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NO3891『全てが狂いだしたエルドアンの作戦』 [2015年08月26日(Wed)]
どうやら、トルコのエルドアン大統領の作戦は、すべてが狂いだしたようだ。まず、11月1日の選挙に向けて必要な、暫定政府の結成に躓いているのだ。これが出来なければ、選挙に入れないのだが、野党のCHPやMHPが、与党AKPとの連立で、暫定政府に参加することを、拒否したのだ。

多分、エルドアン大統領のことだから、憲法を無視して強引に、AKP単独で暫定政府を作る、可能性があろうが、それはトルコ国民の間に、強い反発を生むことになろうし、トルコ国民の目には、エルドアン大統領の万能ぶりに、陰りがさしたという印象を、与えることになろう。

もうひとつ、うまく行かないだろうと思われることは、エルドアン大統領がマスコミに対して強権を発揮し、圧力を掛けて政府に批判的な報道を、一切させない方針を採ったことだ。

このことは、マスコミ人のプライドを、大きく傷つけることになり、結果は、エルドアン大統領が考えるものとは、全く逆なものとなろう。つまり、下手をすれば、マスコミはこぞって反政府報道を、展開する危険性がある、ということだ。

既にジャーナリスト協会は、このエルドアン大統領のマスコミ弾圧について、非難の立場を明らかにしている。政府は内閣の取材が可能な、記者に発行するプレス・カードを3分の1に、減らすことを決めたからだ。

エルドアン大統領は一般のテレビや新聞が、政府批判を展開する可能性を恐れ、大統領府の中に独自のテレビ局を、開設することを決めた。しかし、だからといってエルドアン大統領が、政府に批判的なテレビ局や、新聞に対して、報道禁止命令を出すことは、ほとんど不可能であり、もし、そうしたことが行われれば、自殺行為になろう。

アメリカとの良好な関係を、強調するに際しては、既にオバマ大統領が多忙を理由に、エルドアン大統領の訪米を、拒否しているが、トルコの外相はアメリカとの間では、IS(ISIL)対応で合意に至っている、と関係が良好だというイメージを、必死に作ろうとしている。

しかし、トルコ国民にしてみれば、IS(ISIL)攻撃を拡大することは、、結果的にクルドだけではなく、IS(ISIL)との本格的な戦争を、覚悟しなければならないということであり、とても受け入れるわけにはいくまい。

個人も国家も、いったん進む方向を間違えると、大きく期待しない方向に、道がそれてしまうものだが、いまのエルドアン大統領とトルコの体制は、まさにその方向に、向かい始めているのであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 09:13 | この記事のURL
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