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2026年02月14日

「今と昔の原風景=森の姿から思うこと」

「今と昔の原風景=森の姿から思うこと」
                   理事・森林セルフケアコーディネーター 鈴木 友よ

 「兎追いし かの山 小鮒釣りし かの川・・」1914年(大正3年)の唱歌、「ふるさと」の歌詞にある情景は、私にとって、日本の原風景=里地里山そのもののイメージです。
そのイメージの中の森、もしかしたら今の森とはかなり違う姿だったのかも・・

 東海道五十三次などの浮世絵の世界では、森、というよりも「はげ山」!松が少し生えている感じの丘陵地が描かれています。

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 古来の日本にはスギの原生林が各地にあったようで、しかも直径2.5m、樹高40mの大木が生えていたそうです。そうした湿り気のある場所に田畑を開拓して定住した人類。原生林を切り開き、材木は寺社、屋敷や城建築、燃料などへと活用してきたのでしょう。木材(由来)からエネルギーを生み出していたし、建物も木造。となると山から木が少なくなるくらいまで消費しているのは納得です。
 「おじいさんは山に柴刈りに」は、食事や暖をとるための大切な労働。特に江戸以降、人口が増えたことではげ山へと追い込まれていったらしい・・

 林床に栄養分が乏しくて松がまばらに生えているので、マツタケがたくさんとれたみたいです。私の住んでいるみよし市でも、70年前までは沢山のマツタケが収穫できたよ、というお話を伺ったことがあります。
 だから戦後の植林事業であれだけびっしりとスギ、ヒノキを植えることができたのでしょう。
見晴らしは良いので、山越えなど、移動する際に方向が分かりやすかったのかなとも想像します。隣接した斜面同士、手旗信号で会話ができたほど見通せたそうです。

 ただ大変なことに、表土が流れやすく、山は洪水が多発していたそうで、健全な森であることは防災の意味からも重要ですね。

 昭和30年以降、人が手を入れ続けた雑木林(二次林)が、エネルギー利用の変化等によって利用されなくなり放置され、落葉樹から常緑樹への遷移、また同じく放置した竹林による森の荒廃が続いています。スギ、ヒノキの人工林の乱立、放置した状態も問題となっています。また、荒れた場所は不法投棄場所となってしまうなど、放置、無関心による弊害が目立ちます。開発による森の消失、分断なども並行して起こっています。
こうした状態はたぶん、有史以来初めてのことです。

 今各地でなされている里山保全の活動は、放置による暗くて藪化する森を明るい里山林として保全するために人が除伐、落ち葉かき等の手入れ作業している状態です。

 私も身近な森での活動を続けています。こうした草の根の活動がもっと増えてくるといいなと願っています。いろいろなタイプの森が点在することで、生物多様性の維持に貢献できるし、私達自身が活動することによって、身近な森に対して関心を向け続けることにつながるのではと期待できるからです。

 なにより、「森林作業」は森林セルフケアのメニューの一つ。森の活動で出会う人たちが元気なのはセルフケアできているからなのですね!

posted by 田川 at 05:41| 役員コラム

「早春の森の楽しみ方」

「早春の森の楽しみ方」
森林セルフケアコーディネーター 青木 孝一

 「早春」という言葉はよく聞く言葉ですが、具体的な時期はいつでしょうか?
一般的には「2月から3月中旬頃」、もう少し詳しくまとめると・・・

2月 : 立春を迎え、早春の始まり  
3月中旬まで : 春本番(桜の季節)の手前 まで
暦の春が始まり、自然が動き出す時期ですね。

 私は毎年この時期に「森林セルケア体験会」企画し、実施しています。
皆さんにとって「早春の魅力って何ですか?」 と尋ねられた時になんて答えるでしょう?

 私は梅の花が咲き香りが漂う、ツバキやミツマタの花や大地にフキノトウなどを見つけた時に早春というイメージを強く感じます。

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また、葉っぱがなく木々の枝の広がりなど、森の様子がはっきりとわかる季節、派手ではないけれど変化の兆しが見られ、命が動き出す時期であることも魅力のひとつになっています。

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早春の時期に森を歩いていると五感で気づくことが沢山あります。冷たい空気の中に少しだけ混じる春の匂いや鳥の声が増えてくること、日差しの柔らかさなどです。

目には見えないけどいろいろな感覚を使うことで季節の変化を感じとることができます。
人が少なく、静かな自然を独り占めしやすく、虫が少なく歩きやすい、それと小さい花や冬芽を見つけた時の喜びなど、早春ならではの森の楽しみ方も色々あります。

早春の森歩きの魅力を私なりに表現すると「五感で気づき、心を整え、次の命を待つ楽しみ」ですかね。

この機会に皆さんも是非、「早春の時期の森歩き」を体験して感じたことを私に教えてくださいね。


posted by 田川 at 05:32| 身近な森のご紹介

早春の森の楽しみ方

早春の森の楽しみ方
                        森林セルフケアサポーター 宮下和之

 森林セルフケアを実践されている皆さんは、四季折々の森の表情を楽しんでおられることと思います。今回は、一年の中でも特に変化に富んだ「早春」の森の楽しみ方をご紹介します。

冬の終わりに訪れる、小さな命の息吹
 早春とは、いつ頃の季節でしょうか。
ここでは、冬の厳しい寒さが少しずつ緩み始め桜が咲く前までの時期を、早春と呼ぶことにしたいと思います。
 この時期の森は、一見するとまだ冬枯れの景色が広がっているように見えますが、足元や枝先には、実はこの時期こそが活動期という生き物たちが、森のあちこちで動き始めています。足を止めてよく観察してみると、早春を待っていた小さな命たちの営みが見えてきます。早春の森の楽しみは、まさにこの“動き始めた変化”に出会うことにあります。

足元に広がる春の妖精たち
 早春の森を訪れて足元に目を向けてみると、落ち葉の間や林床のわずかな隙間から、可憐な草本の花が顔をのぞかせています。
 「スプリングエフェメラル(春の妖精)」と呼ばれる植物たちです。キクザキイチゲ、ニリンソウ、イチリンソウなど、これらの植物は春の短い期間だけ地上に姿を現し、樹木の葉が茂る前に花を咲かせ、種子を実らせて地下に潜ってしまいます。この時期だけに見られる植物なので、心が躍ります。また、スミレの仲間も早春の森を彩ります。タチツボスミレ、シハイスミレ、アオイスミレなど、まだ森全体が芽吹く前の限られた光を受けて咲く姿は、早春ならではの存在です。
 これらの小さな紫や白の花を見つけたら、しゃがんで目線を合わせてみてください。森の中で膝を折り、視点を低くすることで、いつもと違う森の景色が広がります。

樹木たちの控えめな春の装い
 足元だけでなく、顔を上げて樹木の枝先にも注目してみましょう。早春に花を咲かせる樹木は、控えめな美しさを持っています。
 ヤブツバキの鮮やかな赤い花は、まだ緑の少ない森の中で目を引きます。クロモジの小さな黄色い花やキブシの房状の花が林縁を彩ります。枝に触れると、クロモジからは爽やかな香りが広がります。タムシバやコブシは白い花弁を広げて落葉した木々の中に点在し、ヤナギの仲間は、銀色の芽や黄色い花穂で春の訪れを告げています。
 これらの花々は派手ではありませんが、早春の日差しの中で輝きと温かさを感じさせてくれます。ゆっくりと歩きながら、枝先の小さな変化を探してみてください。

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水辺に宿る新しい命
 散策路脇に小さな水路や水たまりがあれば、少し立ち止まって覗いてみてください。
条件が合えば、そこには両生類たちの卵塊が見つかるかもしれません。
 ヤマアカガエルやニホンアカガエルは、まだ寒さの残る早春のうちに産卵を終えます。透明なゼリー状の卵塊の中に、黒い小さな粒々が集まっている様子は、静かな水辺の中で確かに始まっている命の営みを感じさせてくれます。ヒキガエルは長い紐状の卵を産み付け、また、場所によっては  サンショウウオの仲間の卵塊に出会うこともあります。
 種によって、卵の形や大きさは実にさまざまですが、まだ冷たさの残る水の中で、静かに次の世代が育まれている様子は、早春の森ならではの光景です。
 水辺にしゃがみ込み、しばらく静かに観察してみましょう。冷たい水の中で、春に向かって確実に成長していく小さな命。その営みに触れることで、自然のリズムと、自分自身の心や体のリズムとを、そっと重ね合わせることができるかもしれません。

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野鳥たちの子育て準備
 森に響く音にも耳を澄ませてみましょう。
 早春は、留鳥たちにとって繁殖期の始まりでもあります。シジュウカラ、ヤマガラ、コゲラ、エナガ、メジロなどは、早ければこの時期から巣作りを始め、森の中がにわかに賑やかになります。
樹洞を探して幹を見回したり、地上で巣材を集めたり、巣材をくわえて巣穴に運んでいる姿が観察できるかもしれません。
 ところで、野鳥たちが集める巣材で重要なものの一つは、なんだと思いますか?
実は「苔」です。苔は、私たちの身近な森の中にごく普通に生育しています。苔好きの方にとっては、可愛らしく、つい目が向いてしまう存在ですね。この身近な苔は、動物たちにとっては命を育むための大切な巣材として、生態系の中で重要な役割を担っています。
苔を通して、植物と動物がつながっていることに目を向けてみる。
そんな視点を持つことも、早春の森を味わう一つの楽しみ方なのかもしれません。

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早春の森で心と体を整える
 早春の森は、冬の静けさと春の躍動が交差する、特別な時間です。
 まだ肌寒い空気の中で小さな命の芽吹きを探していると、自然と歩みはゆるやかになり、足を止め、目を凝らし、耳を澄ますことになります。その静かな時間の中で、森の内側で確かに進んでいる変化に気づくことができます。
森林セルフケアの時間としても、この「静かな始まり」に身をゆだねることは、とても豊かな体験になります。
 まだ始まりきっていない季節を、焦らず味わう。
早春の森は、その大切さを、そっと教えてくれているのだと思います。


posted by 田川 at 05:24| 身近な森のご紹介