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2026年03月15日

― 草津町・草津森の癒し歩道 ロイヤルコース ―

― 草津町・草津森の癒し歩道 ロイヤルコース ―
                                中澤牧子
 草津温泉と言えば、町の中心にある「湯畑」や温泉街の賑わいを思い浮かべる方が多いかもしれません。けれど実は、温泉と同じくらい大きな魅力があるのが、草津白根山のふもとに広がる大自然です。中でも草津温泉ホテルヴィレッジに隣接する国有林に整備された「草津森の癒し歩道 ロイヤルコース」は、カラマツを主体にクリやカエデなど多様な樹種が共生する遊歩道で、ここが私のおすすめフィールドです。

 このコースが「ロイヤル」と呼ばれるのは、現・上皇上皇后両陛下が、約15年間にわたり毎年草津でご静養された際、毎回ご散策されたことが由来です。ホテルヴィレッジ北側に隣接する全長約2.5qの緩やかな一般向けコースで、一周約1時間ほど。急な登り下りが少なく、初めての方でも森に入りやすいのが大きな魅力です。地域の人々と森林管理署が協力し、ウッドチップを敷いて歩きやすく整備してきた経緯も、この道のあたたかさにつながっているように感じます。

 実はこの森は、歴史的にも興味深い背景を持っていて、日本の「森林浴」の第一人者でもある神山恵三教授らが、日本で初めて“フィトンチッド”を非公式に測定した場所とされています。また森林浴の効果が科学的に認められた「森林セラピーロード」にも認定されています。
 この森は、「がんばって運動する森」ではなく、「のんびりと歩くうちに自然と呼吸が深くなり、心と体が整っていく森」です。
 森林セルフケアの視点で見ると、まず視覚。目の覚めるような新緑と木漏れ日、カラマツと広葉樹が織りなす秋の紅葉のグラデーション、葉が落ちた木々の個性豊かな木肌を見比べるのが楽しい冬の静かな雪景色まで、季節の変化に富んでいます。次に聴覚。鳥の声、風が枝葉をゆらす音、自分の足がチップや枯葉を踏む音が、森と一体になる感覚へあなたをいざないます。嗅覚では、湿り気を含んだ樹木や土の香りが印象的です。触覚では、ウッドチップの柔らかさ、空気の冷たさ、風の流れ、木肌の凹凸などを感じ取れます。五感をフルに刺激する、セルフケア実践の場として最適です。コースは1年を通して利用され、積雪期はスノーシュー体験もできます。
草津は強い温泉力を持つ土地ですが、その一方で、この森には人を静かに回復へ導く力があります。温泉が“芯からあたためるケア”だとすれば、ロイヤルコースの森は“心と体をほどくケア”。その両方が近い距離でできることが、草津温泉ならではの大きな体験価値だと感じています。
 このコースでは「たくさん説明すること」よりも、「参加者が自分で森を感じる余白をつくること」を大切にしています。深呼吸をひとつ、足裏の感覚をひとつ、立ち止まって空を見上げる時間をひとつ。1分間目を閉じて、木になり切っていただくこともあります。ロイヤルコースは、特別な装備や高度な技術がなくても、自分で自分を整えるための入口を優しく開いてくれる場所です。