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2025年04月13日

世界農業遺産「国東半島・宇佐地域」

●世界農業遺産「国東半島・宇佐地域」
https://www.env.go.jp/nature/satoyama/44_oita/no44-7.html
                             国東半島居住・えぐちまお

 国東半島・宇佐地域は、食料の安定確保を目指す国際組織である、国際連合食糧農業機関(FAO)から、グローバル化や環境悪化並びに人口増加の影響により衰退の途にある伝統的な農業や文化、土地景観の保全と持続的な利用が図られている地域として「世界農業遺産」に認定されています。
 国東半島の地形は、中央部にある両子山系の峰々から放射状に延びた尾根と深い谷から成り、平野部は狭小で、短く急勾配な河川が多数あります。
この半島は、降水量が少ない上に雨水が浸透しやすい火山性の土壌であるため、古くから「水」の確保が困難であった地域です。
重要里地里山に入っている私の居住地の国東市武蔵町吉弘松ヶ迫は、半島のほぼ中心から少し南東に位置し、2022年11月1日にユネスコ(国連教育科学文化機関)により「吉弘楽」を含む、風流踊(ふりゅうおどり)が、無形文化遺産に登録された地でもあります。また世界農業遺産の特徴でもありますが、人々の暮らしが、自然環境の中で、無理なく永続的に人間混みの持続可能(生計維持)でもあるのです。
 この半島一帯では、クヌギを利用した原木しいたけ栽培が伝統的に行われていますが、クヌギは、しいたけの成長に必要な栄養源を供給し、原木しいたけを育みます。クヌギという森林資源が、原木しいたけという食料を産み出すシステムは、耕地が限られたこの地域において、栄養・生活保障の面で大きく貢献しています。
さらに、原木しいたけ栽培が行われることで、クヌギ林の伐採と再生が繰り返され、森林の新陳代謝を促し、水資源のかん養など森林の公益的機能の維持が図られるとともに、里山の良好な環境や景観保全につながっています。
安定的に水田農業を営むうえで必要不可欠なため池群の歴史は、11世紀の開田の時期から始まったと推測されますが、その多くが19世紀の人口増加に伴って整備されました。地形的条件から大規模な「ため池」を築造できなかったため、先人たちは小規模な「ため池」を複数連携させて必要な水量を確保する技術を確立しました。ため池に関する操作や管理を委ねられた「池守(いけもり)」という役割があり、水田の水の受給の平準化と少ない水を効率よく公平に使うための取水管理が行われています。両子山頂から放射状に広がる河川のそれぞれで、このシステムが維持管理されていることが、この地域の水田農業の特徴です。
 クヌギは、伐採しても切り株から萌芽(ほうが)して再生するため、木材資源が循環するという優れた特性を持っています。約15年後に原木しいたけ栽培に適したサイズとなります。成長したクヌギは秋に伐採され、しいたけ生産へ供給されます。下草は、次世代の下草の成長を抑えつつ、ゆっくり分解しながらクヌギの成長を助ける養分となり、さらに、落ち葉やしいたけ栽培で使用を終えた原木も、腐植してミネラル豊富な土となり、膨軟な保水層を形成され、有機物や栄養塩を含んだ湧水となります。この湧水が植物プランクトンや海藻などの栄養源として、水田農業や沿岸漁業などを支えるとともに多様な生態系を育んでいます。
 この地域にはイワギリソウ、コシャクシギ、アカザ、クボハゼ、生きた化石と呼ばれるカブトガニなど沢山のレッドリスト入りした植物や生物が生息し、中でもオオイタサンショウウオは、国際自然保護連合などから絶滅危惧種に指定されています。
posted by 田川 at 09:20| お薦めの里地里山