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NO・2417『M・アッバース議長の弱音かあるいはデマ情報か』 [2012年12月29日(Sat)]
サウジアラビアがスポンサーだといわれている、ロンドン発行のアラビア語紙にアル・ハヤート紙がある。
そのアル・ハヤート紙が最近、意外なことを報じた。同紙によれば、パレスチナのマハムード・アッバース議長は、来年1月に行われる選挙の結果次第で、ヨルダン川西岸地区の統治権を、イスラエルのネタニヤフ首相に渡す、と語ったというのだ。
マハムード・アッバース議長は、イスラエルとの和平交渉がうまく進展せず、しかも選挙で敗北した場合は、パレスチナの自治権を放棄する、ということのようだ。
このマハムード・アッバース議長の発言は、イスラエルのハルテス紙とのインタビューの中で語ったというのだが、彼は『もし選挙後に和平交渉が進展しなければ、電話の受話器を取ってネタニヤフ首相に、私のイスに座ってもらいパレスチナ自治の鍵を渡すと伝える。』と語ったというのだ。
つまり、マハムード・アッバース議長はパレスチナの自治権を放棄し、ネタニヤフ首相にパレスチナに関する全権を、委譲するということだ。
こうした弱気の発言が、マハムード・アッバース議長の口を搗いて出たということは、2010年以来イスラエルとパレスチナ自治政府との和平交渉が停止されたままであり、進展が全く無いことに起因していよう。しかし、和平交渉が進展しない状態にあるにもかかわらず、他方ではイスラエルのヨルダン川西岸地区への入植が、どんどん進んでいる。それを阻止する何等の手段も、マハムード・アッバース議長には無いのだ。
そのことは、ハマースのヨルダン川西岸地区での台頭を許し、マハムード・アッバース議長に対する、風当りを強くしている。それは単なる非難では無く、将来的にはマハムード・アッバース議長の、生死に関わる問題にまで、進展しかねない状況がある、ということであろう。
マハムード・アッバース議長はイスラエルとの、和平ごっこを続けることによって、これまで権力の座を維持して来られたが、これからはどうもそうは行かないということであろう。エジプトのムバーラク大統領やリビアのカダフィ大佐が失脚したように、マハムード・アッバース議長が失脚することも、十分予想される昨今なのだ。
マハムード・アッバース議長が生命の危険から逃れようと思えば、チュニジアのベン・アリ大統領のように、早期にパレスチナの地から逃げ出すか、あるいはカダフィ大佐のように、パレスチナ人によって処刑されるかであろう。そのいずれも彼には受け入れられまい。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:38 | この記事のURL
NO・2416『モルシー大統領反政府派3氏を取調べ』 [2012年12月29日(Sat)]

先月以来から野党の著名な3氏が、モルシー大統領政府に対し、反旗を翻している。彼らは連帯組織を立ち上げ、エジプト救済組織と命名している。そのためエジプト各地で、このエジプト救済組織とムスリム同胞団のメンバーが、衝突し死傷者が出ている状態だ。
モルシー大統領はその混乱を、解決したいという意図からであろうか。エジプト救済組織幹部3氏を、取調べするよう指示している。IAEAのも元事務局長であったムハンマド・エルバラダイ氏、元アラブ連盟事務総長だったアムルムーサ氏、そしてナセリストの議長ハムデーン・サッバーヒ氏がその人たちだ。
エジプトの検察は大統領の命令に従って、動き出してはいるが、多くの検事や判事が、モルシー大統領の決定に不満を抱き、辞任しているのも事実だ。
先に行われた、モルシー大統領が強行突破を図った新憲法の国民投票では、32パーセント程度の国民が投票に参加し、そのうちの62パーセント程度が、賛成票を投じている。
つまり、国民投票で新憲法に賛成票を投票したのは、有権者のうちの18パーセント程度でしかなかったということだ。
ムスリム同胞団は何故こうも強硬に、新システムを導入しようと考えているのであろうか。昨日も報告したように、エジプト財政は大赤字で、国家公務員に対し給料が、支払えない状態にさえ陥っている。
どうも現在外国に駐在しているエジプト大使たちが、ムスリム同胞団の政権に反発し、外国からの経済援助や支援、投資に反対の動きをしていることが、その一因のようだ。
このため、モルシー大統領は大幅な内閣改造を、来週にも実行するつもりのようだ。その段階では、多くのムバーラク派の大臣が外されるとともに、在外大使の多くも、入れ替えられる可能性がある、ということであろう。
ムスリム同胞団幹部の間では、外国に援助を求めることよりも、エジプト自身の力で経済苦境から、脱出しなければならないと考えているようなので、これから大鉈が振られるということであろう。
もし、このムスリム同胞団の方針が成功すれば、エジプトはバクシーシと賄賂の国から、清潔な国家に生まれ変わるかもしれない。モルシー政権と野党との闘いは、一面においてエジプト再生のための、闘いかもしれない。しかし、それは容易ではあるまい。ナイルの川底にたまったヘドロを取り去るような、大工事になることが必定だからだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:13 | この記事のURL
NO・2415『エジプトの現実と今後の不安な予測』 [2012年12月29日(Sat)]
エジプトの友人はある省の高官だが、彼の連絡によれば12月は給料が支払われなかったそうだ。
11月にエジプトを訪問した段階では、10月の給料が半分しか出なかったと言っていた。
それは軍人や警察も同じ状況のようだ。それでは一体誰が現体制を守り、大衆の暴動を抑えるのかという、単純な疑問が沸いてくる。
ムスリム同胞団はムバーラク大統領のような歯の浮くようなお世辞は、言わないというよりは言い方を知らないだろう。
加えて、金づるの湾岸諸国は、現在では明確にムスリム同胞団を、危険視している。これでは援助金を出してくれないのはもとより、金を貸してもくれないだろう。
ムスリム同胞団の与党自由公正党が、モルシー大統領の掲げた新憲法を、国民投票にかけ、強引に通過させた。しかし、それ自体はエジプトが抱える、経済問題を解決することには、全く繋がらない。
近く世俗派が新憲法制定をめぐり、大規模な反政府運動を起こすだろう。
その反政府運動には、警察や軍が加わることも考えられる。それをどう押さえ切れるのか、ムスリム同胞団はアッラーにでもすがろうというのだろうか。
エジプトの状況は悪化の一途をたどっているようだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:22 | この記事のURL
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