「小野有五、自然をみつける物語 全4巻、岩波書店, 1996年」
原田 純子
難しい本格的な文献も自分を深めるために大切ですが、ちょっと息抜きにもなるけど「え?そうなの?知らなかったぁ!」「これって大切な事よね」と気づかせてくれる書籍をご紹介いたします。
今年の夏前にふとしたきっかけで出会った本です。第2巻のタイトルに惹かれたのですが、森林療法とは違いました。1996年4月に第1刷発行とありますので、もう25年も前に発行されている本。北国の自然を舞台に児童向けとして書かれてはいるものの、自然への入門編としてもっと早くに出会っていたかった書籍です。
(1)川との出会い
(2)森の時間
(3)山のひみつ
(4)島への旅
都市部に暮らしていた小学6年生の少年と5年生の妹が、父親の突然の病死で母親と北国へ移住することになり、そこでの様々な体験を通して身のまわりの自然から環境について知識を深め、地球環境を保護していくことの重要性を学んでいくストーリーです。
地元の営林署に勤めていると言うおじさんが動植物をはじめ自然界のことを何でも分かりやすく説明してくれるので、まるで自然界入門のテキストのようです。子ども向けに書かれているのですが、本を読んでいるのに情景が目に浮かぶのは、実際にカタクリの群生を見に行った経験があることや、以前テレビの映像で見たことのあるサケの産卵風景が蘇り、これは歳を重ねてから読む特権だなと得をした気分です。
読んでいくうちに自分が主人公になって川を上っていく魚を追いかけていたり、人間の利益を優先したために、環境に負担をかけるだけの人工的な構造物に腹を立てていたり、基本に立ち返れる本でもありました。と言ってもまだ全巻読破できていないので、これは夏休みの課題図書として自分への宿題でもあります。
作者の小野有五氏は北大名誉教授であられ、環境科学者、地理学者として数々の成果を上げておられますが、そのご研究を基に自然保護活動をはじめとしてアイヌ文化にも造詣が深く、多方面で現在もご活躍中とのことです。