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NO5838 2月10日『トルコ・シリアの衝突を誰が止めるのか』 [2020年02月09日(Sun)]
シリア北部のトウカンと、イドリブに近い場所、サラーキブをめぐって、トルコ軍とシリア軍が、にらみ合いに入った。既に一部では銃撃を、交わしているとも伝えられている。問題はこれが何処まで、発展していくかだ。

加えて、これが本格的な戦闘状態に入った場合、一体誰がこれを停戦に持ち込めるのかも、関心の持たれるところだ。シリアにしてみれば、かつてはオスマン帝国の、版図に組み込まれ、現在ではトルコ軍が、あたかも自国領土でもあるかのように、シリア北部地域で動いている。

今回の戦いの激戦地である、イドリブ界隈から50万人のシリア難民が生まれ、彼らはトルコに向かって、避難している。この数は現在350
万人ほどいる、と見られているトルコのシリア難民の数を、一気に400万人台に、押し上げることになるのだ。

それはトルコの経済に、大きなマイナスとなろうし、トルコ政府の難民支援費用も、莫大なものとなろう、そうなれば、トルコの経済は壊滅的な状況にさえ、なりうるのだ。そうなるとトルコ政府は、このシリア難民をヨーロッパ諸国に、追い出すことを考えよう。シリア難民も出来れば、ヨーロッパに向かいたい、と考えているのであろう。

サラーキブでの戦いでは、どうやらトルコが雇い入れている、傭兵は機能していないようだ。もともと、彼らは金で雇われた者たちであり、命をかけては戦いたくあるまい。またその傭兵は、シリア人であることから、出来ればシリア人を殺したくは、ないのではなないのか。

これはトルコ側にすれば、大誤算であったろう。そうなると、傭兵が抜けた分をトルコ人の兵士で、カバーしなければならないことになり、トルコ兵の間に、多数の犠牲者が出ることが、予想される。

国連の報告によれば、昨年12月のシリア北部での戦闘勃発以来、この地域から58
万人の難民が、出ているということだ。述べるまでも無く、そのほとんどはトルコに向かった、ということだ。

国連の医療機関の診療所や事務所は、シリア北部では53箇所が閉鎖されているそうだ。戦闘が起こっているにもかかわらず、イドリブには300
万人が流れ込んでいる、と報告されている。それは食糧援助、医療援助などが、他のシリアの地域よりも、良いからであろうか、あるいはトルコへの逃亡経路に、イドリブがなっているからであろうか。

シリア軍はロシア軍の支援を受けており、ロシアは言わば当事者だ。従って、シリアが国家の名誉をかけて戦っている、トルコとの戦争を止めろ、とは言い難いだろう。トルコも強気のエルドアン大統領が率いている以上、刀を収めることはあるまい。

従って、今回のイドリブ地方での戦闘は、泥沼化する可能性が高いのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:10 | この記事のURL
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