• もっと見る
« 2015年05月 | Main | 2015年07月»
NO3698『アメリカはISに勝てるという見通しトルコが問題に』 [2015年06月03日(Wed)]
フランスのパリでイラク問題をめぐる、20か国会議が開催された。その結果、各参加国はイラクのIS(ISIL)
問題の処理を、急ぐことで合意した。具体的には、最近ダメージが増えているIS(ISIL)
による特攻攻撃を防ぐために、アメリカはイラクに対して、対戦車砲の供与を行うことを決めた。

イラクのアバデイ首相は各参加国の、協力的な姿勢に満足したようだ。現状では、アメリカ軍の空爆が行われてなお、IS(ISIL)
は支配地を拡大しているようだが、その流れが変わるということであろう。

会議が終了した後で、アメリカ代表のビルキン氏は、問題は戦闘員の流入と石油の密輸にあると語り、それを阻止する必要があると認識している。IS(ISIL)
側の戦闘員として世界から入ってくる者たちは、トルコ領土を経由しているわけだから、今後、トルコに対する会議参加各国の締め付けは、強まっていくものと思われる。

もう一つの、IS(ISIL)
による石油の密輸も、結局のところトルコを経由して、行われているわけであり、この点についても、今後、会議参加各国はトルコに、厳重に取り締まるよう、働きかけるものと思われる。

こうしたトルコのIS(ISIL)支援が、明確な形で語られたことは、これまでの不明確な対応から、一歩前進したものと思われる。これまでは、トルコが
IS(ISIL)に対して武器を密輸しようが、石油の密輸の仲介をしようが、明確な非難はなされていなかったからだ。

アメリカは今後、IS(ISIL)
対応のために、イラクの各部族や軍隊に対し、武器の供与を進めると同時に、軍事訓練も施す予定だ。アメリカ側によって軍事訓練を受ける対象は、イラクの軍であり警察だ。加えて資金的な協力もする、とアメリカ側は言い出している。

資金的な協力が必要なのは、IS(ISIL)側が資金的に潤沢であり。戦闘員に対して高給を支払っているために、イラクのスンニー派の若者などが、
IS(ISIL)の戦列に加わっていることに対する、対応策であろう。

昨年に比べ、IS(ISIL)は現在イラクの25
パーセント程度の領土を、支配しているといわれており、相変わらず残虐な戦いぶりを展開しており、組織が拡大しており、資金的にも余裕がある、ということのようだ。

最近では、イラン軍がイラクでのIS(ISIL)
との戦闘に参加し、存在感を強くしているが、そのことはイラク国内の、スンニー派対シーア派の対立を、あおることにもつながる、危険性がある。そこでアメリカは大急ぎで、イラクと合同軍による、
IS(ISIL)対応をしなければならないということだ。

さてそのために、アメリカはIS(ISIL)
による、石油の密輸と武器の調達、そして戦闘員の通過を認めているトルコに、どのような要求を突き付けるのであるか。トルコの選挙は6月7
日だが、その前に明らかな動きが生まれるのであろうか。
Posted by 佐々木 良昭 at 20:42 | この記事のURL
NO3698『サウド家がワハビー派と分裂か?』 [2015年06月03日(Wed)]
サウジアラビアの首都リヤドに近いデイリヤは、サウジアラビア王国建国の一方の旗頭である、ワハビー派集団の発祥の地だ。

そのデイリヤがいま、観光地にされようとしている。この新しいサウジアラビア王国の方針が、果たして吉と出るのか凶と出るのか見ものだ。

常識的に考えれば、ワハビー派の発祥の地が、観光地として開発されていくということは、ワハビー派の人たちにとっては、嘆かわしいことであろう。その場所には、近くレストランや土産店、ホテル、ゲーム・パークなどができるのであろう。

このことを、ワハビー派の人たちは、どう受け止めるであろうか。サウジアラビアの王家とワハビー派の幹部との間では、何らかの合意が成立したから、デイリヤを観光地にすることが決まったのだろうが、そう簡単にはいかないのではないか。

それどころか、今回のデイリヤ観光地化開発計画は、サウド王家を揺るがすことになるかもしれない。そもそも、サウド家がワハビー派と提携し、アラビア半島を支配して出来上がったのが、サウジアラビア王国だ。

したがって、ワハビー派はサウジアラビア国内で、一定の好条件を与えられてきたし、宗教的権限も任されてきていたのだ。だが、最近では次第にサウド家の力がまし、ワハビー派集団の立場は、弱くなってきている。

ワハビー派は厳格な戒律を守ることを、旨としてきていたが、そのためにイスラム世界の多くの原理主義は、ワハビー派の教えを受けるものが少なくない。パキスタンのハンバリー派も、厳格なことで知られているが、この派もワハビー派に近いし、リビアでイドリス国王ファミリーが広めたサヌーシー派も、ワハビー派の教えを受けたものだ。

ビン・ラーデンが創設したあるカーイダも、元をただせばワハビー派の教えを受けているし、一部ではIS(ISIL)
もワハビー派の教えに、沿っているといわれている。

こうなると、サウジアラビアを打倒しようとするIS(ISIL)
と、ワハビー派のなかでも過激なグループが、連携してサウジアラビアの王政打倒に、動き出すかもしれない。すでにIS(ISIL)
による、サウジアラビア国内でのテロが始まっており、いまのところはシーア派を追放する、と言っているが、それはワハビー派との連携を、前提とした発言ではないのか。ワハビー派はシーア派を、イスラム教徒とは認めていないのだ。

IS(ISIL)
がスンニー派のなかのワハビー派と連携しても、そのことがサウジアラビアの王家を、受け入れるということではあるまい。堕落したサウジアラビア王家のプリンスたちの話は、折々伝わってくるが、そのことは
IS(ISIL)にとって、格好の攻撃材料ではないのか。

サウジアラビアはいま、イエメン戦争を始め、イランとは緊張状態にあり、イラクのシーア派政府との関係も緊張しており、加えて国内の王国の土台であるワハビー派を、敵に回すというのだろうか。それは西欧かぶれと金儲けがもたらした、災難の種ではないのか。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:43 | この記事のURL
| 次へ