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NO3260 『ガザ戦争とユダヤ人の収支決算』 [2014年08月16日(Sat)]
ヨーロッパに居住するユダヤ人の間で、今回のガザ戦争を挟み、いろいろな意見が出てきている。誰もが感じているように、今回のガザ戦争は簡単に言って、イスラエルがやり過ぎたのであろう。イスラエル軍が膨大な爆弾を、ガザに投下することによって、多数のビルが破壊されただけではなく、多くのパレスチナ人が死傷したからだ。

このため、ヨーロッパ諸国ではイスラエルに対する、非難の声が拡大し、加えて、ヨーロッパに居住するユダヤ人に対し『お前たちはイスラエルを優先するのか、それともいま居住し、帰属している国を優先するのか。』という問いかけを始めている。

そればかりではない『お前たちはヨーロッパの価値観で生きているのか、それともイスラエルの価値観で生きているのか。』とも問いかけられている。つまり、ヨーロッパ社会にあって、ユダヤ人は異端だと考えるヨーロッパ人が、増えてきているということだ。

ヨーロッパ社会はこのところ、次第に右傾化し、民族主義的傾向が、強くなってきており、選挙でもそれが顕著に顕れ出している。そのことは、今回のガザ戦争で、イスラエル・ユダヤ人が見せた、独善的な正義感に対する、強い反発を生み出してしまったようだ。

こうしたことから、ヨーロッパなかでもフランスに居住するユダヤ人は、将来への不安を強めているようだ。彼らの多くがイスラエルに移住することを、強く望むようになっているのだ。

フランスがユダヤ人にとって、安住の地ではなくなってきているのは、北アフリカなどからの、イスラム教徒の移民が大幅に増加していることも、原因の一つであろう。このところ、ユダヤ教の協会シナゴーグや、ユダヤ関連施設に対するテロが、頻発するようになってきているのだ。

それはフランスばかりではなく、程度の差はあるものの、ヨーロッパ全体に言えることのようだ。このため、ヨーロッパのユダヤ団体の幹部の間から『ヨーロッパは既にユダヤ人にとって、楽園ではなくなった。』『ヨーロッパでホロコーストが再度起ころう。』という悲観的な考えが、広がり始めている。

ヨーロッパで広がる反セム(反ユダヤ)
の動きを警戒し、自分がユダヤ人であることを隠したり、ユダヤ・コミュニティとの関係を、絶つ者も出てきている。しかし、そんなことをしても、反セムの波が大きくなっていけば、ユダヤ人は洗い出され、被害を受けることになろう。それはホロコーストの悲劇を生んだ、ドイツでの経験から分かりそうなものだ。

ヨーロッパの政治家やインテリの、45
パーセント以上の人たちは、ヨーロッパに居住するユダヤ人のアイデンテティは、自分の帰属する国ではなく、イスラエルにあるとみなしているということだ。

回を重ねる毎に、右翼や民族主義的な政治家の、当選者数が増えるヨーロッパ社会は、ユダヤ人にとって本当に危険に、なってきているのであろう。であるがゆえに、イスラエルは彼らを受け入れるスペースの確保に
(ガザ地区やヨルダン川西岸地区の占領拡大と固定化)
、躍起にならざるを得ないのだが、そのことは同時に、ヨーロッパに居住するユダヤ人を、追い込んでしまう両刃の剣でもあるのだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:28 | この記事のURL
NO3259 『アメリカの空爆を恐れISのトップがシリアに逃亡』 [2014年08月15日(Fri)]
アメリカ軍によるイラク北部への猛爆を恐れ、IS(ISIL)
のリーダーであるバグダーデイが、イラクからシリアに逃げ出した、という情報が伝わってきた。この情報を明かしたのは、クルド自治政府の広報部門責任者である、サイード・マムゾーニ氏だ。

彼が明かしたところによれば、モースルにいたISのリーダー・バグダーデイは、アメリカ軍による空爆を恐れ、数日前に30
台の戦闘車両を連ねて、シリアに逃亡したというのだ。もちろん、シリアでもISは戦闘を展開することになろうことは必定だ。

最近、アメリカ軍の空爆支援を受け、クルドのペシュメルガ(軍隊)による、ISへの攻撃が激しくなり、多数のIS
戦闘員が、重傷を負っているということだ。このため、ISはモースルのモスクなどで、地域住民に呼びかけ、献血を求めているということだ。

現在、クルド自治政府の軍事部門であるペシュメルガには、アメリカを始めとし、フランス、イタリア、イギリス、フィンランド、カナダなどから武器援助が届いているということだ。その武器は重火器から軽機関銃まで、いろいろの種類に及ぶということだ。

何故いまの時期に、バグダーデイはイラクからシリアに、移ったのであろうか。アメリカ軍による空爆を恐れたことも、その理由かも知れないが、他に考えられる理由は、マリキー首相がほぼ首相職から、辞任せざるをえなくなったからではないか。

つまり、ISIL(IS)がイラクに侵攻した目的が、ほぼ果たされたからだ、とも考えられる。だからいま、IS
は、今度はシリアのアサド体制を打倒するのだ、ということで、シリアに移動して行った、というのが本当のところかも知れない。

その推測が正しければ、これから当分の間、シリアの戦闘は激化することになろう。それにアサド大統領側が、どれだけ防戦、反撃できるかが、これからのポイントであろう。

ただ、シリア国民も間でも、国民意識や国家意識が、今回の内乱のなかで、強まったのではないかと思われる。それがIS
やヌスラの攻撃に対して、十分に反撃できる精神的な強さを、もたらしているのではないかと思われる。また、ロシアもシリアに対する武器の供与を、必要に応じて行うことは確実であろう。

そうした一連の事情は、IS
に支援をしてきた国々には、伝わっていたのだろう。だからこそトルコの防衛相が、早い時期のトルコ人人質釈放を、口にしたのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 01:18 | この記事のURL
NO3258『トルコ・ISIL昨日の友は今日の敵』 [2014年08月15日(Fri)]
この欄で何度も報告してきたように、トルコのエルドアン政権はいま、イラクやシリアで大暴れしている、IS(ISIL)の支援をしていた。最初の段階では、IS
への参加戦闘員の自国領通過を認めてきたし、武器のシリアやイラクへの搬入も、認めてきていた。

そればかりか、シリアやイラクの戦闘で負傷したISの戦闘員が、トルコ領内の病院で治療を受けるということも、行われてきた。つまり、IS
がシリアやイラクで猛威を振るえたのは、トルコの支援があってのことだった、ということになるのだ。

その辺の事情を、IS
の若手司令官が明かしている。彼の語るところによれば『我々はトルコからの武器の供与が必要だった。武器はトルコの国境を通じて、入手していたのだ。

IS
の幹部が負傷した場合トルコの複数の病院で治療を受けてもいた。戦闘が始まって最初の頃、ほとんどの戦闘員はトルコを経由して、戦場に到着していた、もちろん武器もその他の必需品も、全てはトルコ経由だった。』。

しかし、最近になって状況は変わってきたようだ。件の若手司令官が語るところによれば『イラクで強くなったために、トルコに頼る必要がなくなってきている。イラク国内で十分な武器を入手できるし、シリア国内でも買うことが出来るようになった。』ということのようだ。

この状況変化はこれから何を生み出していくのであろうか。イランの情報筋や軍事筋の分析によれば『トルコはフランケンシュタインを作ってしまった。』ということのようだ。つまり、トルコが支援して育てた
ISILは、トルコに牙を剥き始めた、ということであろうか。

トルコがISILを育てた裏には、このISIL
組織を使って、自国内のクルド撲滅を図りたかったからだ、と言われている。トルコは当初、シリアで誕生したクルド組織PYD (クルド民主連合等)
と、協力関係にあった。

シリアの内戦でPKK(クルド労働党)が、シリア国内に拠点を持つことを、危険視したからであろう。それでPYDと協力し、ISILも支援したということだ。
ISIL支援の秘密会議に、トルコが参加していたことや、軍事訓練を施していたことも、関係者の間では知られている。

これから先、アメリカ軍やイラク軍によって、ISがイラクで追い詰められていけば、IS
は多分トルコ領土を、逃避先と考えるのではないか。そうなれば、トルコはそのコントロールに、苦慮することになろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 01:02 | この記事のURL
NO3257『マリキー首相辞任後任はハイダル・アルアバデイ氏』 [2014年08月14日(Thu)]
イラクのマリキー首相が長期間に渡って、イラク首相の座に留まれたのは、イランの後押しがあったことと、それを土台にしたイラク・シーア派の支持があってのことだったろう。もちろん、彼をイラク・シーア派最高権威者である、シスターニ師も支持していた。

しかし、イラクは混沌状態から抜けないままに、長い時間が経過した、そのことに加えて、IS(ISIL)
のイラク国内における台頭は、イラク国民の多くに国内各派の連帯強化と、政治の変革の必要性を、感じさせたのであろう。

イラク国内に首相を交代させるべきだ、という考えが広がり、7月24
日にはイラク議会が、クルド人ベテラン政治家ファウード・マスウーミ氏を、大統領に選出した。それに先立ち、スンニー派の政治家サリーム・ジャブーリ氏を、国会議長に選出している。

なお、イラクの憲法では大統領職にはクルド人、首相職にはシーア派イラク人、そして国会議長にはスンニー派イラク人の中から、選出されることになっている。

続いて8月11
日、ファウード・マスウーミ大統領はシーア派の国会副議長であった、ハイダル・アルアバデイ氏を首相に任命した。ハイダル・アルアバデイ氏はこれから30
日以内に、新内閣を組閣しなければならない。

マリキー首相は今回の変革に不満であり、軍を味方にして首相の座に留まろうとしているが、その試みは成功すまい。それは、既にイラン政府が正式にハイダル・アルアバデイ氏の首相就任を、歓迎しているからだ。

加えて、欧米各国、シーア派最高権威者であるシスターニ師も、イラク国内の混乱を憂慮し、マリキー首相の辞任を求めていた。こうなっては、マリキー首相が寄って立つべき、支持者がいなくなってしまおう。

マリキー首相はイラクの混乱のなかで、よく頑張ったと賞賛されてしかるべきであろう。いまのイラクでは誰が首相になっても、国内の政治状況や治安状況を、安定化させることは出来まい。


マリキー首相の後任となるハイダル・アルアバデイ氏はイギリスに居住した経験を持ち、欧米とは通訳を挟まずに話し合えるかもしれないが、そのことと政治手腕は別であろう。

下手をすれば、欧米各国によって、いいように扱われてしまうかもしれない。イラクの今後は、アメリカ軍が増派され、国内政治に強く関与してくるものと思われる。新首相がイラクの独立性を、何処まで維持できるのか見ものだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 09:17 | この記事のURL
 NO3256  『ビン・ラーデンもあきれたISIL?』 [2014年08月13日(Wed)]
最近、デイリー・メールが掲載したとされる記事に、面白いものがあった。これはイスラエルのエルサレム・ポスト紙が伝えたものだった。

その記事によれば、ビン・ラーデンはISIL
の過激な手法に、嫌気が差していたというのだ。ご丁寧にも、そのことはビン・ラーデンがパキスタンの自宅で、アメリカ軍によって急襲され、殺害された折に見つかった書類に、そのことが書いてあったというのだ。

しかも、その上でこの書類はビン・ラーデン自から書いたものではなく、彼の補佐役が書いたものだ、とまで伝えている。

このような信じがたい記事が、何故今になって掲載されるのか?その裏には何かがあるのだろう。それが何かは分からない。もう少し先に行けば明らかになろう。

ただ、想像するにISILは、既に賞味期限を過ぎた、ということではなかろうか。国連でもヌスラ組織やISIL
に対して、寄付を行うことを禁止することが、討議され始めているようだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:51 | この記事のURL
NO3254 『エルドアン候補大勝利で終わったトルコ大統領選挙』 [2014年08月12日(Tue)]
8月10
日トルコで初の国民による、大統領直接選挙が実施された。その結果は、明確なエルドアン候補の勝利となった。エルドアン候補の勝利は確実視されていたが、選挙結果が出てそれが、より鮮明になった感じがする。

選挙の得票割合を各候補で挙げると、エルドアン候補が51・6パーセント、CHPが推薦したイフサニオール候補が38・5
パーセント、クルドから立候補したデミルタシュ候補は9・8パーセントに留まった。

各候補の得票地域を見てみると、明確にその区域が分かれている。エルドアン候補が得票したのは、アナトリアと呼ばれるトルコの中央部、アジア側の地域であり、イフサニオール候補が得票したのは、マルマラ海、エーゲ海、地中海に面した、海岸線の地域となっている。

そして、デミルタシュ候補が得票したのは、トルコ東部のクルド人居住地域となっている。それが完全なかたちに色分けされていることが、トルコの今回の選挙の特長であろう。よそ者の影響は受けないという、トルコ社会の極めて保守的な雰囲気が、伝わって来そうだ。

選挙には一部不正もあったようだが、総じてあまり大きな不正は無かった、と外国からのオブザーバーたちは、報告している。選挙前に1800
万枚の投票用紙が、何故印刷されたのかが、疑惑を呼んだことがあるし、今回の投票が終わった段階で、選挙管理人の一人が自分の持っていた投票用紙に、エルドアン候補の欄にマークして投票しようとして捕まっている。

選挙は初めから結果が分かっていた。大混乱の中にある中東地域の、トルコが今後直面する内外の問題は多かろう。そうした状況下では、強力なリーダーも必要であろう。その強力なリーダーの権限が、今回の選挙を経てより強いものになることは必定だ。それが今後トルコ社会を、警察国家にしていかないことを祈る。
Posted by 佐々木 良昭 at 09:24 | この記事のURL
NO3253『ムバーラク体制のH.アドリー 元内相が革命の裏を暴露』 [2014年08月11日(Mon)]
ムバーラク体制下で内相を勤めた、ハビーブ・アドリー氏が1月25日革命(アラブの春革命)
の、内幕を暴露した。その内容は、これまで一部の専門家の間で語られていたものと、ほぼ一致している。

アドリー元内相は2011
年のエジプト革命の裏には、アメリカの陰謀が働いていたと語った。彼の話によれば、アメリカは新中東計画を進めようとしており、その邪魔になるムバーラク大統領を、エジプト大統領の座から引きずり下ろした、ということのようだ。

アメリカは中東のリーダーたちに対し、民主化を進めるよう打診し、従えばしかるべきメリットも、与えると言ったようだ。もし、このアメリカの提案をアラブのリーダーが拒否すれば、アメリカは彼を独裁者として、非難するということだったようだ。

アドリー元内少の話で、もう一つの重要なポイントは、アメリカがアラブの若者にアプローチし、どうやって権利を獲得するかを、教えたことだ。どう民主化を実現するか、どうやって革命を成功するかを、教えたということだ。

アメリカはカタールその他のアラブの国で、若者たちを教育し訓練して、エジプトに送り返したということのようだ。そのなかには、4月6
日運動グループや、ムスリム同胞団、キファーヤ運動に参加した若者たちがいた、ということのようだ。

また、エジプト警察はエジプト在住のパレスチナ人に武器を与え、抗議デモ者に対して、発砲させ殺害させている。そのことは、当然の帰結として、ムバーラク体制と警察非難が巻き起こる、ということだった。

しかし、この件に関連して、アドリー元内相は抵抗運動が始まって以来、自身は警察に対して何の命令も、下していなかったと語っている。

アドリー元内少の話には幾つかの疑問点もあるが、大筋では正しいのではないか。オマル・スレイマーン情報長官の訪米後の死、革命が頂点に達した段階での、アメリカによるサーミー・アナーン・エジプト参謀長の呼び出しなど、疑問な点が多すぎるのだ。

何事でも時間の経過は、次第に真実を暴露してくれる。今回のアドリー元内少の発言も、その一部であろう。彼に次ぐ者がやがて現れ、また新しい秘密のページがめくられよう。
Posted by 佐々木 良昭 at 07:29 | この記事のURL
『モースル・ダム破壊は数百万人の死者を生む危険性がある』 [2014年08月10日(Sun)]
NO3252 8月13日 中東TODAY

『モースル・ダム破壊は数百万人の死者を生む危険性がある』

前の報告でも触れたが、いまIS(イスラム国家)が支配している、イラク北部の地域には、イラク最大のダムも含まれている。そのダムをIS
がイラク政府やアメリカとの交渉材料に使った場合は、想像も付かないような状況が、生まれる危険性がある。

アメリカ政府はヤズデイやクリスチャン、そしてクルド人たちがIS
によって攻撃され、危険な状態になっているということから、オバマ大統領は空爆を決定し、実施し始めている。その空爆が何時まで続くのかは、いまの段階では不明なようだ。

もし、しかるべき成果が上がらない場合には、空爆が当初の計画よりも、長期にわたる可能性もあろうし、攻撃範囲が拡大していくことも考えられる。そうなると、アメリカの空爆によって、これまで予測していないような結果が、出てくることもあろう。アメリカの親切は往々にして、象の親切
(親切にしているつもりが大きな迷惑を及ぼす)になる、可能性があろう。

アメリカの猛爆撃が続いた場合、IS側はイラク政府とアメリカを相手取って、モースル・ダムの破壊を交渉のカードに、使う危険性があろう。モースル・ダムは
1980年に建設され、モースル市の北側に位置しているイラク最大のダムで、貯水量は3兆バーレルあるということだ。

もし、このモースル・ダムが破壊されて、貯水が流れ出せば、モースル市では19
メートルの波を受けることになり、街はたちまちにして、その水に飲み込まれてしまうということだ。

同様に イラクの首都バグダッド市にも洪水がおし寄せ、バグダッド市は4・5
メートルの波をかむることが、予測されている。述べるまでも無く、そんな洪水になれば、バグダッド市は壊滅状態になろう。

モースル市にしろ、バグダッド市にしろ、他のイラクの都市にしろ、街は基本的には泥砂の地盤の上に、建設されているため、洪水が押し寄せれば、ひとたまりも無く崩れ落ちよう。しかも、建物の多くは鉄骨の少ない、ブロック建築であり土壁だ。

もう一つの危険性は、モースル・ダムが常に修理保全を、必要としていることだ。ダムのコンクリート壁にひびが入るため、それを常に修理していなければ、ダムが決壊する危険性があるのだ。アメリカの空爆範囲が広がり、モースル・ダムに近づいた場合、爆弾の爆発により地盤が揺れ、ダムにも影響が出るかもしれない。

イラクは2003年のアメリカ軍のよる侵攻以来、ダムの修理をキチンとしてきているとは思えない。そのことはIS
が爆破しなくとも、ダムが決壊する危険性が、高まっているということだ。ダムが破壊されれば、洪水の被害から生き残った、イラク国民の飲料水は無くなり、多数の国民が死亡する、ということも予想される。
Posted by 佐々木 良昭 at 09:22 | この記事のURL
no-title [2014年08月09日(Sat)]
NO3251 8月12日 中東TODAY

『トルコ・イラクは危険と幸運の背中合わせ』

トルコとイラクはいま危険と幸運の、背中合わせの状態にあるようだ。トルコにとってはいまアメリカが始めた、エルビル近くのIS(イスラム国家)
に対する空爆で、うまくいけばISの脅威が取り除かれ、クルド自治政府は安心して安定的に、石油をトルコに輸出することが出来よう。

しかし、ISに対するアメリカ軍による空爆は、ISがトルコに逃げ場を求める可能性があることと、自暴自棄になってモースルのトルコ人捕虜49
人を、殺害することも、ありうるということだ。

もし、ISがトルコ領に逃げ込めば、トルコ軍はしかるべき対応を、必要とすることになろうし、それは相当の被害が想定されよう。これまでのIS
の戦い方を見ていると、残虐のレベルを超えるものだからだ。そうなると、いかに勇猛果敢なトルコ軍でも、腰が引けるのではないか。

モースルで捕虜になっている、トルコ外交官と関係者は、トルコ政府の対応次第では、全員が殺害されることもありえよう。トルコ政府がIS
の戦闘員の、トルコへの越境逃亡を認めた場合には、無事に釈放されることもあろう。

トルコにとっていいニュースは、ヨーロッパ諸国がウクライナ問題をめぐり、ロシアに対し輸出規制をかけたことだ。このためトルコは嗜好品や食料品、なかでも農産品を大量にロシアの市場に、輸出することが出来るようになった。その額は
17億ドルに近いと報告されている。

イラクの場合は危険な要素は、述べるまでも無い。IS
による北部イラクの占拠が、大きな問題になっている。なかでも、イラク北部のモースルの北にある、イラク最大のダムが、IS
によって押さえられたことだ。イラク政府側がISの要求に妥協しない場合には、そのダムが破壊される危険性があるのだ。

そうなれば、イラクの諸都市は大洪水に見舞われ、一瞬にして破壊されてしまおう。以前、イスラエルがエジプトに対して、アスワン・ハイダムの破壊を警告したことがあるが、そのような前例を
ISが知らないはずは無かろう。

ダムの破壊が断行されなくても、ダムからの放水を止められれば、イラクの諸都市は断水状態となり、多くの国民が渇水状態に追い込まれ、死亡するということも起こりえよう。

イラクにとって幸運なニュースは、アメリカ軍がISに対し、空爆を始めたことだ。これによって、イラク軍はIS
との戦いで、優位に立てるかもしれない。しかし、怖いのはアメリカ空軍による、無差別空爆が行われることだ。そうなれば、死傷者はIS
ばかりではなく、一般市民も含まれることになろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:02 | この記事のURL
NO3250 『バハレーン怒る・そこまでやるかカタール』 [2014年08月08日(Fri)]

アラビア湾岸のバハレーン政府が、隣国カタールに怒りを露わにしている。それはカタール政府がバハレーンの国民に、国籍を与えているからだ。何故カタールがバハレーンの国民に、国籍を与えていのか。そして、何故それがバハレーン政府をして、激怒させているのか、という疑問が沸いて来よう。
実はバハレーンでは、反政府運動が始まって久しい。小さな島国の少ない人口の中で、大問題が起こっているのだ。その原因はシーア派国民とスンニー派国民との間に差別があるからだ、とシーア派国民は訴えている。
バハレーンの王家はスンニー派であり、結果的にスンニー派国民を優遇している。それがシーア派国民には許せないということだ。このシーア派の怒りの抗議デモが始まると、真っ先に飛びついたのが、カタールのアルジャズイーラ・テレビだった。同テレビ局は、バハレーンの反政府デモを、誇大に宣伝している、とバハレーン政府は考えている。
デモに参加するリーダー役のバハレーン国民は、逮捕され、投獄され、拷問を受けて、死亡した者もいる。そうなると彼等は、国外に逃亡を試みることになる。その主な行き先が、カタールだったのだということだ。
それ以外にも、カタールが大ガス生産国であり、豊かなことから、石油の枯渇したバハレーンを捨てて、カタールの国籍を取った方が、豊かな生活ができるということを狙った、バハレーン人もいるのだ。
もちろん、バハレーンの国籍を捨てたか、逃亡したバハレーン人たちは、バハレーンの王制非難の発言をすることになるが、それはバハレーンの王家にとっては、不都合であると同時に、不愉快極まりないことであろう。
もう一つの問題は少ない人口の、しかも、スンニー派とシーア派に別れているバハレーンにあっては、人口の減少はスンニー派とシーア派の、微妙なバランスを崩すことにもなるのだ。それは新たな社会問題を生み出す、原因になる。
カタールは何故こうまでも、バハレーン問題を始めとする、アラブ問題に関与したがるのであろうか。手法は違うものの、かつてのリビアのカダフィ大佐と、同じではないか。あるいはそれよりも、たちが悪いかもしれない。
バハレーンについて言えば、カタールはバハレーンがアメリカの第5艦隊の基地になっていることに、原因があるのかもしれない。つまり、湾岸諸国の中で、バハレーンは最も重要なアメリカの海軍基地になっているということだ。
カタールもアメリカに対して、軍事基地の設置を認め、大規模な基地がいまでは存在するが、何とか湾岸地域で、完全にトップの座を、占めたいのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:44 | この記事のURL