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NO・3027『トルコで穏健な内戦が始まった』 [2013年11月29日(Fri)]
トルコの予備校と言うか私学の閉鎖が、突然エルドアン首相によって宣言された。このことはその後大きな社会問題となっている。政府が教育省の幹部を各地に派遣し、私学経営者との対話を行うのだが、今までのところその全てがうまくいっていないようだ。
それは、私学経営者たちが会議をボイコットし、退場してしまうからだ。この会議は対話ではなく、エルドアン首相の意向を伝えるためのものにすぎないことから、無理もなかろう。私学経営者はあまりもうからない学校経営に、これまで頑張ってきた人たちであり、それが禁止されれば、明日からやることが無くなってしまうのだ。もちろん生計の立てようもなくなろう。
日本でもそうだが、予備校は高校や大学進学で、必要な組織なのだ。予備校に通うことで浪人学生には、高校や大学受験の再挑戦の機会と、能力が備わるのだ。それがなくなれば浪人生は、自分で勉強せざるを得なくなろう。予備校は新しい試験の内容や法律の変更など、細かい情報を提供してもくれるのだ。
あるトルコの教育評論家は、『アメリカのオバマ大統領でも、予備校の運営を止める権利はない。個人起業家の経済活動を、政府が禁止する権利はない。』と主張している。
またある経済専門家は、予備校から政府が聴取している税金、3・5億トル・コリラ(140億円程度か)が入らなくなる。その収入を政府は一般の税金で補うのか、と噛みついている。
今回の私学閉鎖問題は、実際のところ政治的な理由によるものであり、教育的理由によって、生じたものではないと思う。トルコではヒズメト(ギュレン氏が代表)の各種学校が、全国的に展開されており、クルド地区にもこの組織の学校が存在する。
ヒズメトは教育を通じて、トルコ国民の生活を向上させる下地を作ることと、教育の機会均等を進めているのだ。クルド人のトルコ政府に対する反発を和らげる意味でも、重要だと考えている。
そしてヒズメトは中央アジアやアラブの国々でも、教育産業を展開している。それらはおおむね成功しているようだ。
そのヒズメトの活動に対する賛同者が、トルコ国内では多数いるために、エルドアン首相はヒズメトの代表者である、ギュレン氏のトルコ国民への影響力が、拡大していくことを恐れたのであろう。
エルドアン首相にとって、今一番恐ろしいのはエジプトで起こったクーデターが、自国でも起こることであり、もう一つはヒズメト組織なのだ。しかし、教育産業はそこに通わせる父兄、そこで働く教職員、そして学生たちに直結する問題なだけに、エルドアン首相が考えているほど、首相という権限をもってしても、簡単にひねり潰すことはできまい。
そんなことをすれば、次期選挙で与党AKPは大敗するのではないのか。ヒズメトのギュレン代表は『穏健な抵抗を続けろ、抵抗をやめてはいけない。』と指示した。これはエルドアン体制に対する、真正面からの挑戦であろう。
参考までに申し上げれば、トルコ国民の中でこのヒズメトの支持者が、多く見積もると3分の1、少なく見積もっても5分の1だといわれている。さすがのエルドアン首相も、ヒズメトに勝てるだろうか、という疑問が沸いてくるのだが。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:11 | この記事のURL