーロッパ諸国が選挙前の大集会を、許可しなければ、エルドアン大統領は激しい非難の言葉を、ヨーロッパ諸国に向けることになろう。それでは、トルコをますます孤立させることになるのだが。

 しかし、これだけエルドアン大統領に対する、非難の声が高まっている中でも、野党各党は連立候補を立てる、合意に至れないのであろうか。何やらトルコ人の狭い料簡が、見えるような気がするのだが。

 野党全党が結束すれば、確実に過半数を超えて得票できよう。それは内外からも認められ、たとえエルドアン大統領が勝利したと言っても、それは認められまい。それができないのでは、エルドアン王朝、ネオ・オスマン大帝が誕生するということなのだが。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:23 | この記事のURL
NO:5087   4月26 『アメリカはシリアから撤退するのか』 [2018年04月25日(Wed)]
アメリカのトランプ大統領は、シリアから早急に撤退したい、と何度と無く言っている。しかし、それに反対する動きは、アメリカ国内には少なくない。シリア撤退に反対する人たちに言わせれば『膨大な軍事費を費やしてシリアに駐留し、IS(ISIL)の掃討をしていたのに、いま引き上げたのではIS(ISIL)が再度復活してしまい、派兵の成果が消えてしまう。』と語り『アメリカ軍がいま引いたのでは、何の経済的なメリットも手にすることが出来ない。』と不満を述べている。

確かにそうであろう、現在アメリカ軍が駐留しているのは、マンビジュでありそのすぐそばには、エルズールの油田があるのだ。アメリカにとってはそこを手放すことは、大きな損失であり、しかも、北シリアから撤退してしまえば、当初のシリアへの軍派遣の目的であった、イラク・シリア経由のペルシャ湾海底ガスの輸送は、不可能になる確率が高いのだ。

トランプ大統領に言わせれば、クルドの軍事組織SDFに、大量の武器を無償で援助して、アメリカ軍の代役をやらせるから、大丈夫だということであろう。しかし、アメリカ軍が抜けた後のSDF
の実力は、それほどではなかろう。あくまでもバックにアメリカ軍がいるために、SDFは軍事力をいかんなく,発揮できていたものと思われる

ロシアはアメリカ軍のシリアからの撤退をせせら笑ってる。ロシアはアメリカ軍のシリアからの撤退はあり得ない、と予測しているのだ。同じ様にイランも、アメリカ軍のシリアからの撤退は、あり得ないと判断している。

アメリカ軍がシリアから撤退することが、これほど信じられない理由は、アメリカの経済的メリットや、軍事的成果の維持だけではない。実はアメリカ軍がシリア国内に留まることは、イスラエルの安全に大きく寄与しているのだ。

イランがシリアのアサド体制を支持し、軍を派兵しているが、シリアのイスラエルとの国境に、彼らは陣取っているのだ。加えて、レバノンのヘズブラもシリアとイスラエルの国境にある、ゴラン高原のそばに陣取っているのだ。

 トランプ大統領はアメリカ大使館を、テルアビブからエルサレムに移転し、全面的にイスラエルを擁護するように見えるのだが、今後もそうするのであれば、シリアからアメリカ軍を撤退させるわけにはいくまい。アメリカの利益を最優先するトランプ大統領が、もしシリアから軍を引くことになれば、それは大きな対イスラエル政策の変更を意味しよう。

  確かに、トランプ大統領はネタニヤフ首相の対ヨルダン川西岸での、入植に腹を立ててもいる。彼はネタニヤフ首相に対して、和平をやる気があるのかと迫っている。そうしたトランプ外交の大転換は、間もなく見えてこよう。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:50 | この記事のURL
NO:5086 4月25日 『シリア反体制派交渉トップが語る』 [2018年04月23日(Mon)]
*シリアの反体制側交渉者代表である、ナスル・ハリーリ氏が次のような意見を、述べている。『アメリカはシリアから早急に、軍を撤収すると言っているが、アメリカのIS掃討作戦は、まだ完了していない。』と語り、シリアでの戦いは砂のなかを歩き回るようなものであり、ISはここで叩いても、また他の場所で顔を出してくる。アメリカがIS掃討を第一重点事項としても、それは無理だというのだ。*

*ナスル・ハリーリ氏は政治的解決以外に、シリア問題を終わらせる方法は無い、と語っている。そして、その政治解決とは、アサド大統領を外すことだ、とも語っている。なぜならば、アサド大統領には軍事解決しか考えが無く、政治交渉をする気が無いからだ、ということだ。*

*そして、政治解決の基本はロシアとアメリカが、合意することであり、それに先立って話し合うことだ、としている。それは相当困難な交渉となろうということだ。*

* 確かにロシアはシリアに2015年以来、軍を派兵しているが、軍事力だけでシリア全土を、コントロールすることは出来まい。従って、ロシアも政治解決に頼るしかないのだ、ということになろう。**サウジアラビアや他のアラブ諸国、例えばエジプトやヨルダン、アラブ首長国連邦などが、アメリカの要請によりアメリカ軍に代わる軍として、シリアに派兵するということなのだが、それはどの国も本音では望んではいまい。*

*アメリカはミリシア・グループに、武器を与えることも止めるべきだ。アメリカが本気でアメリカ軍の、シリアからの撤収を望むのであれば、アメリカは方針を変えなければならない、ということになる。*

* 確かに・ナスル・ハリーリ氏の言う通りであろう。だがそれも、そう簡単には前進しない、ということも事実だ。*
Posted by 佐々木 良昭 at 22:03 | この記事のURL
NO:5085     4月24日   『聖なる月ラマダンはどうなるのか』 [2018年04月23日(Mon)]
今年もラマダン(断食月)が始まる。今年は5月17日がその開始の日になった。エジプトの日本で言う天文台がラマダンの始まりの日を,発表したのだ。

このラマダンの月は約1か月続くが、各家庭では沢山の御馳走を作り、家族や友人親せきと、楽しむのが習わしだ。

その一年で一番楽しいはずのラマダン月を、今年はどう過ごすのであろうか。シリアの難民はラマダンをエジプト、ヨルダン、レバノン、トルコ、そしてヨーロッパ諸国で、迎えることになろう。一部はシリアに戻り始めているが、そこが安定して安全になったとは、言い切れない。

薄氷を踏むような気持でシリア難民は、帰国しているのだ。彼らがシリアに帰っても、大御馳走を準備することはできまい。

イスラム諸国は世界の動向と同じように、経済的には苦しい状況にある。従って、今年のラマダンは、少し質素なものになるかもしれない。

それでもいい、平和な状態さえ実現してくれれば。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:36 | この記事のURL
NO:5084 4月23日 『リビア・ハフタル将軍の危篤状態と今後』 [2018年04月22日(Sun)]
リビア東部の実質的トップであったハフタル将軍が、危篤状態に陥っている。これは4月5日にヨルダン病院で治療不可能とされ、フランスの病院に移送されたことで、明るみに出てきていた。

このフランスの病院というの、実は分けありというか、とんでもないところのようだ。外国の要人が重病になった場合に、担ぎ込まれることで知られ、内部からは全く情報が漏れない、仕組みになっているようだ。病院名はヴァル・デ・グラス・ホスピタル、フランス軍直轄の病院なのだ。

ハフタル将軍の病状は、極度のアルツハイマーと言われ、加えて、呼吸困難とも伝えられている。また脳梗塞説も流れている。フランスの病院にはハフタル将軍の家族と彼の右腕といわれている、アウン・アル・フィルジャーニ氏が付き添っている。(一部では既に、ハフタル将軍の死亡説も流れている。)

ハフタル将軍の功績は、混乱するリビア国内で、旧カダフィ派やイスラム原理主義者、部族などを統合することに成功し、外敵をベンガジから排除したことであろう。またベンガジを拠点とする、アウラーキ部族も抱き込みに、成功したことにあろう。その後、ハフタル将軍はベンガジを中心に、経済再建を図り、他部族も抱き込んでいっていた。

 ハフタル将軍の後釜に誰が座るのかということが、現時点での最大関心事となっているが、先に述べたハフタル将軍の右腕であるアウン・アル・フィルジャーニが有力であり、次いでアブドッサラム・ハ−シ、軍人のマブルーク・サハバーン、イドリス・マーデイ、アブドッラージク・アルヌズーリなどの名前が挙がっている。

 そして、ハフタル将軍の子息ハーリド・ハフタルの名前も、浮かんできている。彼はアブドルラージク・アルヌズーリと共に、特別部隊を構成していた。

 東リビアの状況はといえば、ベイダ地域はバラエーサ部族が支配し、トブルク地区はオベイダート部族が支配している。これらの有力部族がハフタル後を、狙っていることは容易に想像が付こう。東リビアではこのほか共和勢力を、アワーギル部族が支持している。

 西リビア政府のセラジ首相は、ハフタル将軍が病気で倒れたことにより、力を増しているようだ。セラジ首相は今年末までに選挙を実施し、彼の地位を固めることが予測される。そのためにはハフタル派の、抱き込み工作も行われるであろう。

 そうした動きのなかでは、東リビアを押さえている、アブドッラージク・アルヌズーリの力を、軽視するわけにはいかなそうだ。いずれにせよ、いまの段階ではまだリビアの今後は、見えていないということであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:11 | この記事のURL
NO:5083 4月22日 『中東短信』 [2018年04月21日(Sat)]
毎日中東のサイトを10数箇所見ているが、これといったニュースが無い日も少なくない。そうした日は、なんか損をした気分になるのだが、世の中が落ち着いている、証拠でもあろう。そうした日には、その日出たニュースで、これから問題になりそうなものや、詳細が報じられていないものを拾って、中東短信としてお送りしている。今日は以下のようなニュースが今後大事になっていくかも知れない。

:トルコ経済悪化

 トルコの外貨獲得の手段は、述べるまでもなく輸出だが、トルコは高度な工業製品を造って、輸出するレベルには達しておらず、外国、例えば日本の企業が車の組み立てをやっているのを、輸出するといった具合であろう。後は軽工業品が主であり、観光などだ。

 それ以外に、トルコが外貨を得ているのは、外国からの借り入れであり、もう一つは不動産の販売だ。イスタンブールのボスポラス海峡に面した側は、風光明媚であり外国の金持ちが、高級マンションや一戸建てを、買っているのだ。

 しかし、その高級家屋の外国人への売れ行きが、下がってきているようだ。トルコ政府の発表によれば、その傾向は3月からめいかく顕著に、なっているということだ。もちろん、トルコ国民の不動産購入の割合も、下がっている。つまり、トルコの不動産建築業界は冬の時代を、迎えているのかもしれない。

 加えて、トルコではトルコ・リラ安が影響してか、インフレが昂進している。庶民の生活が苦しくなってきている、ということであろう。これは早められた大統領選挙に、影響を及ぼすものと思われる。それがもっと進んだ場合は、トルコ国民のエルドアン大統領に対する、支持が下がることから、与党AKPは選挙を来年から、今年に早めたのだ。


:エジプトはアメリカ軍の代理派兵拒否

 アメリカは出来るだけ自国民の犠牲を減らそうとして、世界で展開しているアメリカ軍の代わりに、それぞれの地域の国々の軍隊を使って、アメリカの支配を続けようとしている。トランプ大統領は『アメリカ軍を早急にシリアから撤退させる。」と言ったが、それではまさに力の空白が、シリアに生じてしまい、混乱が生まれよう。

 そこでアメリカが考えているのは、シリアにエジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などの軍隊をシリアに派遣して、その穴を埋める作戦だ。いわばこれらの国々は、アメリカの命令に従って、傭兵を出すということだ。

 エジプトはこれに対して、自国軍のシリアへの派兵は拒否する、と言い出している。そこには同じアラブの国同士という感情があり、シリア軍やシリアのミリシアと戦うような状態には、なりたくないということであろう。

 ただそのエジプトの対応に対して、アメリカは経済的圧力を、掛けてくることは必定であり、エジプト国内でテロを起こし、観光産業にダメージを与えることも考えよう。従って、アメリカの要求に対する『ノー』は、エジプトにとっては、極めて危険なことでもあろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:09 | この記事のURL
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