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2022年06月11日

「日本の自然に関わる制度、文化的背景から森林療法を検討する」

「日本の自然に関わる制度、文化的背景から森林療法を検討する」


森林セルフケアコーディネーター 飯田 みゆき


2017年7月にNHK出版から発売された、『NATURE FIX自然が最高の脳をつくる』は、アメリカのジャーナリストが世界中を飛び回り、自然の力の謎を探った内容をまとめた書籍です。この本をテキストにしたレベルアップ講座を2022年2月に開催したときに、一緒に講座を担当した松尾さんから、「日本の自然に関わる制度とその文化的背景について深め、書籍で扱われた諸外国との差異を知り、日本に適した森林療法の拡大方法を検討」というお題をいただいたので、改めて日本の自然に関わる制度について整理してみました。

まず、自然に関わる制度としては1957年制定の自然公園法があります。その目的は「優れた自然の風景地の保護、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資する、生物の多様性の確保に寄与すること(第1条)」です。全国34箇所の国立公園を環境大臣が指定し、国が直接管理しています(環境省HP https://www.env.go.jp/park/about/history.html)。ここから、森林療法に向かっては大きく2つの流れが発生します。

@自然保護から自然保護教育、自然ガイドへ
1つめの流れは、自然破壊に講義する民間の自然保護活動から始まった自然保護教育、自然ガイドへの流れです。1951年に設立した日本自然保護協会(NACS-J)は、ダムの底に沈もうとしていた尾瀬を守る活動から発展した日本最初の自然保護団体でした。 (https://www.nacsj.or.jp/nacs_j/history/)
その後、三浦半島自然保護の会が「自然観察会」を確立します。自然に親しみながら自然を理解し、自然保護を考え政策を提言する活動が自然保護教育として発展していきます。1978年にNACS-Jが自然観察指導員養成を開始すると、各地の自然保護活動家や行政担当者が受講し、自然保護教育が非正規教育の分野において全国規模で普及していきました(小川 潔, 伊東 静 自然保護教育の原点と環境教育の課題.環境教育 2013,vol23,no1,59-63)。1991年には(一社)全国森林レクリエーション協会(1984〜)が森林インストラクターの認定を開始しました。(林野庁HP https://www.rinya.maff.go.jp/j/sanson/kan_kyouiku/main3.html)
そして2003年、環境教育促進法(正式名称:環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律,2011改正)が文部科学省、経済産業省、国土交通省、環境省の共管で制定。目的(第1条)には、環境保全活動とともに、環境保全の意欲の増進も明記されました。環境教育等支援団体の指定(第10条の2)、人材認定等事業の登録(第11条)業を国が登録し、公示しています。(環境省HP http://www.env.go.jp/policy/post_100.html)
 自然保護教育は半世紀以上の歴史の中で研究も進み、以下の基軸が考えられています。

図1.png

(クリックして拡大)


これらの基軸を鑑み、自然ガイドの中から心の健康のために森林を活用したいという思いを持つ人々が現れます。これが、1つ目の森林療法への流れです。

A森林浴から森林セラピーへ
2つ目の流は、公的機関を中心に進められてきた森林浴から森林セラピーへの流れです。まず森林浴は、1982年に「森林浴構想(森の香りを浴び心身を鍛えよう) 」に端を発し、当時の秋山林野庁長官が命名した言葉です(小林 功,近藤照彦,武田淳史 群馬パース大学紀要 2013 no.15,57-62)。

その後、トーキン博士、神山先生、谷田貝先生らが次々とフィトンチッドに関する研究を発表し、1992年からは宮崎先生が森林医学研究における生理評価関連論文を発表していきます。2004年からは公的研究費の交付を受けた研究が行われ、全国各地にセラピーロードが認定されるようになりました(フローレンス・ウィリアムズ『NATURE FIX自然が最高の脳をつくる』)。2008年にはNPO法人森林セラピーソサエティが発足し、「森林セラピーは、科学的な証拠に裏付けされた森林浴のことです。」と、HPにも明記されています。(https://www.fo-society.jp/therapy/index.html)
これが、森林療法に向かう2つ目の流れです。

そして第3の流れが、我らがNPO法人森林療法協会なのですが、これも少し複雑です。
まず、「森林療法」という言葉を最初に用いたのは、東京農業大学の上原先生の1999年第110回日本林学会風致部門「森林療法の構築に向けて」においてだと言われています(上原巌 日本林学会大会学術講演集 1999,vol1,406−407)。その後、上原先生は療育分野における研究を次々と発表し、2002年には森林療法研究会設立 (http://www.janis.or.jp/users/bigrock/)
2007年10月、上原先生と第1の流れの人々、2005年から森林養生プログラムを開始していた赤坂溜池クリニックが一緒になってNPO法人日本森林療法協会が設立されました。その後紆余曲折があり、上原先生は2010年からNPO法人日本森林保健学会を設立して活動しておられます。当協会は、2011年から森林セルフケアを中心とした活動を実施しています。

今見てきたように、日本に適した森林療法の拡大方法を検討するにあたり、第1の自然保護教育から自然ガイドへの流れ、第2の森林浴から森林セラピーへの流れを無視することはできません。以下の図に、縦軸に心の健康度、横軸に森林活動度をとり、各活動の範囲を表わしました。位置づけを明確にすることから検討を始めてみませんか?

図2.jpg

(クリックして拡大)


心の健康をサポートする活動には各種ヒーリングやセラピーがありますが、森林浴はそれほど深く心の健康に踏み込むことなく、心地よく自然に親しみ楽しむ活動に位置づけられます。その科学的裏付けをするのが森林セラピーですね。自然保護教育は、自然と親しむ程度から自然と共に生きるアクションを起こすような幅広い森林活動度とともに、心の健康にも寄与する活動で、図では横長の幅をとります。森林療法は、心地よく自然に親しみながらも、ある程度心の健康にも介入する可能性を持つ活動で、図では縦長の幅をとります。
ちなみに、心の健康度の究極を涅槃、森林活動度の究極を自然との共生だとすると、右下に該当するのは仙人??かもしれません。

第1の流れである自然保護教育/自然ガイド、第2の流れである森林浴/森林セラピーの流れともに歴史があり、人口も多いので、ともすると違いがわからなくなることがあります。活動範囲の違いを意識することで、普及活動の方針も明確にできるのではないでしょうか。
個人的には、森林での心の健康への寄与についてもっと探っていきたいと思っています。

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posted by Yu SEKI at 16:58| サポーターコラム