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NO4518 4月20日 『アメリカのシリア攻撃はISを利するだけ』 [2017年04月20日(Thu)]
今月の初旬に、アメリカ空軍はシリアの空軍基地を、攻撃した。しかし、その成果はIS(ISIL)
対応には、何の役にも立っていない、というのがロシア側の反応だ。結局は、アメリカの攻撃は何時も、IS(ISIL)に有利な条件を、生み出している、というのだ。

4月7日に行われたアメリカ空軍による、シリアのシャイラト空軍基地への攻撃は、国連が認めたものではなく、単なるアメリカ軍の暴挙に過ぎなかった、とロシアのメドベージェフ氏は議会で、報告している。

しかも、アメリカ空軍によるこの攻撃は、国際法に違反するものでもあった。ロシアのメドベージェフ氏は『今後何が起こるかについては分からないが、今回の攻撃は、結果的に、IS(ISIL)を有利にするものであったことは、確かだった。』と語っている。

『アメリカによるシリアへの攻撃は、いままで常にシリア政府側を、助けるものではなく、IS(ISIL)を有利にする効果しか、生み出し来ていない。』ともメドベージェフ氏はコメントしている。

メドベージェフ氏は重ねて『アメリカが好むと好まざるとに関わらず、シリアのアサド体制は、法的に正当なものであり、アメリカの攻撃はシリアそのものを、破壊する危険なものだ。』とも語った。

シャイラト空軍基地に対する、アメリカ空軍の攻撃の根拠は、これに先立つ、4月4日に起こったハーン・シャイクーンに対する、シリア空軍による化学兵器攻撃への、報復であったとされ、欧米諸国はそれに賛同している。

しかし、シリア政府はこの攻撃に、全く関与していない、と反論している。シリア政府の説明では、IS(ISIL)などが隠れているビルに、攻撃を加えたところ、そこには化学兵器があり、被害が発生したのであり、シリア側には責任がない、ということだ。

メドベージェフ氏はハーン・シャイクーンの出来事は、アメリカなどによって、綿密に練り上げられた計画だった、ということになる。アメリカが正しいのかロシアが正しいのかは、時間が正確な答えを出すことになろう。ただ、シリアは国連や世界の圧力で、既に全ての化学兵器を2013年頃に破棄しており、所持していないはずだ、だからこそ、シリアのムアッレム外相は『化学兵器はトルコから、テロリスト側に提供されたものだ。」と語ったのであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:56 | この記事のURL
NO4517 4月19日 『イラン外相ペルシャ湾岸黒海ルート開発提案』 [2017年04月19日(Wed)]
中東地域の人たちは、巨大なプロジェクトが、好きなようだ。歴史的にも、その傾向が強く、巨大な遺跡があちこちに存在し、その規模は日本人には、考えもつかないようなものだ。

トルコのエルドアン大統領は、幾つもの巨大プロジェクトを進めたが、同様にイランも巨大プロジェクトの推進を、考えているようだ。イランのザリーフ外相がグルジアを訪問し、経済協力会議を行ったが、その場でザリーフ外相は、ペルシャ湾岸と黒海を結ぶルートを、開発しようと提案している。

ザリーフ外相に説明するところによれば、ペルシャ湾岸と黒海とを繋ぐ、ルート(道路)が完成すれば、輸送コストを大幅に軽減できるし、地域諸国間の関係も、よくなる、という事のようだ。

イランは持てる文化的資産も、関連諸国に提供したい、と望んでいる。イランは既に、キルギスやトルクメニスタンとは、陸路が繋がっており、これにグルジア、アゼルバイジャン、アルメニアなどを加えたい意向だ。



『トルコ各地で投票結果に抗議デモ』

トルコ各地では、今回の新憲法をめぐる国民投票の結果に、抗議するデモが起こっている。現段階では、その規模は場所によって異なるが、3〜400人程度のようだ。デモの様子をライブで伝える、トルコのテレビを見た。

デモ参加者は『エルドアンはドロボーだ!』『エルドアンは人殺しだ!』と叫んでおり、このデモを支持する家の人たちはマンションのベランダに立ち、フライパンなど食器をスプーンで叩いて支持している。

他方、アメリカのトランプ大統領は、エルドアン大統領に投票結果の勝利に、祝意を伝えたが、すぐにアメリカ政府は『これはあくまでも投票結果への祝意であり、決して投票を認めるものではない』と釘を刺している。

ヨーロッパ諸国も同様で、今回の投票結果には、大きな不満があるようだ。エルドアン大統領は投票結果が出たすぐ後『死刑復活』を語っているのだ。ヨーロッパが送った投票監視委員会の、報告が近く出るだろうが、その後には欧米から、エルドアン大統領非難の声が、上がるものと思われる。

トランプ大統領次いで、投票勝利に祝意を送ったのは、プーチン大統領だけであろうか。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:02 | この記事のURL
NO4516 4月18 日 『トルコ僅差の勝利と難問山積』 [2017年04月18日(Tue)]
エルドアン政権は僅差で新憲法国民投票に、勝利することが出来た。述べるまでもなく、それはごまかしの結果であり、僅差の勝利は政府が創った偽物だ。投票用紙の偽物がはびこり、投票委員会はそれを認めろ、と政府から指示されていた、と語っている。

投票所には『イエス』の印鑑が置いてあり,イエス・ノーのどちらにその印鑑を押しても、結果はイエスということになる、という仕組みだった。ノーを支持するとして、イエスの印鑑をノーに押せば、それはイエスとカウントされる、という仕組みだったのだ。多くのノーの投票は、無効とされもしたし、数もごまかされているのだ。

 与党AKPは『イスタンブールを制した者はトルコ全てを制する。』と豪語していたらしいのだが、結果は全く逆で、AKPはイスタンブールで惨敗している。イスタンブール内の地区別では、ベシクタシ地区でノーが83パーセント、カデキョイ地区では80・2パーセント、バクユルキョイ地区では77・42パーセントがノーに回っているのだ。

当然のことながら、ヨーロッパ諸国が派遣した投票監視委員会は、クレームを付けたが、これに対してエルドアン大統領は『出しゃばるんじゃねえ』とすごんでみせている。しかし、それは彼に対する欧米の印象を、ますます悪くするだけであろうと思うのだが。

問題はこれからだ。トルコ国内では既に、クーデターや大衆蜂起の話が出ている。国民は当然黙ってはいないだろう。トルコの経済状態が良ければそうでもないだろうが、経済は相当悪化しているようだ。投票後にトルコ・リラは値上がりしたと政府は言うが、それは事実ではない。

以前は1ドルに対して、3リラ程度だったものが、3・8リラ程度まで下がり、その後3,6にまで値を戻したが、投票後は3・7以下に下がり、その後3・7を挟んでの上下が続いている。従って、投票後にトルコの通貨は安定し、経済が改善する方向にある、という政府の見通しは嘘だ。

いまトルコの失業率は、過去でも最低であろう。青年層の失業率は遂に24・5パーセントを記録し、農業部門以外の失業率は、全体で15・2パーセントンに上昇している。しかも、トルコの人口はどんどん増えているのだから、この悪化傾向はますます、高進していくことであろう。

トルコ政府の経済無策の結果、トルコ政府はいま53・2億ドルの、予算不足に直面している。この赤字を是正するには、予算を大規模カットするか、エルドアン大統領が強引に進める、ばかげたメガ・プロジェクトを止めるか、大金を外国から借り受けるしかあるまい。

以前ならサウジアラビアやカタールなどの、アラブ湾岸産油諸国から、簡単に借りられたであろうが、今はそうもいくまい。産油諸国も石油やガスの値下がりで、いまは苦しい台所事情にあるのだ。

あの石油によって、金満国家になったサウジアラビアですら、アラムコの株を一部手放し、ついには外国銀行(イスラム・ボンド)から、90億ドルを借り入れる方針だ。さあどうしますか、エルドアン大統領殿。打つ手はなさそうなのですが。ヨーロッパの投票監視委員会の報告が出れば、欧米諸国は一斉にエルドアン非難に、回るだろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:28 | この記事のURL
NO4515  4月17日 『エルドアン破れたり・まかり通る投票結果のごまかし』 [2017年04月17日(Mon)]
*4月16日はエルドアン大統領にとって、最もグレイな日であった、というかブラックな日であったろう。新憲法の是非を問う国民投票で出た結果は、全くエルドアン大統領の期待とは、異なるものだったからだ。*

*政府は51・41パーセントが改憲賛成であり、反対派48・59パーセントという結果を発表したが、誰もこの政府の出した投票結果を、信用していない。与党に最も近いMHPの幹部女性議員ですら、52パーセントが改憲に反対票を投じた、と語っている。*

*クルドのHDP党は56・2パーセントが改憲反対であり、43・8パーセントが改憲支持、CHP党派54パーセントが改憲反対で46パーセントが改憲支持という判断だ。*

*政府は多分改憲反対票であったのであろう200万票を、無効投票とした。また、政府の正式な投票用紙とする印鑑を、押していない投票用紙が、多数投票箱から発見されているが、各地の選挙管理委員会は、政府の命令でそれも正式な票とし、認めるよう命令があった、と語っている。*

今回の投票の後、アメリカ政府は問題があった、今後の推移を見続けたい、という内容のコメントをしたようであり、アメリカはヨーロッパン投票監視委員会が出す結論を待つ、とも語っている。ヨーロッパでは著名な議員や学者が、揃って今回の投票は信用できない、ごまかしだった、と非難している。

イスタンブールのベシクタシュ広場には、多数の市民が集まり、『政府は殺人者だ。』『政府はドロボーだ。』と叫んでいるということだ。

政府というかエルドアン大統領は、今回の投票結果が出た後、政府が発表する結果を信用させるために、当初60パーセントほどの支持に、ごまかそうとしていたのを、51・41パーセントに抑えたのであろう。僅差であれば国民も外国も、投票結果の発表を信用する、という計算に基づいたものであろう。

しかし、それにしてもエルドアン大統領にとっては、今回の結果はショックであったようだ。当然彼が得意満面でやるはずの、投票結果祝勝集会に、彼は出ないと言い、暗い表情と言葉少ない様子を、テレビで放映されている。

今回の投票結果の特徴は、全ての大都市で、エルドアン大統領が敗れたことだ。イスタンブールでもアンカラでも、イズミールでもアンタルヤでも、アダナでもデヤルバクルでも、エスキシェヘルでも、7対3あるいは6対4の比で敗北しているのだ。

このことは、今後の地方選挙に影響が出て、与党AKPつまりエルドアン大統領の政党は、地方議会でも連立を組まなければならなくなった、という事だが、今回の結果は、それを不可能にするのではないのか。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:03 | この記事のURL
NO4514 4月16日 『イランの大統領選挙』   [2017年04月16日(Sun)]
*イランでは5月に、大統領選挙が行われる。そのため、大統領立候補届け出が、始まっているが、立候補予定者は1400人を、越えそうだということだ。しかし、最終的には、適格者の判定が下され、その数は一桁になるのであろう。*

そのなかで、いまのところ注目を集めているのが、3人の候補者であろう。現職の大統領ロウハーニ氏、保守派のエブラヒム・ライーシ氏、そして、元大統領のアハマド・ネジャデイ氏だ。*

アハマド・ネジャデイ氏以外は、宗教職出身者で、イランでは氏ではなく、師を付けるのが普通だ。あるいはそれは勝手に、日本のマスコミが付けているのかもしれないが。*

さてこの選挙で誰が当選するのか、を予測する上では、3候補の置かれている状況を、少し調べる必要があろう。ロウハーニ氏は国民の間では、あまり評判が悪くない、どちらかといえば穏健派のイメージで、受け止められているようだ。

ロウハーニ氏が最高指導者のハメネイ師と、時折意見の不一致があり、不仲説が流れてもいる。そのため、次回選挙ではハメネイ師が、ロウハーニ氏に代わる候補を、支持するのではないか、といわれている。

そのロウハーニ氏に代わる候補と思われるが、エブラヒム・ライーシ候補だ。彼は宗教職者であり、56歳の裁判官でもある。極めて保守的な考えで、ハメネイ師にべったりの人物、と見られている。

その事は、エブラヒム・ライーシ氏を革命防衛隊も、支援する可能性があろう。革命防衛隊はハメネイ師礼讃で、権力を拡大してきているからだ。しかも、国内を保守色の強い大統領が統治すれば、革命防衛隊の利益が拡大する、ということであろう。

ただ、彼の保守的な考え方を、国民が支持するかというと、そうでもなかろう。イラン国民はもっと自由になりたい、とほとんどが考えているわけであり、これからさらに、イスラム法で締め付けられることを、望んではいまい。

最後のアハマド・ネジャデイ氏だが、彼はハメネイ師に大統領選挙に、立候補するなと言われ、それを一旦は受け入れていたのだが、土壇場で立候補を宣言した。明確なハメネイ師に対する、裏切り行為であり、ハメネイ師は激怒していることであろう。

アハマ・ネジャデイ氏の反イスラエル発言は、つとに有名だが、実際はそうでもないようだ。イスラエルのイラン専門家のなかには、彼が大統領になる方が、イスラエルにとってプラスだ、という考えを述べる者もいる。

問題は、選挙活動がスムーズに展開され、投票結果が正しくチェックされ、それがそのまま公表されるか否かが問題だ。革命防衛隊が力を振るい、投票結果を改ざんするようなことになれば、外交問題に疎いライーシ氏が当選する可能性は、高まるだろう。それはイラン国民にとって、地獄の日々の始まりとなろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 09:43 | この記事のURL
NO4513 4月15日 『MOAB使用はアメリカの北朝鮮核攻撃訓練』 [2017年04月15日(Sat)]
*MOAB(爆弾の母)なる新型爆弾が、アフガニスタンで使用された。この爆弾の正式名称は、B61-12というのだそうだ。述べるまでも無く、それを実施したのはアメリカ軍だ。このMOAB使用について、日本ではあまり関心が、払われていないようだが、アメリカと敵対関係にある、イランは敏感な反応を示している。*

イランに言わせると、これは核弾頭投下の訓練実験だった、ということだ。非常に重い核弾頭をF-16に搭載し、目的地まで運び、それを正確に投下することが出来るかを、試したというのだ。MOABは核弾頭に指摘する重量と、サイズを持っている、ということであろう。*

アメリカ軍はこのテストで、レーダー・システム、発火コントロール・システム、ロケット・モーター、兵器コントロール・コンピューター、そして核兵器搭載の航空機が、正しく運搬出来、核爆弾を投下できるか、ということを調べたというのだ。*

* 現在、アメリカが軍事的に、最も緊張関係にあるのは北朝鮮だが、アメリカは真剣に北朝鮮への、核爆弾投下を検討しているのかもしれない。*

*イランに言わせると、2016年1月に、北朝鮮が水爆の実験をした直ぐ後、アメリカは核爆弾搭載が可能な、トライデントU-Dミサイル4発を、太平洋に沈む潜水艦から、発射テストしているというのだ。*

もし、北朝鮮が近い将来、核実験を再開すれば、アメリカはその核爆弾で、北朝鮮がアメリカを狙うことを、目的にしているとして、先制攻撃をかける可能性は、きわめて高いということであろう。

もし、北朝鮮がアメリカによって核攻撃を受ければ、その影響が日本にも及ぶ、ということを考えておく必要が、あるということだ。第一に考えられることは、アメリカの核爆弾あるいは、攻撃された北朝鮮の核施設から、大量の放射能が日本に飛んで来る、ということだ。

アメリカによる核爆弾攻撃が、北朝鮮に対して行われれば、大量の難民が北朝鮮から韓国に逃れ、韓国からは日本に大量の難民が、押し寄せる可能性が、高いということだ。その緊急事態への対応策は、日本には無いだろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 09:31 | この記事のURL
NO4512 4月14日 『米攻撃で毒ガス散乱シリア死者100人以上出る』 [2017年04月14日(Fri)]
どうも真実か否かは判断しかねるのだが、シリア軍の発表したところによれば、水曜日夜半に、アメリカ軍がシリアのデルズ−ル近郊の街に、空爆を加えたところ、そこにあった毒ガスがケースから漏れて、数百人の死者が出ているということだ。

この毒ガス兵器はIS(ISIL)や、アルカーイダにつながる組織が、隠匿していたものだという説明が、シリア軍によってなされている。

もし、このシリア軍の発表が事実であるとすれば、シリア政府が反論していた『攻撃したビルに、化学兵器が隠されていたために、化学兵器の被害が出たのであり、シリア軍は化学兵器を、使用していない。』という説明が証明されることになろう。

常識的にはこのシリアの主張を支持したい。ロシアはこの立場に立っており、国連会議で強硬に意見を述べ、シリア制裁決議に拒否権を行使している。

アサド大統領も化学兵器による、犠牲児童の写真について反論し、『子供たちは何処で殺されたのか知らない。』と語っている。つまり、子供たちは他の場所で殺されて、運び込まれたのか、あるいは死んだふりをしているのか、と言いたいのであろう。

これまでも、何度となく死んだ子供の写真が報道され、それは実は演技だった、という事がばれている。被害の現場にはいち早、ホワイト・ヘルメットという名の慈善組織が入り込み、支援活動、救援活動をしているが、実は、このホワイト・ヘルメットはアメリカの情報機関と、繋がっている組織だ、とも言われている。

そうであるとすればアサド大統領が主張するように、いくらでも写真は捏造できるということだ。

真実がどうなのかについては知りえない。しかし、確実に犠牲者は出ている。しかも飛行機からの攻撃では、惨状はパイロットには分からないし、その映像は権力者たちに、血の臭いを伝えはしないのだ。

それがますます犠牲を多くしているのであろう。そしてそれは金のためであり、決して正義のためでも、人道のためでもない。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:27 | この記事のURL
NO4511 4月13日 『アメリカの幾つかの発言と化学兵器』 [2017年04月13日(Thu)]
アメリカのトランプ政権は、自分たちがやっていることが、どういうことなのかを、正確に把握しているのであろうか。どうもそう思えないような気がするのだが、それは私の勘違いであろうか。

最近になって、アメリカのトランプ大統領は『シリアに立ち入る意図はない、ただ化学兵器の使用を許すことができないだけだ。』といった発言をしている。しかし、その化学兵器なるものが、シリア軍機によって投下されたのか、攻撃を受けたビルのなかにあったのかは、トランプ大統領は分かっていないのではないか。

アメリカ軍が説明するままに、シリア軍の空爆で化学兵器が使用された、と考えたのではないのか。ロシアに言わせれば、化学兵器はテロリストたちが攻撃を受けたビル内に、隠匿していたという事であり、シリアのムアッレム外相に言わせると、その化学兵器はトルコがテロリストに、提供したものだということだ。

最近になって出てきたのは、シリアが空爆した後、そこに何者かが、化学兵器を持ち込んで、散布したのではないか、という説だ。いずれが正しいかは分からないが、ロシアにしろ、アメリカにしろ、自国の立場を擁護する説を、立てていることは確かだ。

最近、その化学兵器はサリンだとか、ソロンだとかといった説が、トルコから言われ始めているが、そのことはシリア軍が使用した、という証拠にはなるまい。そもそも、シリア政府は2013年の時点で、全ての化学兵器を放棄しているのであり、そのことは国連が認めているのだ。

もちろん、その後にシリア政府が化学兵器を、再開発したということも、考えられるが、それは採算に合わないのではないのか。しかも、今回のシリア軍攻撃の前の状況は、国際社会がアサド政権の残留を認める方向で、動いていたし、IS(ISIL)など反政府側テロリストとの戦闘も、有利に運んでいた。

どう考えてもその状況を、不利にするような行動を、シリア政府が採ったとは、思えないのだが。答えは常識による判断が、一番正しいと思うのだが、あなたの常識ではどういう判断になるのか、お聞きしてみたいものだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:20 | この記事のURL
NO4510 4月12日 『エルドアン始まった投票への不正』 [2017年04月12日(Wed)]
エルドアン大統領は絶対的優位で進められる、と思っていた憲法改正国民投票で、どうも自分の思惑とは違った結果が、出そうだという不安を、抱き始めたのであろうか。ここに来ておかしな動きを、始めている。

まず彼が以前所属していた、リファー党のスローガンを引きだし、宗教色の強いイメージを、今回の国民投票に利用しよう、とし始めている。それは『AKPに罪を負わせないでください、我々の苦しみを軽くしてください。』というコーランの一節を、改造したスローガンだ。

当然のことながら、リファー党の幹部はエルドアン大統領が、勝手にリファー党のスローガンを改変して、宗教色を出したことに反発している。何やらなりふり構わない、作戦のような感じがするのだが、それだけエルドアン大統領は、焦っているのかもしれない。

述べるまでもなく、投票結果は政府によって改ざんされ、多くの国民が憲法改正を支持した、とするであろうが、あまりにも事実とかけ離れていた場合には、社会混乱が起こる、危険性があるのだ。

既にアメリカの元DIA(国防情報局)トップは『選挙後に戦争は起こらないが、紛争は起ころう。』と予測している。それだけ微妙な状況が、いまのトルコでは生まれ始めている、という事であろう。

もうひとつ、エルドアン大統領が仕掛けたことは、『投票箱を既定の場所から、他の場所に移動させた。』という事だ。これはトルコの南東部で起こり、この地域はクルド人が多数派を、占める地域だ。

普通に投票が行われれば、トルコ南東部全体では、38540人のクルド人有権者がおり、103の投票箱があるが、その投票の80パーセントがクルド支持だということだ。つまり、80パーセントの票が反新憲法に回るということだ。

投票箱が移動させられた街は、ベルデ、ジュデイ、ギュルテペ、ギャプ、ペトロール、ラマン、トルメルチュ、セイトレル、ペトロルケント、フズルといった街だ。そこの15か所の投票箱が他の場所に移されたというのだ。

その結果、投票者は新しい投票箱が、何処にあるのか分からなくなったり、投票所が遠くなり過ぎて、投票に行くのが困難になったりする、ということだ。賛成票を投じる住民には、政府がバスをチャーターして、投票所まで送り届けてくれ、投票しやすくすることは、以前にも行われている。

昨日はトルコ人の友人の誕生パーテイに招かれ、皆で投票結果の予想をした。一番結果から遠い者は、ケバブを皆にご馳走する、という約束だ。多分トルコ政府を全く信用していない、私の予測が一番投票結果に近く、トルコ人の怒りと蜂起を信ずる者の、予測が一番遠いだろう。これでケバブがタダで食えるという事だ。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:11 | この記事のURL
NO45009 4月11日 『トルコ・サバ―紙の意外な報道』 [2017年04月11日(Tue)]
トルコのサバ―紙は、エルドアン体制べったりの、提灯記事を連発している新聞だ。従って、その記事の内容はエルドアン体制支持の、バイアスがかかっており、鵜呑みにはできない、と思いながら眺めている。

ところが、そのサバ―紙が意外な記事を掲載したのだ。曰く『レジェップ・タイイブ・エルドアンは、彼が死刑を実施することになれば、最初に絞首刑になる、人物となるだろう。』

実はこの記事はアメリカの元国防省のアドバイザーであった、ミシェール・ルービン氏のツイートでの書き込みを、取り上げたものだ。

しかし、サバ―紙はその後慌てたように、ミシェール・ルービン氏はエジプトのクーデターを擁護し、民主的に選出されたモルシー大統領を追放した、アブドルファッターハ・シーシ大統領を支持している人物だ、と評している。

また記事のなかで、このミシェール・ルービン氏はフェトッラー・ギュレン氏(エルドアン大統領がクーデターの黒幕と呼び、アメリカに引き渡しを、執拗に迫っている人物)を擁護している人物でもある、とも書いている。

問題はこの記事が、発表されたタイミングだ。4月16日にはエルドアン大統領が強行突破を図る、新憲法をめぐる賛否を問う、投票日が控えているのだ。そのまさに直前に『エルドアンは最初に絞首刑になろう。』とは極めて危険であり、意味深長な内容であろう。

この記事を読んだトルコの国民や、記事の内容を耳にした、トルコ国民のなかには、多数の反エルドアンの立場の人たちがいる。この記事は彼らに少なからぬ影響を、与えることになろう。

一見、エルドアン大統領を擁護し、ミシェール・ルービン氏批判のように見えるこの記事は、トルコ社会のなかに動揺を、呼び起こすためのものではないか、と思えてならない。

サバ―紙に限らず、トルコのマスコミはエルドアン体制下で、完全に自由を奪われ、政府の御用マスコミに変貌していた。それに逆らうマスコミは潰され、ジャーナリストは多数が、逮捕投獄されてきているのだ。

しかし、サバ―紙はトルコを囲む内外の、状況に変化を認めたのであろうか。トルコ国民の間でも、欧米でも、エルドアン批判が強くなってきたことを察知し、サバ―紙は玉虫色の、報道をしたものと思われる。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:03 | この記事のURL