• もっと見る
« 2015年08月 | Main | 2015年10月»
NO3897『エルドアン大統領選挙中止も選択肢に』 [2015年09月01日(Tue)]
6月7日に行われた選挙で、過半数を取ることができなかった与党AKP
は、野党との連立を組むことを強いられた。しかし、その裏ではエルドアン大統領が、この連立政権が誕生しないように、ダウトール首相に圧力をかけていたことも事実だ。

結果的には、ダウトール首相による野党との、連立工作は失敗に終わり、残された選択肢は、選挙のやり直しだった。そして、その選挙は11月6
日に予定されている。しかし、ここにきて、エルドアン大統領は次の選挙で、与党AKPは過半数を取り、単独政権に復帰するどころか、前回の得票数41
パーセントを、大幅に割り込み、35パーセントの得票もかなわないのではないか、と言われ始めている。

そうなると、エルドアン大統領は選挙を取りやめよう、と考え始めているということだ。トルコのタラフ紙は『エルドアン大統領は戦争を理由に、今回の選挙を取りやめ、
1年間ずらす考えだ。』と報じた。

述べるまでもないことだが、野党のCHPが次回の選挙で、第一党になれば、MHPやHDPといった野党と、連立を組む権利が与えられることになる。なかでもHDP
の躍進は目立っており、多分にAKPの大幅な後退が予測される。

こうしたトルコの政治動向に、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は大きな関心を持ち、記事を掲載している。それによれば、トルコ政府が進める、PKK
との戦争状態の中で、PKKの995人の戦闘員が死亡し、トルコ側も110人が死亡しているということだ。そして、治安部隊員が少なくとも、70
人以上死亡しているということだ。

エルドアン大統領にしてみれば、こうした状態は戦争であり、憲法78
条が認めるように、戦争時の選挙延期が合法になる、ということであろう。しかし、これはトルコ議会が決議して、その特例を発出した場合にのみ、あてはまることであり、エルドアン大統領の単独の、判断で行われた場合は、違法ということになる。

エルドアン大統領はPKKとの戦闘だけではなく、遅ればせながら、NATO やアメリカの要求に従い、 IS(ISIL)
への空爆にも、参加し始めている。加えて、PKK(クルド労働党)やIS(ISIL)
との戦いに、本格的に陸軍を投入すれば、完全な戦争状態になる、ということになのであろう。

時間の経過は早い。エルドアン大統領の悪魔の知恵が勝つのか、トルコの野党を始めとする、大衆の意向が勝つのか、残された時間は、極めて短いものであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:00 | この記事のURL
| 次へ