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NO4407 1月31日 『トルコ苦し紛れでエジプトに経済代表団派遣』 [2017年01月30日(Mon)]
このところトルコの経済状態は、すこぶる悪化しているのであろう。先日はフィッチやS&P社がそろって、トルコに最悪のレーテイングを、したばかりだ。ロシアからの観光客を期待し、それにプーチンはいい返事をしたようだが、実際には動き出していない。

当然であろう。イスタンブールやアダナなどで起こるテロを前に、危険を承知で観光旅行にトルコに行く者は、極めて少なかろう。貿易もしかりで、トルコからのロシア向け農産品は、ほとんど動いていないようだ。四面楚歌の中のトルコは、政治的に最悪の関係にある、エジプトに経済代表団を、送ることを決定した。まさに藁をもつかむ、心境なのであろうか。

エジプトとトルコとの関係が悪化したのは、トルコ側の意向によるものだった。トルコは2013
年にムスリム同胞団政権を、クーデターで打倒したシーシ将軍が、大統領に就任して以来のものだ。以来、トルコのエルドアン大統領は口汚く、エジプトをののしり続けてきているのだ。

トルコはムスリム同胞団政権を、トルコ同様にイスラム色の強い政権として、エルドアン大統領は大歓迎していたのだが、それが軍部のクーデターで、打倒されたのだから、怒り心頭に達していたのであろう。

そうした経緯から考えると、トルコ側がどの面をして、経済代表団を送るというのか、と腹が立つ感じがするのは、私以上にエジプト国民と、政府であろう。そうエジプト側が感じていることは、トルコ側にも分からないはずがない。つまり、トルコ側は苦しい中で、恥を忍んで経済代表団を送る決定をした、という事であろう。

エジプトの商工会議所会頭は、経済協力の可能性について討議すると語り、いたって穏やかに、暖かくトルコの経済代表団を迎える意向を、明らかにしている。エジプト側もビジネスマン協会、商工会議所、経済産業省などが受け入れの、対応をするようだ。

エジプトの商工会議所会頭は『トルコは旧ソビエト連邦地域への入り口であり、極めて重要な国家だ。』と語っている。

しかし、冷静に考えてみると、エジプトもトルコも共に、経済的には最悪の状況にあるわけであり、ゼロを二つ足しても掛けても。答えはゼロなのではないのか、と思えるのだが。

トルコ側の希望は、観光業での協力、繊維産業面での協力、食品産業面での協力、という事のようだ。観光業はトルコもエジプトも、瀕死の状態にある。両国ともテロ事件が悪い影響を与え、外国からの観光客の足を止めているのだから、両国民が往来しない限り、しかるべき動きは起こるまい。

繊維産業でも共に、しかるべきレベルに達しており、あまりメリットは無かろう。ただエジプトの人件費が、トルコに比べて安いことから、エジプトでの縫製作業をやりたい、と思っているトルコ企業はあろう。

食品産業では、エジプトも農産品の輸出を希望しており、トルコもしかりであることから、競争相手であり、しかるべき成果は出まい。つまり、今回のトルコからの経済代表団は、鐘や太鼓を鳴らしてみても、成果は無く、単にエルドアン大統領の国民向け、リップ・サービス用の話題提供に過ぎまい。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:03 | この記事のURL