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NO4456 2月18日 『イスラエル・パレスチナは2国家か1国家か』 [2017年02月18日(Sat)]
*大分前からあった話なのだが、ここに来て再度話題に上り始めている。それはイスラエルとパレスチナの問題を、どう解決するかということだ。*

*一つの考えは、国連などが中心になって、進めようとしている、イスラエル、パレスチナの二つの国家を、設立する解決法であり、イスラエルはそれを望んではいないが、パレスチナ側はそれを強く希望してきている。*

*もう一つの考えは、イスラエルとパレスチナを一つの国家にしてしまおう、という考えだ。そうすれば、エルサレムの帰属問題も消えてなくなり、イスラエルにとっては敵性国家が、誕生しないということだ。*

*そもそも、いまの段階でこの二つの案が、再度話題になったのは、イスラエルのネタニヤフ首相が訪米し、トランプ大統領と話し合った結果、出てきたものだ。トランプ大統領は『2国家樹立だけが選択肢ではない。』と語ったのだ。つまり、イスラエルとパレスチナが、一つの国にまとまってもいいだろう、という考えなのだ。*

喜んだのはネタニヤフ首相だった。彼はパレスチナ国家が、イスラエルに隣接して誕生すれば、その国家はイスラエルの敵国となり、事態は悪化すると考えているからだ。

しかし、2国家にしない場合、イスラエル国民となったパレスチナ人は、やがてイスラエル国民(ユダヤ人)よりも多くなり、パレスチナ人がその国家の政治的、イニシ ャアチブを握るようになり、イスラエルはパレスチナ人の支配する国家、になりかねないのだ。

このパレスチナ人人口の増加は、大分前からイスラエルの頭痛の種であり、最近ではそれが、より明らかになってきているのだ。そうしたなかで、イスラエル国籍を持ち、イスラエルの議会クネセトの議員になっている、テイビ氏(パレスチナ人)は、イスラエルとパレスチナが1国家になった時には、自分が首相になる、と言い始めている。そのテイビ氏の発言は、極めて現実的なものなのだ。

イスラエルとパレスチナの問題を解決するには、いずれかの形でパレスチナ人を、満足させなければならないのだが、1国家にしても2国家にしても、それはイスラエル側にとって、極めて危険なものなのだ。

そこで出てきたのが、エジプトのシナイ半島北部を、エジプトがパレスチナに与えることにより、そこにパレスチナ国家を創る、という考えだ。もちろん、これはエジプト政府が全面的に反対している。このことを言い出したのは、ムスリム同胞団出身のモルシー氏だが、彼が大統領の時代に言い出したことなのだ。

この話の根拠と思われるのは、ガザがかつてエジプトの支配下にあった、ということから来ているのだ。イスラエル側にしてみれば、以前のようにガザはエジプトが責任を持ち、ヨルダン川西岸地区はヨルダンが支配するのが、いいということであろう。そして、その場合は、これら両国がイスラエルに対して、安全の保証をするということなのだ。

しかし、エジプトもヨルダンも、そんなお荷物は背負いたくあるまい。結局のところ、パレスチナ問題は、多くが語られ、何も生み出さないで時間が過ぎていく、ということであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:18 | この記事のURL
NO4455 2月17日 『中東短信エジプト・トルコ・湾岸』 [2017年02月17日(Fri)]
:エジプトはエネルギー大国になるとイギリス

つい最近、イギリスが経済ミッションをエジプトに送ったが、そのメンバーのなかには、イギリス4大企業のうちの、2企業も参加していた。これらの企業はエネルギー部門で活動しているが、エジプトを訪問するのは、今回が、初めてのことであった。

イギリスはエジプトの、エネルギー生産国としての可能性を、高く評価しており、ガス生産は現在、日産44億キュービック・フィートだが、2017年末までには15億キュービック・フィート増産される、見通しだということだ。そして、2019年までには日産55億から60億キュービック・フィートキュービック・フィートまで、増産されようという見通しだ。(数字が合わないが原文の通り)


:トルコ与党AKPの幹部が新憲法選挙で敗北なら内戦と語る

トルコの与党AKPのマニサ地方幹部は、もし、4月16日の新憲法国民投票で、与党はこの新憲法に対する賛成票が、50パーセントに満たない場合、それを敗北とみなし、内戦を仕掛けるつもりだ、と語ったとされている。

このことで、オザン・エルダン・マニサAKP副代表は、辞任する羽目になった。彼は発言内容が間違って理解された、と弁明している。しかし、実際は彼が語ったとされている通りであり、エルドアン大統領は新憲法支持投票で、敗北した場合は強硬手段を、採るつもりでいるものと思われる。

オザン・エルダン氏は与党AKP内部の、幹部の間で語られていた秘密の話を、うっかり公の席で語ってしまった、という事ではないのか。


:トランプ大統領湾岸諸国のアメリカ離れに不安

イランのロウハーニ大統領が、アラブ湾岸のオマーンとクウエイトを訪問した。その甲斐あって、これまでアラブ湾岸諸国に存在していた、イラノホビア(イラン脅威論)が解消されたようだ。

オマーンは最初の招待国であり、以前からイランとは良好な関係を、維持してきており、これまでイランとアラブ湾岸諸国との、橋渡し役を果たしてきていた。クウエイトもまた最近、イランとの関係を修復しよう、と努力してきていた。

結果的に、ロウハーニ大統領のオマーン・クウエイト訪問は、大成功に終わったが、そのことでアメリカのトランプ大統領は、アラブ湾岸諸国とアメリカとの関係が、疎遠になることを、懸念し始めている。

トランプ大統領はイランを、核問題で追い込みたい、と努力しているさなかだ。従って、イランの脅威を一番感じている、アラブ湾岸諸国がアメリカを支持してくれるか否かが、重要なカギとなっているのだ。なお、ヨーロパ諸国は押しなべて、イランとの関係正常化を、進めようとしている。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:31 | この記事のURL
NO4454 2月16日 『イスラエル・パレスチナ2国家解決はあり得ない』 [2017年02月16日(Thu)]
イスラエルのネタニヤフ首相が、アメリカを訪問した。そのなかでは、2国間関係が話し合われ、イスラエルはアメリカからのより一層の、支援を期待したことであろう。同時に、現在混沌としている入植地問題と、その先にあるイスラエル・パレスチナ問題の解決についても、話し合われた模様だ。

このネタニヤフ首相の訪米を機に、パレスチナ自治政府側も動きだし、公平なイスラエル・パレスチナ問題の、解決を訴えている。パレスチナ自治政府のエレカト氏は、100年前にイギリスのバルフォア卿が進めた、パレスチナの地の分割と、その後のイスラエル国家の建国について、不当なものであるとした。

そのうえで、その後に国連が採決した2国家、つまりイスラエルとパレスチナ国家の共存に、修正する責任がイギリスにはある、と言い出している。そして、その両国の国境は、1967年に決められたラインに、すべきだと訴えた。

このエレカト氏の主張を、ネタニヤフ首相は無視し、現状を進めるつもりだ。つまり、問題解決を無視して入植を進め、既成事実としての、イスラエル人によるパレスチナの土地の収用を、進めるということだ。

アメリカのトランプ大統領の考えはどうであろうか。彼は一見、イスラエルにもパレスチナにも組しない、という感じではあるが『2国家の樹立だけが問題解決の道ではない。』と語っている。(トランプ政権の考えでは、パレスチナ国家ができれば、その後、新たな武力闘争が展開される、ということを懸念しているのだ。)

つまり、民主的なイスラエルにパレスチナを併合させ、双方を『1国家2制度』にするという考えのようだ。これは中国と香港のような関係であろうか、あるいは全く異なる、関係になるのであろうか。この考えすらイスラエル側には、受け入れられまい。それは、パレスチナ側の人口増加が、イスラエルにとって、将来の脅威となるからだ。

1国家2制度になれば、イスラエルが優位に立つことは目に見えている。パレスチナ側はイスラエルの資金を当てにするようになろう。また、1国家2制度のもとでは、パレスチナ側に送られる援助金も、減ることになるのではないか。それはい、まだに多くのムスリム諸国が、イスラエルを毛嫌いしているからだ。

結局のところ、ネタニヤフ首相の訪米で、2国家の話が出ては来たが、イスラエル・パレスチナ問題には、何の改善も進展も生まれなかった、ということではないか。そして、イスラエルは安心して、今後も非合法な入植を進め、時間が経ったところで、それを合法と認めるという手法を、採るのであろう。

ネタニヤフ首相はアメリカで、うまいことを言っている。イランはイスラエルにとって脅威であり、核開発を進め、長距離ミサイルを開発し、イスラエルを攻撃する危険性がある。パレスチナはそのイランと良好な関係にあり、なかでもガザのハマースのイランとの関係は強い。よってイスラエルはパレスチナに、一歩も譲るわけにはいかない、と言っているのだ。そのことにトランプ大統領も同感であろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:39 | この記事のURL
NO4453 2月15日 『トルコはシリア北部一帯を領有の意向か』 [2017年02月15日(Wed)]
トルコのエルドアン大統領は、シリアの北部地域アルバーブでの、勝利が近いと語っている。ここを落とせば、あとは他の地域を落とすことも、容易になると考えているようだ。それは、シリア北部地域全体とトルコとをつなぐ、幹線道路がアルバーブを通過しているからだ。

トルコ軍がアルバーブを抑えてしまえば、IS(ISIL)が首都と言ってきた、ラッカの攻略も容易であろうし、マンジブも自動的に落ちる、という事であろう。そうなれば、シリア北部で他にはこれと言った、要衝はなくなるということだ。

このシリア北部を占領してしまえば、ほぼ4〜5千平方キロメートルの地域を、トルコは支配することになるらしいが、トルコにはその土地をシリアに返還する気は、無いのではないか。

トルコのエルドアン大統領は、これまで安全地帯の設立を、何度となく訴えてきているが、それもシリアの北部地域にということだ。この安全地帯を創設するという事は、その管理が難しいことから、半ば永久的にトルコはその安全地帯を、支配することになる、という事であろう。

シリア北部に安全地帯を創設することについては、アメリカがやや前向きではあるが、ロシアは困難であることを強調している。外敵の攻撃から安全地帯を守るためには、そこに治安維持のための軍隊を派遣し、駐留させなければならないし、その軍隊を守るためには、重装備をさせる必要も出て来よう。

加えて,航空攻撃もありうるので、戦闘機や監視のための飛行機を、飛ばすことになろうが、そうなると、その飛行機を守る手だても、必要になろう。つまり、安全地帯や人道的理由という、甘い言葉でこの安全地帯の創設を、現実のものにしていくことになると、相当の負担が関係諸国には、かかってくるという事なのだ。

トルコは領土的な野心と、トルコ国内にいるシリア難民の、一部追放を考えて、安全地帯を創りたいのであろうが、ロシアやアメリカには、安全地帯を創設することは、何のメリットも無いのだ。

アメリカは出来るだけ、自国軍を投入したくない、と考えていることから、現実にこの安全地帯設立となれば、トルコがその多くを、負担せざるを得なくなろう。エルドアン大統領はかつての、オスマン帝国の住民たちを守る、という大義前提で大宣伝をするだろうが、その費用はばかになるまい。

トルコの現在の経済状態は、極めて悪いのに、そのような負担を背負うことになれば、トルコの経済はますます悪化するだろう。エルドアン大統領にすれば、業者から難民施設を創ることで、賄賂を受け取るつもりであろうが、トルコ国民には大迷惑であろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:17 | この記事のURL
NO4452 2月14日 『勝負ありかバグダーデイとIS』 [2017年02月14日(Tue)]
イラク空軍による猛爆撃で、IS(ISIL)の幹部13
人が死亡した、という報道がなされている。その死亡者のなかにバグダーデイが含まれていたかは、いまだ不明だが、少なくとも重傷を負っているだろう、という情報が流れている。

今回IS(ISIL)がイラク空軍によって、空爆されたのはシリア国境に近い、カーイムという街の一軒家でのことだった。そこで、IS(ISIL)
の幹部たちによる、モースルの状況や今後に向けた、バグダーデイの後継者問題などについて、討議する幹部会議が、開かれていたということだ。バグダーデイもこの会議に参加すべく、ラッカから駆けつけていた、と言われている。

カーイムでの戦闘は激しいものであり、イラク地上軍とIS(ISIL)との間でも、日曜日から月曜日にかけて、6時間にも及ぶ銃撃戦が起こった。IS(ISIL)
側は外部の友軍に対して、支援を求めたようだが、何処からも支援の戦闘員は、集まってこなかったということだ。

IS(ISIL)側の17台の車両が破壊され、50
人の戦闘員がこの戦いで犠牲になった。そのなかには司令官のアブ―・アヌワルも含まれていた。また戦闘の後には、大量の軽,
重武器が放置され、戦車も放置されていた、ということだ。

IS(ISIL)
側としてはモースルを放棄し、シリアへの移動を本格的に、進めようとしていたのであろう。しかし、イラクからシリアに抜ける幹線道路は、イラク側によって、ほぼ制圧されているようだ。

バグダーデイの死亡か負傷かについて、イラク軍が明かしていないのには、種々の理由が考えられる。単純な理由は、そのことが分からないため、ということになるが、他の幹部の死亡は確認し、名前も明らかにしていることから、バグダーデイについてのみ、情報が無いはずはない。

バグダーデイが死亡したか、重傷を負った、ということになると、イラク軍や合同軍のなかに、心のゆるみが発生するかも知れない。当分は世界の関心を集めることも目的として、バグダーデイの死傷については、明かさないほうがいい、ということかもしれない。

いずれにしろ、イラクではIS(ISIL)の戦闘能力は、ほとんど尽き果て、戦闘員は逃げ腰になっていることは、明らかなようだ。その分、多数のIS(ISIL)
の戦闘員の、シリアへの移動も予測されることから、シリアの今後は危険度を、増すかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:48 | この記事のURL
NO4451 2月13日 『バグダッド・グリーン・ゾーンの戦い』 [2017年02月13日(Mon)]
*イラクの首都に、グリーンゾーンと呼ばれる地域がある。ここはアメリカ軍が多数駐留する頃に、造られた地域だったと思うが、今ではイラク政府の官庁ビルや、外国の大使館、国際機関の事務所に加え、要人の居住区になっている。*

当然、このグリーンゾーン内部は住環境が、バグダッドの他の地域に比べて、格段に恵まれている、ということであろうし、治安もいい状態にある。従ってバグダッドの一般市民にしてみれば、羨望の眼差しで見られる地域、ということになる。*

そうしたことから、市民に不満が高まると、このグリーンゾーン地域に対する、抗議デモが行われている。その意味では必ずしも、安全地帯とも言い切れないのかもしれない。*

今回はシーア派の巨頭、サドル師が扇動するデモが、グリーンゾーン地域に向かって行われた。もちろん、地域そのものには人格があるわけではないから、グリーンゾーンに対するデモということは、政府に対する抗議のデモであったわけだ。*

イラクはいまIS(ISIL)の占領と暴力支配の時期が、終わろうとしており、国内の平和が直ぐそこに、迫っているはずだ。それにもかかわらず、グリーンゾーンへのデモが起こり、しかも死傷者が出ているということは、何故であろうか。*

グリーンゾーンへのデモで7人が殺害され、174人の負傷者も出ているということだ。警官もこのデモの中で1人が殉死している。*

今回のサドル派の怒りは、主に元首相のマリキー氏に、向けられたものであり、カチューシャ・ロケット弾に加え、銃器やナイフも持ち込まれたようだ。従って、警察側も当然、それを阻止できるだけの装備が必要であり、死傷者が多数出たということであろう。

こうした大規模な衝突が起こったということは、言葉を変えて言えば、イラクがIS(ISIL)との戦いの時期から、次の段階に入った、ということではないのか。つまり、今回のグリーンゾーンに対するデモと衝突は、次の段階でサドル派がどのような権益を、得ることが出来るのかにかかっている、ということではないか。

同じようなことがリビアでも起こっており、リビアにはいま三つの政府が、鼎立状態にあるということだ。アラブ世界での政治的な衝突の裏には、常に権力闘争があり、その権力闘争の裏にはいつも利益が存在する。言ってみれば、グリーンゾーンに対するデモは、経済行為の一種だ、ということではないのか。
Posted by 佐々木 良昭 at 09:01 | この記事のURL
NO4450 2月12A日 『リビア二つの新たな不安』 [2017年02月12日(Sun)]
リビアはいま二つの新たな不安を、抱えることになっている。ミスラタを拠点とするミリシア軍団は、リビア国内にあって最も精強な武闘組織として、知られてきている。シルテに陣取ったIS(ISIL)を粉砕し、シルテから追放したのは、彼らの軍団が中心だった。*

しかし、その褒賞はリビア統一政府からは、十分受けていなかったのであろうか。ここに来て、彼らミスラタ軍団はトリポリに入り、世俗派、政治組織、部族集団は相手にせず、外交機関や政府をガードすると語っている。*

リビア・ナショナル・ガードは砂漠に逃げ込んだ、IS(ISIL)を打倒することに、専念すると息巻いている。そして、リビア・ナショナル・ガード(LNG=リビア国民防衛組織)なる組織を、設立すると発表した。*

リビア・ナショナル・ガードは、リビア統一政府を支持するとも、しないとも言っていないとしているが、リビア統一政府はリビア・ナショナル・ガードに対して、シルテ奪還の後、何の褒賞与えておらず、リビア・ナショナル・ガードは資金的に、窮地に陥っているようだ。*

このリビア・ナショナル・ガードには、もう一人のトリポリ地区のリーダーである、カリーファ・グエイルのメンバーも加わっている。こうした状況は、今後、リビアを困難な状態に、追い込んでいくものと思われる。*

国連が組織し支援している、 リビア統一政府のセラジ首相は、未だに大統領警備隊の設立も出来ず、外交使節や政府施設の、ガード体制も組めないでいる弱体だ。*

このリビア・ナショナル・ガードに加え、IS(ISIL)もトリポリ南東部に陣取り始め、虎視眈々とトリポリ奪取の機会を、狙っているようだ。最初に彼らがやるであろうトリポリ作戦は、電力網の切断や、水供給施設の破壊であり、トリポリ住民の間に、混乱を呼び起こすことであろう。*

しかし、こうした状況の中でも、リビア統一政府はアメリカの航空支援無しには、対応の仕様がないと弱気だ。アメリカの支援無しには、IS(ISIL)と軍事的に対峙することは出来ない、ということのようだ。確かに、シルテ攻略時も、アメリカの支援があって、初めて可能となっていた。*
Posted by 佐々木 良昭 at 11:43 | この記事のURL
NO4449 2月12日 『トルコISに絡む2つのニュース』 [2017年02月12日(Sun)]
*トルコのエルドアン政権は、IS(ISIL)を支援いている、と言われてきているが、実際はどうなのであろうか。トルコがIS(ISILの戦闘員の、自国領土通過を認めていることは、公然の秘密であり、武器を提供していること、サウジアラビアやカタールからの、資金援助の中継国となっていることなどは、世界的に知られている。*

加えて、エルドアン大統領の実子ビラールが、IS(ISIL)の盗掘石油を商っていることも知られている。これはロシアが摘発し、タンクローリーを空爆して、一躍世界的に知られるようになった。*
*
今回のことは、これらとは別のトルコとIS(ISIL)が、敵対関係にある話だ。2014年にイラクのモースルにある、トルコ領事館がIS(ISIL)の攻撃を受けることが、警告されていたが、トルコ政府は何の手立ても、しようといなかった。*

エルドアン首相(当時)は『ISがそんなことを、トルコに対してすることはあり得ない。』と全面否定していたが、実際には領事館襲撃事件が起こり、49人のスタッフは101日間に渡って、領事館に閉じ込められることになった。*

その後、彼らが解放されてトルコに戻ると、ダウトール外相(当時)はこれを、政治ショウに利用している。ダウトール外相は事件が起こる20時間前に『全ての手は打ってあり、外交官の安全に問題はない。』と語ってもいた。*

実はこの領事館襲撃と占拠の以前に、トルコ領事館側からは、状況が非常に危険であり、支援が必要だという連絡を、16回も送っていたのだ。しかし、アンカラのトルコ政府かららは、何の返答も無かった、と当時の領事は語っている。

領事は当時のことを振り返り『もし私が殺されていたら、私のミスだったと政府は、私を非難していただろう。』と語っている。

もう一つのスキャンダラスなニュースは、イスタンブール市のスルタンベイ地区に、IS(ISIL)
の子供たちの学校が、設立されているということだ。学校は無償で教育を施しており、子供たちには、証書なども与えられている、ということのようだ。

その学校では、トルコの一般的な課目も教えられている。法の問題、軍事面では徴兵義務、そしてケマル・アタチュルクについても、教育されている。つまり、このIS(ISIL)の学校を出た後、この子らが何時の間にか、トルコ国民になっていることも、十分ありうるということではないのか。

オスマン帝国の時代には、周辺諸国から子供たちが集められ、教育され、立派な軍人に育て上げられていたが、ネオオスマン帝国のスルタンを自称する、エルドアン大統領は同じことを、IS(ISIL)の子供たちに、期待しているのであろうか。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:57 | この記事のURL
NO4448 2月11日 『エジプトがトルコ新憲法を解説』 [2017年02月11日(Sat)]
*中東諸国の中で、一番憲法や諸規定など法律に明るいエジプトが,4月16日に投票が行われる、トルコの新憲法草案を検討し、解説している。必読の要ありということなので、その要点をご紹介することにした。*

エジプトの専門家の解説によれば、新憲法は大統領権限を、拡大するものだということだ。つまり、エルドアン大統領が絶対的な権限を、有するようになる、ということなのだが、支持者たちはフランスやアメリカと、同じようになるだけだ、と擁護している。*

改正される新憲法の草案18項目によれば、大統領は閣僚人事を掌握し、直接指名できるようになる。また副大統領一名ないし数名を、指名することが出来る。最近ではユルドルム首相が、実質的な権限を失っている。*

現在施行されている憲法は、1980年に起こったクーデターの後、1982年に定められたものだが、それには裁判権の独立が記されている。しかし、新憲法では大統領が裁判に、直接関与することが、出来るようになる。*

大統領と議会は、最高裁の4名の判事を指名できる。また、軍事法廷はかつてメンデレ大統領を、死刑に処したが、新憲法では軍事法廷は、その権限を持たなくなる。*

非常事態宣言は革命が起こった場合、暴動が発生したか、国家が危機に瀕した場合のみ認められる。*

大統領は非常事態宣言の発令に対し、議会の承認を得る必要がある。また非常事態の期間は、出来るだけ短いものとする。しかし、非常事態宣言の期間は6ヶ月となり、現行の期間よりも12週間延長される。その後、大統領の要請により、4ヶ月の延長が可能となる。*

国会議員の数は現行の550人から600人に増加され、参政権は25歳から18歳に引き下げられる。また議員の期間は4年から、5年に延長される。*

*
大統領職に就く者は、トルコ国籍を有し、40歳以上とする。また特定の政党に所属することが求められる。現行では大統領は、特定の政党に所属しないことになっている。*

新憲法では大統領職は5年の期間で、2度まで可能であり、エルドアン大統領が大統領に就任したのは、2014年であることから、2029年まで、その職に留まれるということになる。*

これではまさに、スルタンの権限をエルドアン大統領は、新憲法の発布で手に入れる、ということではないのか。それに歓迎の投票をするのか、反対の票を投じるのかは、4月16日の国民投票で明らかになろう。*
Posted by 佐々木 良昭 at 10:40 | この記事のURL
NO4447 2月10日 『露機誤爆でトルコ兵死傷』 [2017年02月10日(Fri)]
シリアの北部アルバーブで、ロシア軍機の誤爆により、トルコ兵2人が死亡、11
人が負傷するという事故が起こった。これは純然たる事故だったようだ。ビルの中にいたトルコ兵が、ロシア機によって空爆されたのだが、そのビルをロシア側は
IS(ISIL)の拠点だ、と勘違いしていたようだ。

ロシアのプーチン大統領は、即座にトルコのエルドアン大統領に電話を掛け、陳謝している。このことは、ロシアがトルコとの関係を、いかに重視しているかということの、あらわれではないかと思われる。

2015年11月に起こった、トルコ機によるロシア機撃墜事件のときは、トルコ側が即座に謝罪することは無く、半年たった翌年2016年6
月に、エルドアン大統領がプーチン大統領に、電話を入れて詫びている。

現在の段階では、ロシアとトルコとの関係は極めて良好であり、ロシアとトルコはイランを含めて、シリア問題の解決にカザフスタンのアスタナで会議を開いているし、シリア国内の軍事作戦でも協力し合っている。

ロシア機による誤爆は、あまりトルコ国内では、問題化しないだろうが、シリア派兵の軍人の犠牲者が増えていることは、今後トルコ国内で、別の観点から問題化していく可能性はあろう、現段階で
69人が死亡しているのだ。

今回のロシア軍機による誤爆で、負傷した兵士の数は11
人だが、兵士の一人は重傷のようなので、あるいは彼は死亡するかもしれない。もし彼が死亡する様なことになれば、それでトルコ兵の戦死者は、70
人に達することになる。

そうなると、トルコ国民の間にシリアへの戦争介入の、是非が問われるようになるかもしれない。アメリカのトランプ大統領は、アルバーブはもとより、シリアのラッか作戦で、大きな期待をトルコ軍に寄せている。

つまり、アメリカは自軍兵士を犠牲にしないで、トルコ兵を犠牲にして、勝利しようと考えているのではないか、ということだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 08:51 | この記事のURL