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NO:5183  7月30日  『シリア・クルド交渉から外されたトルコ』 [2018年07月29日(Sun)]
*シリアの反政府クルド組織とシリア政府との、正式な交渉が続いている。この交渉が成功すれば、シリア国内の内戦状態は、ほぼ収束することになろう。もちろん、クルド以外にもIS(ISIL)など、過激テロ集団もいるのだが、それは最近ではたいした力は、持ちえていないようだ

*シリアのクルド組織としては、PYDやYPG,SDFなどがあるのだが、最近になってこれまで聞いたことのなかった、新組織SDC(シリア民主議会)なる組織が、登場している。このSDCはシリアの全クルドを代表する、政治組織であり、これが中心となって、シリア政府との交渉を、進めるようだ。*

*それ以外にも、PKK(クルド民主党)というトルコのクルド人の組織もあるが、PKKはYPGと連携はしているものの、シリアのクルド組織とは見なされていない。だが将来、シリアの北部でクルドの自治権の強化が進んで行き、実質クルドが独立したような状況になれば、PKKはそこで一定の影響力を、持っていくものと思われる。*

*つまり、今回のSDCとシリア政府との交渉は、やがてはトルコのクルド組織(PKK)も巻き込む可能性を、秘めたものであり、シリアの問題だけでは無く、トルコの国内問題にも、深く関係している問題ではないか、と思われる。*

*このシリア政府とクルドのSDCとの交渉のなかで、シリアの外相は『将来的にはクルドの自治問題も交渉課題になる。』と語り、前向きな姿勢を示している。同時に、シリア政府はトルコのシリア・クルド問題への、関与を警戒している。*

*トルコは自国の安全と、シリアへの領土的な関心からであろうか。シリアのクルドについては、FSA(自由シリア軍)の結成に支援を送り、これまでトルコのシリアに於ける、フロントとして活用してきていた。しかし、今ではしかるべき力を有していないようだ。

*今回のシリア政府とSDCとの交渉では、FSAは完全に蚊帳の外になり、何の影響力も行使出来ない状態に、置かれているようだ。もちろん、FSAはアサド大統領に対抗する、シリアの民主主義を実現することを標榜する、全シリアミ国民の組織であり、クルド組織とは謳っていない。しかし、相当数はクルド人たちであろう。*

*今回のシリア政府とSDCとの交渉を経て、シリアで内戦が終了し、安定した状態になる流れの中では、トルコは完全にシリア問題から外される、ということだ。そして、このシリア政府とクルドのSDCとの交渉は、アメリカとロシアによって支持され、支援されているものと思われる。*

*ロシア政府はアサド大統領を中心とする、安定したシリアを早く回復したいと思い、ロシアにとっての肝心なポイントは、地中海に面する地域のロシア軍の使用が、継続する事であり、シリアの北部にクルドの自治区が誕生することは、何も問題はないと考えていよう。*

*他方、アメリカはこれ以上シリア問題には、関わりたくない、北部シリアに一定の影響力を保持できればいい、と考えているのではないか。また、アメリカはクルドのこの地域での、役割を拡大したいと望んで、武器などの支援をしてきていたのだ。アメリカはその結果、新しいクルドとの関係を強化して行き、シリアでの利益を確保することが、出来よう。*

*このシリア問題の流れの中で、トルコは完全にシリア問題の蚊帳の外に、追い出されてしまったということではないのか。それをトルコだけの力で挽回することは、至難の業であろう。*
Posted by 佐々木 良昭 at 09:16 | この記事のURL