森林セルフケアコーディネーター 小川純子
東京都世田谷区と聞くと、住宅地や商店街が広がる都市のイメージを持たれる方も多いかもしれません。
しかし世田谷には、今もなお豊かな自然が息づく里地里山の風景が残されています。
その代表的な場所のひとつが、成城周辺を通る国分寺崖線です。
国分寺崖線は、立川市から大田区まで約25kmにわたって続く地形で、多摩川が長い年月をかけてつくり出しました。世田谷区内では成城周辺にその姿をよく見ることができ、崖線から湧き出す水は野川へと注いでいます。
雑木林に囲まれた湧水地では、水の流れる音や鳥たちの声が響き、都内にいることを忘れてしまうような静かな時間が流れています。
成城みつ池緑地や成城三丁目緑地には、武蔵野の面影を残す森が広がり、四季折々の自然を感じることができます。
国分寺崖線の魅力は、森だけではありません。
高低差のある地形、そこから湧き出す水、人々の暮らしの歴史が重なり合い、歩くたびに新しい発見があります。
普段は住宅街として見過ごしてしまう世田谷のまちの中にも、このような豊かな自然環境が残されていることに驚かされます。
成城の国分寺崖線は、都市と自然、人の暮らしが共存する、世田谷らしい里地里山の風景を今に伝えてくれています。
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【豆知識】
成城周辺を歩いていると、「国分寺崖線」という言葉のほかに、「ハケ」という呼び方を耳にすることがあります。
実は、同じ地形を指していても、学術的な呼び名と地域で受け継がれてきた呼び名があるのです。
国分寺崖線は、地形学では「崖線(がいせん)」と呼ばれます。これは台地と低地の境目にできた連続した崖を意味します。
一方、「ハケ」は武蔵野地域に古くから伝わる呼び名で、人々が暮らしの中で使ってきた言葉です。
また、「へり」は大地の端や縁(ふち)を表す一般的な表現で、崖線をわかりやすく説明するときに使われます。
つまり、
・崖線=地形学的な名称
・ハケ=地域に伝わる暮らしの言葉
・へり=わかりやすく説明するための表現
という違いがあります。
成城の国分寺崖線は、単なる地形ではなく、人々の暮らしや文化の中にも息づいている風景なのです。